SUNPLUS第1回公演「SUMMER BAZAAR~夏の終わり~」初通し稽古レポ!

 サンミュージック所属の11人の若き俳優からなるユニット「SUNPLUS(サンプラス)」。2015年1月の結成後、それぞれに活動してきた彼らが、この度、初となる単独舞台、SUNPLUS第1回公演「SUMMER BAZAAR~夏の終わり~」に挑戦する──その稽古場レポートをここにお届け。

 

 取材・文/おーちようこ 撮影/梁瀬玉実

左から佐奈、谷水、井澤、平野、丸山

高2の夏、ぎこちなくも互いを思いやる姿が面映ゆく
彼らのまとう空気と重なる

 

「一回、通してみましょうか」

 それはある日の都内稽古場。演出を手掛ける赤澤ムック(あかざわ むっく)の一言で始まったのは、荒通し(あらどおし)──稽古場に静かな緊張が走る。

 粗通しとも表記されるが、いずれにせよ「あらい」まま全編、最初から最後まで止めずに演ってしまう稽古のことだ。全員で脚本を読む「読み合わせ」、動きや位置を決めながら行う「立ち稽古」といった段階を経て初めて通す。台詞がどれだけ入っているか、段取りを覚えているか、そもそも役を表現できているのか、それぞれが己の「現在の力」を確認するとともに、その場の全員に力量が知られてしまう。怖い。けれど、自身の力を知ることでしか、先へと進めない。
 
 舞台となるのは、とある高校の寮。夏休み、生徒たちが次々と帰省するなか、あえて居残る高校2年生の少年たちの物語。1時間半の会話劇に挑むのは、11人の若き俳優たち。
「SUNPLUS」の結成は2015年1月。この冬、舞台『刀剣乱舞』維伝 朧の志士たちで主演を務める蒼木陣(あおき じん)、ミュージカル『テニスの王子様』3rdシーズン出演中の井澤巧麻 (いさわ たくま)、舞台『あんさんぶるスターズ!オン・ステージ』シリーズ出演中の佐伯亮(さえき りょう)、Fate/Grand Order THE STAGE -神聖円卓領域キャメロット- で主演を務めた佐奈宏紀(さな ひろき )、舞台『あんさんぶるスターズ!オン・ステージ』シリーズ出演中の谷水力(たにみず りき)、MANKAI STAGE「A3!」シリーズ出演中の野口準(のぐち じゅん)、平野宏周 (ひらの こうしゅう)、丸山隼 (まるやま しゅん)、水田達貴(みずた たつき)、三井理陽(みつい りょう)、山形匠(やまがた たくみ)の11人。互いに切磋琢磨する彼らはどんな世界を見せてくれるのだろう。

 

左から佐奈、佐伯、谷水、井澤

奥:佐奈、手前左上:山形、左下:佐伯、右:井澤

  
 ある理由から談話室で共同生活を送ることになった生徒たち。名前だけは知っている、あるいは当人にまつわる噂だけは知っている、実は共通の知り合いがいる……その関係はさまざまで、いきなり距離を詰める者、そつなく相手をする者、壁を作る者と対応は十人十色。しかし、ぎこちなく会話を重ねるごとに、その人となりが浮かび上がり、浮かび上がることで彼らなりの悩みや迷いが見えてくる。
「そう簡単じゃない気がするけど、真実を知るって」
 ふと放たれた台詞に、うなずく者、聞き流す者、人知れず顔色を変える者、反応が異なる間が印象的だ。一瞬の全員の顔に注目してほしい(目が足りない……)。やがて、生徒たちに関わる先生、あるいは家族といった者たちが絡み、その態度の理由が明かされてカチカチとピースがはまっていく様が心地よい。勢い余ってぶつかり、思わず本音がこぼれる姿が照れくさい。笑い崩れ、ふざける時間が微笑ましい。けれど、若手俳優がにぎやかに、ただ、わちゃわちゃしている舞台──では決して、ない。

