紀伊國屋書店創業100周年記念公演『わたしの書、頁を図る』出演の、味方良介さん特別インタビュー。
2026.5.17
地道に着実に、一歩、一歩
ずっと、僕はここにいます

紀伊國屋書店創業100周年記念公演『わたしの書、頁を図る』に出演する、味方良介さん。『教場』でテレビドラマ初出演を経て、今年2月公開の映画『教場 Reunion』『教場 Requiem』、3月には大河ドラマ『豊臣兄弟!』とさまざまな映像作品に出演。
舞台はミュージカル作品をはじめ、史上最年少の24歳で『熱海殺人事件』の木村伝兵衛に抜擢、多くの「つかこうへい作品」で主演を務め、昨年はミュージカル『ブラック・ジャック』でドクター・キリコを熱演した。
小学生で舞台と出会い、その輝きに心惹かれ生涯の仕事と誓い、10代でデビュー。30代を迎え、着実に活動の場を広げている自身の「いま」を伺った。
衝撃的な舞台作品との出会いが
一生を決めました
ーーこの世界を目指したキッカケを伺います。
最初に観た舞台があまりにも衝撃的で、叶うことなら一生舞台に関わって生きていきたいと思いました。それはプレイヤーとしてかもしれないし、スタッフワークかもしれない。形はどうあれ、この世界にいたい。その思いは今も変わらず、ずっと胸の中にあります。
ーーその作品はなんでしょう?
東宝のミュージカル『エリザベート』です。観劇文化が身近にある家庭で育ちましたが、僕はまったく興味がありませんでした。そのときも本当は兄が行く予定だったのですが都合がつかなくなり、代わりに僕が連れて行かれました。それが、小学5年生の時。そこでとてつもない衝撃を受けて……わけもわからないまま、ただ「あれになりたい」という思いに囚われました。
ーー運命の出会いです!
はい。あのとき、兄が行けていたら、僕はここにいませんね(笑)。
ーーその当時の思いのまま、現在、ここにいることがすごいです。
ありがとうございます。最初はただ憧れていただけでしたが、中学生になって現実が見えるようになってからですね。俳優になるためにはどうしたらいいのか、周りの方に聞いて、いろいろ教えていただきながら、そこに向かって専念していったという感覚です。
ーー2011年11月、赤坂BLITZでもミュージカル・コンサート『恋するブロードウェイ♪』で舞台デビューを果たします。味方さんとともに、太田基裕さん、大山真志さん、小野田龍之介さん、海宝直人さん、内藤大希さん、松下洸平さん(あいうえお順)といった若手ミュージカル俳優が共演するシリーズ第一弾で、その後も多くの俳優が出演しています。
僕が尊敬するミュージカル俳優の岡幸二郎さんがスーパーバイザーを務めていました。楽屋のホワイトボードに「楽しむ」と書いてあって。まずは自分たちが楽しむんだ、と。悲劇であれ喜劇であれ、演じること、表現することを心から楽しむんだと教わりました。自分が楽しむことで、劇場にいるお客様にも、その熱や気持ちを届けることができる。その言葉は今もずっと大切にしていますし、なにより岡さんご自身が、今も楽しみながら走り続けていらっしゃる。だからこそ、僕も走り続けていられます。
もちろん、ここに辿り着くまで、たくさんの先輩方と出会い、学ばせていただきました。でも自分の根っこにあるものは、今もその想いにある気がしています。
僕自身、決してずっと日の当たる場所を歩いてきたわけではありませんが、この仕事を続けると決めていたので、今もこうして演じることができています。
ーー2020年、ドラマ『教場』に出演します。
2017年から木村伝兵衛を演じさせていただいていた『熱海殺人事件』が縁でした。『教場』で監督を務める中江功さんが観に来てくださって、終演後、楽屋でお話をいただきました。ただ、そのときは「さあ、飲みに行くぞー! 」みたいな空気だったので「機会があれば、ぜひお願いします」とお返事して(笑)。でも、その後、本当に正式なオファーをいただいて驚きました。
俳優として大きな経験になると思い、覚悟を決めて飛び込んでみたら、舞台とはまったく違いました……身体的にも精神的にも。これまでの自分が持っていた引き出しだけでは太刀打ちできないことがたくさんあって、だったら、ここで学べるものすべて持ち帰ろうと決めました。お話をいただける限りは、映像作品も積極的にやっていこうと考えました。ただ、だからといって舞台から離れたわけではありません。ここで得たものをまた舞台に持ち帰りたいし、そこから「舞台っておもしろいな」と感じてくださる方や、初めて僕を知ってくださる方がひとりでも増えたらうれしい。
そうやって少しずつ広がって、巡っていけたら素敵だなと。その積み重ねが、今につながっている気がしています。
ーー続けていく、そのためには、という視点の位置が高いです。いつからでしょう。
ずっと演じ続ける、という大きな目標があるからかもしれません。これまで決して注目を浴びる場所にだけ居たわけではないからこそ、自分の立ち位置を考えるようになったというか。そのときどきで、自分にできることをやっていこうと決めて、ここまで続けてきた感覚です。
ーーそのことがすごいです。今年2月の、つかこうへい十七回忌特別公演 『熱海殺人事件』ラストメッセージを演出した中江功さんが当サイトのインタビューで「演劇の世界には僕が出会っていない、うまい役者がたくさんいる」と驚かれていました。
そう言っていただけることは、素直にうれしいです。舞台って、先の予定に向けて日にちを決めて足を運ぶエンターテインメントですよね。よほどのことがない限り、思い立ってすぐ観に行けるものではない。でも、その空間で演じている俳優の中には、おもしろい方がたくさんいる。実際に劇場へ足を運んで、そういう存在を見つけてくださる方がいるのは、本当にありがたいですよね。
今年、2月 『熱海殺人事件』も観劇しました。次世代の俳優たちが作品を受け継ぎ、演じ続けてくれることを、純粋にうれしいと感じました。同時に、自分が演じてきたものを客席から観ることで、新しい発見もありました。映像作品に出たことで視野が広がった部分もありますし、舞台に立っているときは見えていたつもりでも、実は見えていなかったこともあるんだなと。やはり経験することは大切だと、あらためて実感しました。

