ミュージカル『薄桜鬼』黎明録 によせて。 /おーちようこ・高橋美里

通算100公演目を昨夜、2015年6月13日(土)に迎え、本日、大千穐楽を迎えた公演にお祝いとお礼の気持を込めて。

 

なぜ、彼らは「鬼」と成らねばならかったのか――

 

薄桜鬼 黎明録

 

 ゲネプロのカーテンコールの挨拶に、座長の井吹龍之介役こと白又敦から指名された、土方歳三役の佐々木喜英は語った。
「新しい薄桜鬼を僕らが創ります」
 その言葉通り、正に新たなミュージカル『薄桜鬼』の黎明がそこにあった。

 

 舞台は京都。
 ゲーム本編より以前、彼らがまだ名も無き、浪士だった当時。
 京の都を守るべく、近藤勇(井俣太良)のもとに集う、者たちがいた。

 

 ある日。
 道で行き倒れていた、井吹龍之介(白又敦)に握り飯をやろうとする者がいた。
 名を芹沢鴨(窪寺昭)。
 しかし、その握り飯は芹沢の手をこぼれ、地面に。
 その握り飯を手に取ろうとする伊吹に、芹沢は問う。
「見栄や誇りよりも飯を取るのか――」
 この出会いを軸に物語は進む。

 

薄桜鬼 黎明録
薄桜鬼 黎明録

 握り飯の恩義に応え、芹沢のもとで犬扱いを受けながらも働く伊吹はともすれば、「己が主に仕える」ということの意味を、まだ知らなかっただろう。
 武士の家に生まれながら、その血に疑問を感じる彼に、農民という身分から武士という地位に焦がれ、のちに新選組と呼ばれる者たちの渇望はどう映ったのだろうか。
 浪士の集まりである彼らが、芹沢の尽力により、会津藩に召し抱えられ『新選組』という名を与えられ、浅葱色の羽織を渡され、喜びに沸く姿はどう映ったのだろうか。

 

薄桜鬼 黎明録

 まるで彼を鏡とするかのように、それぞれが己の思いを告白する。
「君は僕よりはるかに真っ直ぐだ」さらに
「なにも持っていない人は手に入れたものへの執着が強いんだ。僕は絶対に近藤さんを手放さないよ」と、沖田総司(荒牧慶彦)は昏(くら)い瞳で語る。

「守るべき人、尽くすべき人を見つけた」と、山崎烝(高崎翔太)は武士として生きる意味を説く。

 心に想いを秘めたまま「三人寄れば、すげえバカ!♪」とうそぶく、藤堂平助(小澤廉)、原田左之助(東啓介)、永倉新八役(猪野広樹)たちは明るく飯を喰う。

 望まぬ理由で江戸を追われた斎藤一(橋本祥平)、多くを語らず暗躍する山南啓介(輝馬)。
 豪放磊落、傲慢な態度でありながら、武士道を説く芹沢。
 芹沢に反発しながらも、その言葉が心に響いて仕方ない土方歳三(佐々木喜英)。

 

薄桜鬼 黎明録

「土方はおまえに夢を見すぎている。その夢がいつか、おまえを追い詰めるだろう」そう、芹沢に言われてなお、土方が信じる局長であろうとする近藤。
 その近藤を守るため、新選組のため、鬼とならねばならないのか、と苦悩する土方。

 

 人として「心」があるがために揺れる、その隙間に「鬼」が入り込む……。
 雪村綱道(江戸川萬時)が持ち込んだ、計り知れない力を出す存在・羅刹を生む秘薬を巡り、新見錦(篠崎功希)は裏切りを思いつく。
 それすらも「人」であるがゆえ。
 途中、実験体にされ羅刹となった浪士がばっさりと斬られ、カッと目を見開いたまま絶命した場面で、いつまでも閉じずに開かれたままの眼(まなこ)を、そっと平助が片手でおおい、そのまぶたを閉じていたのが印象的で、切なかった。

 

 やがて、すべての糸がひとつに絡まり、物語は終焉へ。
 芹沢を思う、伊吹がとった行動は――――。
 その頭を、ぽん、として「生きろ」と一言残す、彼の真意や如何に。

薄桜鬼 黎明録
薄桜鬼 黎明録

 

 この先、彼らがなぜ鬼と化さねばならなかったのか、それぞれの選択を由とする軌跡が、ここに在る。
 これは刹那に生きる者たちの、始まりの物語。

 

終演後、井吹龍之介役/白又敦、土方歳三役/佐々木喜英、沖田総司役/荒牧慶彦、斎藤一役/橋本祥平、芹沢鴨役/窪寺昭による囲み取材が行われた。

 

