荒牧慶彦インタビュー/TEEN×TEEN THEATER「初恋モンスター」|Theater letter 10
2017.2.5
Theater letter──不定期連載でお届けする、好きなものだけ集めた、舞台からの手紙。
「5年1組保護者会」にて。左から、多賀敦史役の小野健斗、三宮銀次郎役の神里優希、高橋 奏役の荒牧慶彦、金子十六役の佐川大樹、篠原耕太役のゆうたろう(敬称略)
「あらゆる意味で大人たちとの戦いかなと思っております」
3月に幕を開けるTEEN×TEEN THEATER「初恋モンスター」に向け、合同取材「5年1組保護者会」が1月10日に都内にて行われた。
原作は『ARIA』(講談社)で連載中の、マンガ「初恋モンスター」(著/日吉丸 晃)で超箱入り娘で世間知らずな女子高生・二階堂夏歩と高身長でイケメンだけど実は小学5年生・高橋 奏が織りなす、ラブコメディ。それだけに作中には小学生男子が大好きなシモネタや懐かしい遊びが盛りだくさん。
自身のユニット・SUGARBOYを始め、ギリギリなネタ満載の「おん・すてーじ『真夜中の弥次さん喜多さん』」やミュージカル『青春鉄道』などさまざまな舞台を手がける川尻恵太は本作でどんな空間を生み出すのか?
にぎやかな黒板アートが描かれた教室に登場したのは衣裳姿の荒牧慶彦、佐川大樹、神里優希、ゆうたろう、小野健斗と脚本・演出を担当する川尻恵太。
「一読するとぶっ飛んでる世界ですが、繰り返し読むとむしろ小学生たちが素直な気持ちをただただ伝えている作品なので、いかにして『大人らしさ』を消せるかを考えていきたい」と同時に「小学生たちが遊び回り、歌ったり踊ったりして伝える思いを劇場の特性も自在に使い、お客さんを巻き込んだりもした空間を作りたい」と川尻は語る。
それを受けて初座長を務める荒牧は「15年ぶりくらいに体操着を着ました(笑)。見た目と中身のギャップを出せるように、童心に返ったつもりで突き抜けたいです」と意気込みを披露。
また、本作のおもしろさでもある、小学生ならではのシモネタに関して川尻は、きっぱり「あらゆる意味で大人たちとの戦いかなと思っております」と断言。「……とは言っても苦手な方もおられると思うので、料理に苦手なニンジンを刻んで入れてしまうといったように、誰でも食べられる形にしてお出しできればと考えています」と気配りも。果たして、原作の魅力がどのように「舞台」という形に変わるのか──?
会見後、荒牧慶彦さんにお話を伺いました。
観たことのない「荒牧慶彦」を届けます。
──この作品はじれったくも可愛いラブコメディであり、子どもだから許されるであろうシモネタや子どもだから言える純粋無垢な言葉や、無邪気に放たれるからこそ「本当のこと」が強く響く、といった物語です。
荒牧:あー……半ズボンという衣裳だけでなく、僕のなかでは間違いなく新たな挑戦となる作品だと考えています。舞台上で堂々とシモネタを言ったこともないですし、未知の扉が開きそうです(笑)。たぶん、大人臭さが見えてしまったら台無しになってしまう舞台だと思うので、荒牧慶彦を捨てて、高橋 奏として「初恋モンスター」の舞台に立つ覚悟は決めています。
──2017年の新作にして初主演ですが、振り返って2016年についても少し伺います。
荒牧:もう……僕にとっては飛躍の年になったかな、と思っています。たくさんのすてきな作品に出逢ったし。
──いろいろな役に挑みましたが、なかでも舞台『K -Lost Small World-』では夜刀神狗朗とともにシークレットで伏見仁希の二役を演じ、舞台『炎の蜃気楼昭和編 夜叉衆ブギウギ』では直江信綱として今生の医大生・笠原尚紀と前生の山口利之という40代の役にも挑みました。
荒牧:そうですね。僕は常にいろんな役をやってみたいと思っているので、様々な役の機会を与えていただける事はすごく幸せなことでした。今回も、小5という役をいただいて、僕自身、どこまで振り切れるかわからないのですが、やれるところまでやってみたいと思っています。
──演じ分けが難しかった役もあるのではないでしょうか。
荒牧:役によっては演じる前に、これはどうやって切り替えようか? と考えたりすることもありましたが、いざ、実際に演じてみると「切り替える」という概念じゃなくなるんですよね。もちろん切り替えなくてはならないんですが、自分の中で感情がリセットされるというか……たとえば、『K -Lost Small World-』だったら衣裳を着てメイクをしたら、仁希になっていたというか。クロ(夜刀神狗朗)から無理やり変えたというわけではなく、その心になれたというか。
ことに山口については、まず見た目が40代に見えないというところで、入り込むことが難しかったですね。でも、僕は役を演じるにあたり見た目と同じくらい耳に届く音も大切だと思っているので、声色を変えたり、テンポを変えたりすることで、異なる役に見せる、ということはできると思っているので、そこは常に心がけています。
──そんなふうに役としての幅を広げての、今公演です。見た目と中味のギャップが大きな役に挑みます。