言葉が踊る脚本に出会えて
僕はどうなっちゃうのかな
ーー今回の作品は、図書館を舞台に、木村さん演じる職員の柳沢町子と出会い、自主映画への出演を持ちかける監督の岸口慶太役を演じます。
木村多江さんは、ずっと出演作を拝見していて、いつかご一緒できたらと思っていた憧れの方です。今年1月から放送のドラマ『50分間の恋人』で初めて共演させていただいたのですが、社長と部下という関係で、多江さんがものすごくアグレッシブな社長を演じていらっしゃって。「普段の自分のテンポ感と違うので難しい」とおっしゃっていたのですが、あれだけ突き抜けたお芝居をされていて、本当に驚きました。またいつかご一緒したいと思っていた矢先に、今回の機会をいただいたのですごく光栄ですし、今から楽しみです。
脚本・演出の小沢道成さんとは今回が初めてですが、脚本を読んだときに、台詞が立体的というか、言葉が踊っているような感覚があって、一気に惹き込まれました。多江さんが僕の抱いているイメージにすごく合っていて、読めば読むほど想像が広がっていく。自分はこの役をどう演じるんだろう、多江さんはどうされるんだろう、共演者の皆さんはどうなるんだろうと、今からわくわくしています。
ーー言葉が踊る? とは。
間の取り方というか、呼吸感が独特なんです。僕も含めて、みんなの呼吸感がおもしろくて、隠さず本質を突いてしまったり、少しズレたりする瞬間がある。その対話のリズムがすごく不思議で、お客様も「この人はどういう人なんだろう?」と、次々に興味を引かれていく脚本だと感じました。
たとえば、多江さんに僕が投げる言葉によって、お客様が「そうそう、そこが知りたいんだよ」と感じたり、「えっ?」と心を動かされたりする感覚があるんです。
相手との掛け合いで感情が大きく動いていく作品なので、難しそうですし、きっと大変なんだろうなと。でも、だからこそ演りたい。稽古はこれからですが、小沢さんの頭の中にあるものをどこまで汲み取って、自分なりに発信できるか。そこは稽古に入る前から、ずっと考えています。
ーー久々に、味方さんが紀伊國屋ホールに立たれることもうれしいです。木村伝兵衛としてこれまでに5回、2021年1月と6月の劇場改修工事前後の公演にも出演され、2022年7月『蒲田行進曲完結編 銀ちゃんが逝く』以来です。
僕もうれしいです。ことに7月は、つかこうへいさんの命日がありますし、役者としての大きな武器を作ってくれた場所でもあるので、思い入れもひとしおです。
なにより作品の舞台が図書館というのがすてきですよね。このデジタルな時代に紙の本がたくさんある空間での物語で、一歩、劇場を出れば、そこには書店があって本が並んでいる。劇場に入る前も、出た後も、作品世界にひたっていただけるような時間を届けられたらと思います。
ーーお話を伺うと、着実にいろいろな経験を重ねていらっしゃいます。
地道に歩んでいくことは、ずっと大切にしていることです。今、自分に与えられていること、自分がキャッチしたいと思うことに対して、一歩ずつ進んでいく。そこで得た縁や機会を、また次の作品につなげていけたら最高ですね。
この作品も、そのひとつです。
演劇力の高い方々とご一緒できる喜びもありますし、同時に怖さもあります。今の自分がどこまでこの役になれるのか。そこを楽しみながら挑みます。
僕自身も、まだ知らない自分に出会えるかもしれません。どうか見届けていただけたらうれしいです。
味方良介(みかた・りょうすけ)
公式サイト https://www.japanmusic.jp/talent/ryousuke-mikata/

紀伊國屋書店創業100周年記念
『わたしの書、頁を図る』
公式サイト https://www.watashinosho.jp
作・演出・美術 小沢道成
出演 木村多江/味方良介 光嶌なづな 中井智彦/坂口涼太郎 猫背 椿
公演期間 2026年 7 月3日(金)〜19 日(日)
会場 紀伊國屋ホール(新宿東口・紀伊國屋書店新宿本店 4F)
チケット一般発売日 2026年 5 月 16 日(土)

