演劇部女子から観劇女子へ
中学校の時、私はなんちゃって「演劇部女子」でした。すぐそばに川が流れる地方都市の学校で、これといった目標や野望があるわけでもなく、欲しい物があったわけでも、なりたいものがあったわけでもなく。
まだ、小説を書いて生きて行くのだ、と心に決めなかった頃のことです。
演劇が好きだったのかどうか、はよくわかりません。ただちょっと、オタク気質で主張が強くて、友達がいて先輩がいて後輩がいて。そんな結構愉快な時間を、演劇部で台本を読んだり即興芝居をしたりして過ごしていました。
結論から言えば、私は演劇の道に進むことはありませんでした。
ただ、節目節目に、もしかしたらそういう道があったのかも、と思うことはあって。
もしかしたら、小説と出会っていなかったら。趣味だけでも、演劇に類するものを続けていたのかもしれない、と思います。
小説に出会っちゃったから、そうはならなかったんだけど。
でも、そんな私が、二十歳も過ぎて唐突に、演劇の世界にどっぷりはまって、観劇女子になっちゃったのは、不思議なものだなって自分でも思います。
演劇と言えば、演劇部でしか知らなくて。学校の観劇教室でしか、舞台なんて見た事なくて。ミーハーで、好きな気持ちだけでとびこんだ世界。知らないことの方がまだまだ多くて、「そんなことも知らないの!?」と笑われることは、一度や二度じゃなくて。そのたびに、恥ずかしくて、死んでしまいたくなります。
でも、この世のどこかに、やっぱり、清水の舞台から飛び降りるみたいな気持ちで、演劇ってものを好きになっちゃう人もいるんじゃないかなって思って。
どっぷり見て、しこたま祈って。そしてようやく、少し語ろう、と思ったのです。わたしの、好きになった世界について。
私は小説を選び、これからも、小説を書いて生きていきます。
でも、最近時々、舞台に立つ夢を見ます。だいたい、台詞が出てこなくて困る夢です。演劇部時代から、地続きなんだなって、目が覚めると笑ってしまいます。
演劇部女子は、作家になって、それから観劇女子になりました。このサイトに載せてもらっているのは、そんな私の、深夜のラブレターみたいな、言葉達です。