八幡晃子(やはた・あきこ)

観劇サイト「最善席」管理担当。テニスの試合にかけた24時間365日。

全力疾走のエンターテインメント

 初めてミュージカル『テニスの王子様』を観たのは、2ndシーズン関東立海の名古屋公演。親しくしていた先輩にチケットを工面してもらい、「一度観てみるのも面白そうだよね」と軽い気持ちで観に行ったテニミュに、あっという間に虜になってしまった。
 初めて観たテニミュは、有体に言うなら「カッコよかった」。舞台を観た経験などほとんど無かった私にとって、目の前で繰り広げられる生身の男の子たちによるエンターテインメントは圧巻であり、衝撃的だった。特に6代目青学の子たちは、卒業公演ということもあり、気合の入り方が違った。一幕、二幕と進むうちに、目が自然と青学キャストを追うようになり、三幕が終わる頃には青学しか見えなくなっていた。その日は昼夜2公演観劇予定で、夜公演が終わる頃には、6代目青学が好きになっていた。
 何がなんだか分からないまま、6代目青学のDVDを買い漁り、いつの間にか青学という学校にすっかり入れ込んでしまっていた。これで卒業なんて信じられない、辛い、せっかく好きになったのに。当時何度そう呟いたか分からない。
 泣いて惜しみながら6代目青学の卒業を見送り、7代目青学を迎え入れた。大好きな6代目の跡を引き継ぐ7代目を、好きになれる気がしなかった。見慣れない新青学をどう受け入れていけば分からないまま、比嘉公演を観た。千秋楽後も、やはり完全には7代目を好きだとは思えず、続くドリライ、全国氷帝公演をどう観ていいかも分からなかった。テニミュを好きになって半年足らず。代替わりの受け入れ方も、テニミュの見方も、何一つ自分の中で整理しきれなかった。
 それでも分からないままに観に行ったドリライ2013。一つ目の転機はここだった。
 ——比嘉公演と全然違う。
 ステージの中央に主役校として立つ7代目は、比嘉公演で見せた姿と全く様変わりしていた、ように感じた。何がそう思わせたかは分からなかった。ただ、ステージ中央で、決して大きくはない身体をはち切れんばかりに力いっぱい動かし、ジャージをはためかしている男の子。その子から目が離せなくなり、その子を中心として、7代目青学が、比嘉公演とは比べ物にならないくらい輝いて見えた。この子たちをもっと観たいという気持ちがかつてなく強まった。
 正確な数は覚えていないけれど、比嘉公演の約二倍のチケットを取って挑んだ全国氷帝公演。予想していたよりも遙かに、7代目青学は成長を遂げていた。青いライトの下で踊る彼らの雄々しさは、公演を重ねるごとに美しく、更に進化していった。特に7代目を好きになるきっかけとなった男の子。その子は全国氷帝公演が初試合だったのだけれど、初試合とは思えないくらいの動きで、毎公演必死に対戦相手と戦っていた。血糊と汗で顔を汚し、千切れそうな声で歌い、届かなかった勝利に涙する。全ての動きが常に必死だった。観れば観るほど、その子の演じるキャラが、その子自身が好きになっていった。どうしてそんなに毎公演、全力を出し切ることができるんだろう。いっそ不思議になるほど、彼らは舞台に自分たちの全てを注いでいるように見えた。
 二度目の転機は全国氷帝の凱旋公演。いつも通り公演を観ている最中、唐突に、彼らはゴールのことを考えずに全力疾走し続けるランナーのようだ、と思った。ペース配分なんて考えない——考えられないんだ、と。
 若手俳優と呼ばれる彼らの多くは、経験も浅く、自分たちの限界値を知らない。自分たちが充分なパフォーマンスをできているかも分からない。だからこそ、皆、常に全力で、がむしゃらなのだ、と思った。ゴールのことなど考えない。体力がもつかどうかも関係ない。ただ「今」に対して全力だ。切実で、必死な生き方だ。そして、それ故に私はテニミュを、彼らを好きになったのだと思い至った。
 とんでもないものを観ている、と思った。大変なものを好きになってしまった。膝の上に置いた手が震えた。1年近くテニミュを観てきて、ようやく気付いた。これはとんでもないコンテンツだ。若手俳優の命がけのエンターテインメント。それを私は、はした金で、何度も食べ散らかしてきたのだと思った。そんなことを考えている間にも、舞台上では役の中に生きる彼らが必死に動き回っている。これがテニミュなんだ、と思った。
 それ以降はもう、ただ無我夢中で7代目青学を追った。四天公演、全国立海公演、ドリライ2014。行ける限り行き、観れる限り観た。6代目以上に好きになった7代目青学を、泣きながら、それでも笑って見送ることができた。振り返ってみれば幸せな2年間だったし、私自身、ゴールのことなど考えず、ただその時その時の、「今」の彼らを観るために必死に走り続けた。

 若手俳優の「今」を切り取り続けるコンテンツ。それがテニミュだと思う。そしてそんな彼らの全力疾走のエンターテインメントを追って、私はこれからもテニミュを観続けるのだろう。

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