夕陽の向こうにあったものは  Dステ『夕陽伝』東京公演私的レビュー/高橋美里

 たくさん舞台を観ているけれど、実はDステは「はじめまして」だった。

 過去にD-BOYSのみなさんを個別に舞台で観たことはあるし(「もののふ白き虎」で荒木宏文、「広島に原爆を落とす日」で高橋龍輝……それこそたくさん!)、彼らのホームとなるDステや、他にもいろいろな作品を上演していること、Dライブというイベントや先日Dステ上映会があったことも知っていたけれど。

 「夕陽伝」の一報は忘れもしない2015年4月、「弱虫ペダル the WINNER」が終わった直後だった。脚本・末満健一、演出・岡村俊一、主演に瀬戸康史、2番手にその当時はD-BOYSに加入していなかった宮崎秋人(D-BOYS以外からの大抜擢にびっくりしました!)。そして鈴木裕樹、池岡亮介、荒井淳史、前山剛久、高橋龍輝……これ絶対面白い!という期待がふくらんだ。

 先行でチケットを取るためにファンクラブに入り、モバイル会員に登録し、万全の体制でチケットを確保した5月から、本当にあっという間に9月がやってきた。手元にあるチケットは東京公演9公演分(9/22.23.24.27.28.29.30.31昼夜)これが本当に2週間で手元からなくなってしまうのかと思うと始まるのも寂しかった。

 

 時は大和朝廷の頃、国を治めていた凪大王(なぎのおおきみ/山本享)は妻を亡くし心を病んでいた。大王に替わり政治を取り仕切ったのは摂政である猿美弥(えみや/遠藤雄弥)。しかし家臣からはその体制への不満もあり、王位継承問題への発展していた。

 そんな中、この物語は、大王の息子・海里(かいり/瀬戸康史)の視点で語られる。「大和の皇子は馬鹿皇子」と陰で噂されていることを知りながらも、王位に興味を持たず自由奔放な海里に対して、その弟・都月(つづき/宮崎秋人)は優しく、真面目で一部の家臣からは「都月を次の王に」と望まれていた。その2人と兄妹同然として育ってきた、猿美弥の娘・陽向(ひなた/小芝風花)3人は穏やかな日々を共にしてきたが、成長しお互いを想う気持ちは淡い恋心へと変わりつつあった。

 一方、国内外の問題が山積する中で猿美弥は在る決断を下す。1人娘・陽向を熊曾国第十四皇子・真多羅(まだら/鈴木裕樹)へ嫁がせ、和睦をしようとしたのだ。

 本人が望まない婚礼は許さないと断固反対する都月と、その現実から目をそむけ「この結婚が嫌だっていったら、私の手を取って逃げてくれる?」と差しのべられた陽向の手を取れなかった海里。

 ───3人の運命はここで道を違え、破滅へと向かう。

 「大王の息子はなんだ?」と海里は舎人である出雲(荒井敦史)に問いかけ、「皇子だ」と答えた出雲に「答えが決まってることなんて面白くない」と言い切る。決められた役割や運命を越えて自由になりたいと、自らの夢を語り信念を貫こうとする海里は眩しく、その兄のためになりたいと生きてきた都月の真っ直ぐさは、陽向の婚礼をめぐり、兄と向かい合いながら「陽向にも国にも選ばれなかった」という感情に囚われ暗く狂気に沈んでいく。明るかった表情から一変、狂気と苦しみに歪んでいく都月の表情、発せられるセリフから溢れる感情は真に迫り圧倒される。

 婚礼の夜、海里の前に現れた真多羅を護衛する異形の者、毘流古(ひるこ/池岡亮介)、その登場シーンは鳥肌が立った。衣装の奇抜さだけでなく、剣を振る動作、立ち姿一つ一つが、他の人間とは違う存在であることを体現していて、しかもそこに色気をも感じてしまうのだ……その姿からどうしても目が離せなくなってしまう。

 海里や都月、陽向に物語があるように、夕陽伝は登場人物それぞれにしっかりと物語がある。そしてその背景に思いをはせずにいられないほど、舞台上にいる役者たちはその役を生きていた。

 兄に劣等感を感じ徐々に闇にとらわれる都月に、自らの置かれた境遇に近くその内側に異形の心を感じた真多羅。異形に生まれ、捨てられたことから自らが生まれてきた意味を問い続ける毘流古。国を支える民として貧しいけれど生きることにただ真っ直ぐな農民の富士丸。陸奥兄弟、一人娘を「国のため」だと熊曾の真多羅に差し出した摂政・猿美弥――

海里の物語としてだけでなく、観る視点を少し変えるだけでこの物語は違う景色を見せる。どこを切り取り、誰の視点で見ても、その物語の厚みは変わることはない。

 

 物語は重たく暗くなるばかり、ではなく、時に笑いが起こるパートもある。

 毎公演、陽向と真多羅の婚礼の儀の最中に行われる懺悔タイムでは、真多羅と手下たちによるガチの懺悔?があり、血にまみれた婚礼だったはずなのに思わず笑ってしまう。富士丸・陸奥による前説も(大阪バージョン気になります!)あり、それぞれの持ち味、役の個性が緩急つけて発揮されている。

  自分が感情移入している役やキャストがたどる運命を見守るのは、時に苦しいこともある。この「夕陽伝」も、2人の皇子は最後に自らの人生を選択する。2人がお互いにぶつけあう本当の気持ちが剣に、言葉に乗りぶつかり合う。一瞬も見逃さず最後の最後まで彼らの選択をどうか見守ってほしい。

 初めてのDステは、芝居への熱と、神がかった演技をする俳優たちの力に溢れていた。

 

文/高橋美里 観劇日 東京公演9公演分(9/22.23.24.27.28.29.30.31昼夜)
※宮崎秋人さんの「崎」は旧字です。

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