――ゲネプロを終えての感想をお願いします。
白又:新選組エピソードゼロ、という物語です。芹沢鴨という漢(おとこ)がいて新選組が生まれた、ということが見どころです。
佐々木:「鬼の土方」と呼ばれる土方歳三ができるまで、が描かれています。そこに至るまでの姿を見てください。
荒巻:沖田総司が、どうしてあの総司になったのか? を観てください。
橋本:先輩たちがここまで大きくしてくれて、渡してくれたバトンをしっかりと受け取り、僕ら新キャストだからこそできる『薄桜鬼』を創ります。
窪寺:ともすれば、今までの『薄桜鬼』に比べて、静かな佇まいの舞台だと思います。新選組の黎明期を力強く育んで、背負う覚悟をつづったお話だと感じました。
――お客様に向けて、一言、お願いします。
窪寺:この黎明録をキャストとともに尽力して、大切に届けます。
橋本:新キャストと熱い作品に仕上がっているので、前作と比べるとかではなく、その先に続くための物語として楽しんでほしいです。
荒牧:この舞台の『黎明録』の言葉通り、新たなキャストで新たな薄桜鬼の黎明を創り上げていきたいです。
佐々木:皆さんの熱を受け、このキャストと最後まで駆け抜けていきます。
白又:キャストがガラッと変わったことで、不安に思う方もおられるかもしれません。ですが、僕らは僕らのミュージカル『薄桜鬼』を創ります。このキャストで怪我なく、全員で大千穐楽まで辿り着きます。最後まで見ていてください。

 

HAKU-kakomi

2015年5月23日(土)AiiA 2.5 Theater Tokyoゲネプロにて。
文・おーちようこ

 

公式サイト ミュージカル『薄桜鬼』黎明録

黎明録キーヴィジュアル

©アイディアファクトリー・デザインファクトリー/ミュージカル『薄桜鬼』製作委員会

 

 

ミュージカル薄桜鬼という幸せ

 

 終わってしまった、とその喪失に耐えられず、頭の中でずっと歌が流れ続け夜中突然涙が出てくることもあった。

 悔いはない、と思っていたけれど終わってから、なんで京都に行かなかったんだろう、とか、もっとチケットを取ればよかった、とかそんな気持ちで胸がいっぱいになった。終わってしまった公演はもう観られないから、手元に残っている大量のトレブロをめくりながらその狂騒曲を書き残したいと思う。

 2014年9月、ミュージカル薄桜鬼藤堂編上演決定の一報がながれた。ゲームの中でも一番ヒロインに近い視点で描かれる藤堂のルートを、今まで藤堂平助を演じてきた池田純矢さんで観られるということが嬉しくて嬉しくて、続報が待ち遠しくてならなかった。

 10月、それまで薄ミュを支えてきた初演からのメンバである土方歳三役・矢崎広さん、斎藤一役・松田凌さんの卒業が発表された。

「新しい薄ミュになる」ことが楽しみだけれど寂しくもあった。でもそこに不安はなく、期待を込めてチケットを東京公演の半分くらい確保し、来るべき初日に、そして物販に備えた。

 薄ミュの物販では毎公演「トレブロ」(トレーディングブロマイド)が販売される。藤堂編は9キャラ×4種類。中が見えないように袋に入ったブロマイドを引き続ける。

「これが最後かもしれない」という気持ちが強かったので藤堂編のトレブロ、欲しいキャラは全部自分で引くと決めていた。己との戦いが、続いた。

 チケットがある日もない日も、仕事の都合がつく限りブルーシアターに居た(気がする)

 当日券や物販に行くのが目的だったけれど、何より寂しかった。近くにいるから、その寂しさが紛れるというわけではないけれど。

(今思うと公演中だったのに既に薄ミュロスだったのかもしれない)

 公演の詳細は一切見ずに臨んだ東京公演。

 大胆な楽曲のアレンジ変更。ラテン調で明るくエネルギー溢れるナンバー、全編にわたり歌い、踊り、剣を振る平助と、それを見守り支える永倉新八役・宮崎秋 人さん、原田左之助役・五十嵐麻朝さんの2人の姿。その頼もしさと、「バカでもチャラチャラしてるわけでもない」、2人のお芝居から平助の背中を守る、そ の気持ちがガンガン伝わった。

 そして、平助が悩みながら前を向いて進んでいくことを選びながらも、藤堂編は薄桜鬼の中で唯一隊士同士の戦いでラストを迎える。

 仙台城に羅刹を率いて入った山南敬介役・味方良介さんと、平助の戦いである。

 公演パンフレットで味方さんが

「きらびやかな両想いの2人と、闇を一身に背負う山南との対比は大きな柱として見せていきたい部分です」

 と話をされているので是非、DVDで楽しんで、溢れて止まらない作品への愛にひたっていただきたい。

 そして、彼らが2年間、駆け抜け作り上げてきたミュージカル薄桜鬼は、進化を止めることなく、5月23日から「ミュージカル薄桜鬼 黎明録」の上演が始まる。シリーズの前日譚にあたる物語だ。

 彼らが信じて繋いできた誠が受け継がれ、薄桜鬼の世界が続く幸せを噛みしめ、劇場へ向かいたいと思う。

 

ミュージカル薄桜鬼 藤堂平助編
京都公演/公演日程 2015年1月10日~12日 会場/京都劇場
東京公演/公演日程 1月17日~25日 会場/六本木ブルーシアター

 

文・高橋美里

 

薄桜鬼 藤堂篇

©アイディアファクトリー・デザインファクトリー/ミュージカル『薄桜鬼』製作委員会

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