荒牧:これ、ヤバイです。僕自身の羞恥心というか、大げさですが人間としての尊厳みたいなものを全部、外さないとならない。大人としてつちかってきた社会経験というか「荒牧慶彦」を捨てなくてはならない……これ、むしろ、普通の子どもの役のほうがやりやすかったかもしれません。
──TEEN×TEEN THEATER「初恋モンスター」で共演のみなさんはいかがでしょう。
荒牧:実は、初めての方ばかりなんです。唯一、郷本直也さんは共演したことがあるので、ちょっと心強いですね。暖かく見守ってくれそうだから。
ただ、三宮銀次郎役の神里優希くんと金子十六役の佐川大樹くんは同じシリーズに出ていたことがあるんですよね。それだけで親近感が湧きますし、これからどんどんそういった新たな世代の俳優と共演する機会が増えていくと思うので、楽しみではあります。僕、後輩が好きなんですよ。先輩も好きなんですが、後輩がどんどん増えている今の状況が嬉しくて。もっと言えば、後輩というよりも友だちになりたくて。だから、「まっきーさん」って呼ばれるより、「まっきー」って呼び捨てにしてほしいし、そう呼ぶのは気が引けます、ということなら、できるだけ敬語は止めてほしいと思っています。
──ゆうたろうさんといった、初舞台の方も出演されます。
荒牧:バラエティ番組で観ていたので、びっくりしました(笑)。今回、いろんな要素があって、これまでにない2.5次元舞台になるんじゃないかと思っています。
──そんなふうに、いろいろな要素が混じっていくことで、芸能のひとつとして興味を持って劇場に足を運ぶ方もおられると思います。
荒牧:だとしたら、うれしいですね。……2.5次元ってまだ偏見を持たれているジャンルではないかと思っているので……。
──……スパッと言っていただいたことに驚きました。確かに、色眼鏡で見る方もいるかと。
荒牧:正直に言ってしまうと、感じることがあります。出演している僕らはとっくにそんなことはないって確信しているし、誇れる文化になりつつあると思っています。
といっても、観たことがない方に説明が難しいこともわかっているので、むしろ、そういった方にこそ観ていただけたらと願うんです。どうしても食わず嫌いというか、抵抗を感じる方もいらっしゃると思いますが、ひとつでも心惹かれる要素があったら、ぜひ一度、お越しください。きっと楽しめると思うし、全力で楽しませます。
──確かに。エンタメなので物見遊山、怖いもの見たさ、好奇心で足を運んでいただけたら、なにかしらおもしろいことが見つかるのではないか、と常々思っています。
荒牧:本当にそうですね。それでつまらなかったら、何を言っていただいても、叩いても構いません、と(笑)。まずは観ていただけたら。
──そして、初座長です。
荒牧:小5で、こんなぶっとんだ作品で、初座長ということで、デビュー当時から応援してくださっている方々のなかには本当に少しですが不安に思っておられる方もいらっしゃるみたいです……ただ、喜んでくださっている方もたくさんいらっしゃるので、「これが荒牧の初座長作品でよかった!」と思っていただける舞台にしてみせます。
これまでいろいろな座長を見てきましたが、みなさん、言葉よりも黙って背中で見せる方が多かったので、僕もまず、自分がやってみせる、という存在を目指したいです。同時に持ちつ持たれつ、足りないところは補ってほしいし、そんな関係でいたいです。とはいえ、小5の演技なので、演技で引っ張る、というよりは役に臨む姿勢や作品との向き合い方とか、そういったことで伝えられたら……と。
──気負いなく、フラットです。
荒牧:気負いはありませんね。まあ、座長らしいこととして、一回はみんなを誘ってご飯を食べたいです! 子どもが好きで、今回、初めて一回りも下の役者とがっつり共演するので仲良くしたい。そこも今から楽しみにしています。
──いろいろな「初めて」が詰まっている舞台です。
荒牧:久々に体操着も着るので……小学生のころは外でも遊ぶし、ゲームもするしと遊んでばっかりいたので、そのころを思い出して演じたいと思います。声も高めに演ろうと思っていて。
稽古はこれからなので、まだ役に関して話せることは少ないのですが原作とアニメも参考にして、挑みたいと思います。
──2017年初めの取材なので、今年の抱負をお願いします。
荒牧:さらにさらに上を向いて、高みを目指す年にしたいし、飛躍していきたいです。この記事を読んでくださる方には「初挑戦となる舞台です。こんな荒牧慶彦を観ることができるのはここだけです! 観たことのない姿をお届けします」と大きな声でお伝えしますっ。
──ありがとうございました。
荒牧慶彦 あらまき・よしひこ
1990年2月5日、東京都生まれ。取材時、26歳。
公式ブログ 「慶びの詩」
撮影・取材/おーちようこ
TEEN×TEEN THEATER「初恋モンスター」は、3月3日から12日まで東京・品川プリンスホテル クラブeXにて上演。チケットは好評発売中。
舞台公式サイト http://hatsukoimonster-stage.com/
(C)日吉丸 晃/「初恋モンスター」舞台製作委員会