30年間の充電を経て、新作舞台『蒙古が襲来』上演。東京サンシャインボーイズ緊急会見レポート!
突然、緊急会見が開かれたのは、7月11日(木)。1994年、人気絶頂のさなかに突然の30年の充電を宣言した「東京サンシャインボーイズ」が言葉通り、30年間を経て、新作公演を発表するという。その会見で明かされた、意外(?)な事実をここにお届け!
登壇したのは三谷幸喜さんをはじめ、充電中の30年間、それぞれに活躍の場を広げてきた東京サンシャインボーイズの俳優陣。
この日、本番公演終わりで駆けつけ司会進行も努めた相島一之さん、阿南健治さん、小原雅人さん、梶原善さん、甲本雅裕さん、小林隆さん、近藤芳正さん、谷川清美さん、西田薫さん、西村まさ彦さん、野仲イサオさん、福島三郎さん、宮地雅子さん。さらに過去、一度だけ客演した吉田羊さんが研究生(?)として参加した。
30年の充電が終わった
記念公演です
「ひとつ、お伝えしておくことがあります。今回の公演は30年の充電が終わった記念公演で、これを機に劇団が再結成するわけではなく、この公演が終わり次第、再び充電期間に入ります。
次は80年の充電で、2105年になります。今世紀最後の東京サンシャインボーイズ、ぜひお見逃しなく!」
挨拶で、そう語るのは脚本家で演出家の三谷幸喜さん。どういうことか説明すると、1983年に自身が高校、大学の同級生と旗揚げした劇団「東京サンシャインボーイズ」は1994年、人気絶頂のさなか、突然、活動休止を宣言。それは実質的な解散だった。
解散直前公演『罠』には、充電期間開けの公演チラシも用意されていた。そのタイトルは『リア玉』。2024年、老境サンシャインボーイズ第1回公演(「リア玉(仮題)」をどうぞ、お楽しみに。と記されていて会場では、当時のチラシも。
「ですが、今回、ちょっと玉の制作が間に合わなかったので……新作となりました」
そのタイトルは『蒙古が襲来 Mongolia is coming』。
「サンシャインボーイズといえば、群像劇、コメディは欠かせません。劇団をやめた後、時代劇を書かせていただいたこともあり、今回は時代劇で行きたいなと思いました。お話はタイトルの通り、モンゴルが攻めてくる、蒙古襲来が題材です。
蒙古がやってくるその日の朝、まだ何も知らない九州のとある漁村で繰り広げられる、アットホームなコメディです。それ以上はまだ考えていませんが、なんとなく傑作になる予感があります!」
その言葉を受け、質疑応答で「脚本はいつ完成する予定でしょうか?」と聞かれ「そんなことを答える必要がありますか? もしかしたら、つかさんのように口立て(口頭で脚本を伝えること)かもしれないじゃないですか!」と、いささか心外だとばかりに答える三谷さんに「口立てなんか、一回もやったことないだろ!(笑)」と劇団員からの総ツッコミも。
さらに真摯な思いも明かす。
「充電期間が明ける、30年目が近づくにつれて……やるのかなあ、やだなあ、と思っていたんですが、やろうよ、やりたい、という声があって。僕はこの人たち(東京サンシャインボーイズ)に育ててもらったという思いもあるので、やろうと決めました」
なぜ、PARCO劇場なのか?