 台詞が出てこず、演出助手に補足される場面もしばしば。さらに小さな劇場とあって舞台上にある椅子やテーブルを出し入れするのも彼ら自身。役のまま話しながら、あるいは怒りながら笑いながら、さり気なく道具の位置を確認し、くるくると動き回る。そのキッカケがひとつずれるだけでも次の場面に、誰かの台詞に影響が出る。「役」として舞台上に在りながら、心地よく物語を届けることも意識する。だって、プロだから。

 この日、初めて動きをつけてもらったという、彼らのケンカの場面に驚いた。十代の、おそらく本気で人を殴ったこともないであろう力加減も知らない、でも熱量が有り余る男の子の、文字通り「取っ組み合い」が目の前で繰り広げられ……迫力の空間があった。動きを付けたのは殺陣師として信頼の厚い、渥美博(あつみ ひろし)。殺陣といっても武具を使った戦いばかりではない。こうした日常のケンカやアクションの立ち回りに動きの流れや段取りを付けてもらい、覚えることも演技のうちだ。いかに役として殴るか、あるいは殴られるか、痛がるか、それらが客席からどう観えるか。ふとしたためらい、後悔、苛立ち、といった感情が一気にあふれ出す瞬間だ。

蒼木、谷水

左から谷水 水田 井澤

左から 野口 三井

 
 最初から最後まで通した後、休憩を挟んで行われるのは、「返し稽古」。それは文字通り、演出家から個々へのきめ細やかな返し。
「ただ大きな声を出すだけの演技は野蛮に見えてしまうから考えて」
「今日はとてもスウィートだった。愛があふれている感じがすばらしい」
「疲れている割には行動が元気すぎて、台詞と動きがあっていない」
「顔をかばう手がずっと敬礼に見えてしまうからバリエーションを作って」
 テンポについて、ニュアンスについて、ひとつひとつ具体的に簡潔に、褒めるところは褒め、一考すべきところを叱るのではなく彼らに届く言葉で伝えていく。神妙な顔でうなずきながら脚本に書き込み咀嚼する俳優たち。ふいに「ここ、日替わりにしようかな……」と、つぶやく演出家に、「わあー、(やることが)増えたあ!」と口々に騒ぐ。とても楽しそう。

 続いて、殺陣の振り返り。
「この動きが大きすぎる」
「身体の向きを変えてみようか」
「この角度のほうが客席からきれいに見える」
「でも、一連の動きに慣れてしまわないでね。段取りにならないよう、常に新鮮に演ること」
 返し稽古を終え、気になる場面だけを再度、通す。すると、みちがえるように変わるからすごい。身体で、心で、覚える役者たちの表情は真剣だ。かくして、この日の稽古は終了。翌日のスケジュールとそれぞれの課題を確認し、繰り返す日々が続く。

「演劇」とは生身の人間が毎日、演じているからこそ、おもしろく、日々、ちがう景色が舞台上に広がる。それは、俳優自身が精度を上げていくことでのみ辿り着く場所だ。だからこそ、その成果を目撃してほしい。公演は10月18日(金)~27(日)の10日間、おそらく公演中も彼らは変わり続けるのだろう──そしてまた、それぞれが演じる「役」へと旅立つのだ。

 

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SUNPLUS第1回公演「SUMMER BAZAAR ~夏の終わり~」

公式サイトhttps://sunmusic-plus.com/events/summer_bazaar/

■あらすじ

舞台は、海沿いの全寮制男子校。
夏休み。生徒たちが続々と実家に帰省する中、寮に居残った生徒が数名。
暇を持て余していると思われた彼らは寮の伝統行事「サマー・バザー」に駆り出されることになる。
やがてそれぞれが抱える帰省しない理由も見えてきて・・・
――――いらないものは何ですか?

■脚本:宮本武史
■演出:赤澤ムック
■出演:蒼木陣 井澤巧麻 佐伯亮 佐奈宏紀 谷水力 野口準 平野宏周 丸山隼 水田達貴 三井理陽 山形匠 (あいうえお順 敬称略)

 

本記事のおともにどうぞ。
舞台俳優は語る 第5回 佐奈宏紀の「今」

http://saizenseki.com/oochi/actor_talk_sanahiroki/

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