その話の流れから、なぜ今回の公演が『リア玉』告知にあった新宿シアタートップスではなくPARCO劇場なのか? の説明も。
「本当にニアミスと申しますか……本当は我々が拠点としていたシアタートップスでの上演を考えていたんですが閉館してしまっていたので、考えた結果、PARCO劇場さんに相談しました。
その後、本多劇場グループさんが2021年に新たにオープンされたんですが、ちょうど入れちがいくらいで動き出してしまって……シアタートップスさんには申し訳ないことをしたので(相島一之さんに向かって)、今度、謝っておいてくれませんか」と無茶振り。
すかさず梶原善さんが「あ、この前、僕、公演があったので、謝っておきました!」と阿吽の呼吸を披露する一幕も。
「とはいえ、実はきちんとお話しまして、PARCO劇場開幕直前にシアタートップスでプレイベント開催予定です!」
意外な活動休止の理由
「なぜ活動休止したのか? には理由がありまして。劇団の人気が出て、いろんなお話が来るようになったときに、僕には俳優さんのマネジメントはできないと思ったからです。だったら、この劇団がいちばん上り調子のときに解散して、俳優みんなが芸能事務所に所属できたらいいんじゃないか、と考えました」
この相談を受けたのが、旗揚げ当時からのメンバー、梶原善さん、相島一之さん、西村まさ彦さんたち。もっと劇団として続けたい、という声もあるなか、さらに劇団員全員を交えて話し合い、最終的に解散直前公演『罠』をいろいろな芸能事務所の方々に観ていただき、全員の所属事務所が決まったという。
ともすれば、その判断があったからこそ、30年後の今日、ここに勢揃いできたのかもしれない。そして故・伊藤俊人さんについても触れた。
「昨今の技術をお借りして、なんらかの形で出演していただこうと思ってます。PARCO劇場さん、よろしくお願いいたします!」
その言葉に会見場からは思わず拍手も。
研究生(?)の吉田羊です!
実は劇団としては15年前に一度、復活したという話題も。
「それが、2009年の『さよならシアタートップス 最後の文化祭』の「returns」公演でした。そのときに若いメンバーに出てほしいよね、と、吉田羊さんに出ていただいて。当時はまだ無名でいらしたのに、その後、どんどんどんどん活躍されて、あっという間に僕らを抜いていかれました。でも、出演2回目なので、研究生です。でも今日は研究生らしからぬ、真っ赤な口紅ですね(笑)」
そのイジり(?)に応えて吉田羊さんから。
「この口紅は三谷さんのリクエストです!」と反論。
さらに「三谷さんはいろいろと愉快なイタズラを仕掛けてこられる、と聞いていたので、すでに始まっているんだな(笑)、とこれからが楽しみです!」と頼もしい言葉も。
劇団員全員からも一言!
梶原善さん
「心に残っていることのひとつは、公演中の爆発的な笑い声です。メンバーと三谷さんの本をお客さんがあれほど笑ってくれたことがすごい、と思い出しますが、また体験できるかと思うとすごく楽しみにしています」
相島一之さん
「……感無量です。15年前に1回復活して、今回、こうしてみんなと会えてうれしいです。僕たち、みんな、三谷の書く脚本が大好きで集まったヤツラです。だからこそ、いい芝居をします!」
西村まさ彦さん
「東京サンシャインボーイズ3期生でございます。30年ぶりにみんなの顔を見れたことがうれしくて。新たに研究生が入り、研究生をどうやっていじめていこうかと……冗談だから!(笑)研究生と仲良く稽古をして、精一杯務めていきたいと思います」
宮地雅子さん
「信用しかない、おじさん、おばさんと共演できることが本当に幸せです。また、劇団当時と同じく愛にあふれたスタッフの方々と一緒にできることも感謝しています。若いころ、三谷さんに『宮地雅子は土臭い女優だ』と言われので、今回の題材にも自信を持って、土臭く稽古に臨んでいきたいと思います」
小林隆さん
「昔に味わった台本を開く瞬間の、今度は何が飛び出すのか? を思い出し、久々に大きなびっくり箱をみんなで開けられることが非常にうれしいし、楽しみだし、ワクワクします。健康管理に気を配り、しっかり準備して、精一杯舞台を務めますので、どうかご声援のほど、よろしくお願いします」
福島三郎さん
「最初、役者で参加しましたが、三谷さんに才能ないと言われて、演出補をやるようになりました。劇団解散後の今は、作・演出をやらせていただいてますが、今回は演出補として参加させていただきます。ただ、立派な演出助手の伊達(紀行)くんもいらっしゃるので、まだ何をするか分かっていませんが、がんばります!」
阿南健治さん
「30年、長いです。大谷翔平さんが先日、30歳になったと知って驚きました。生まれた年に解散して、そして今日まで、私は何を学び、どう変化したのか、を自分に問いつつ、エンターテインメント喜劇を楽しみたいと思います」
甲本雅裕さん
「ワクワクしています! 同時にめちゃくちゃ緊張しています! もともと20代半ばでサラリーマンを辞め、東京に出てきて、まったくの芝居未経験で、劇団に研究生という形で参加させてもらいました。でも、あるとき劇団員が負担していた稽古場を借りるための月謝を払うことで、正式に劇団員になれました(笑)。
迷惑ばかりをかけてきた三十数年ですが、三谷さんが書く本をしっかり読んで、一生懸命がむしゃらに舞台上を駆けずり回りたいと思います。観に来てくださる方には『劇団はこんなに楽しいもんなんじゃ!』と思ってもらえたら幸いです」
小原雅人さん
「宣誓させていただきます! 私は覚醒剤はやりません! 大麻もやりません! あらゆる一切のスキャンダルを起こさないことを誓います。One for all、All for one。ひとりはみんなのために、みんなはひとつの目的のために。この精神でまいりたいと思います」
野仲イサオさん
「今年、前期高齢者になりました! これでシルバーシートに大っぴらに座れると思いましたが、なかなか勇気が出ません。『蒙古が襲来』を控え、心は不安と期待で染まっていますが、がんばって参加したいと考えています」
近藤芳正さん
「みなさんから『近藤さんは劇団員じゃないの?』と聞かれますが、実はずっと客演です。でも、CMのオーディションで『所属は東京サンシャインボーイズです』と嘘をつき、三谷さんに叱られたことがあります(笑)。
僕は永遠の客演なのでちょっと冷めた目で見ていますが、どこか変で、どこか真面目で、仲が良いわけではなく、普段はばらばらですが、三谷さんの芝居になると一致団結する。この結束力と力強さは正直、感動さえしていました。そのメンバーとやれることがうれしく、毎回、三谷さんがいたずらを仕掛けてくれるので、今回はどんないたずらがあるのか、今から楽しみにしています」
西田薫さん
「私は札幌に移り住み、9年目ですが、またこのメンバーと、お芝居を作れることをうれしく、ありがたく思っています。私は充電に入る1年前に参加させていただいて、そのときは別劇団におりましたが、初めて稽古場に行ったときに、みんなのおもしろさと個性の強さと、それぞれが俳優として自立して立っている姿に圧倒されたことを覚えています。
なので、30年経って、より一層すごいことになっていると思います。私自身も精一杯、がんばって、みんなとおもしろい芝居を作っていきたいと思います」
谷川清美さん
「三谷さんの作品には解散公演の『罠』、『returns』に参加させていただきました。いつも節目節目の作品に参加させていただいているせいか、本当に毎回、祝祭というか、ものすごいエネルギーに触れています。今回もそのエネルギーが最高潮に達するのではないか、と思います。全国にいらっしゃる、ともに充電していたファンの皆さま、お待たせしました! 劇場でお待ちしています」
吉田羊さん
「私は15年前の復活公演『returns』に唯一の外部キャストとして出演させていただきました。カーテンコールで相島さんから『僕たちの仲間になってくれる吉田羊です』と呼び込んでいただいて。その言葉にとても驚き、うれしかったことを昨日のことのように覚えています。
15年後にこうして声をかけていただき、仕事を辞めずに続けてきてよかったと感じております。そんな私も歳を重ね、老眼が進み、台詞覚えも悪くなりました(笑)。けれども、この皆さんのなかではいちばんの若手でございます! 新人女優のつもりで頑張りたいと思います」
最後に、三谷さんから改めて。
「30年前に『30年後に会いましょう』と別れましたが、本当にこんな日がくるとは思ってもみなかったです。みんなが並んでいるのを見たときに感無量……というか、おっさん、おばさんばかりで病院の待ち合い室みたいな感慨に浸りました……あ、すみません」と神妙な顔で語る姿に劇団員も思わず笑みが。
「まとまりのないメンバーではありますけども、この人たちとまた芝居ができることを、心からありがたいと思っていますし、いいものを作りたいと思っています。これだけいい俳優が集まっているんですから、日本の演劇史に残るお芝居を作ってみようと思っております。ぜひ劇場でご覧になってください」
なお、公演が2024年ではなく、2025年になったのは、『罠』の千秋楽公演が1995年だったため、1年ずれたこと、お許しください、とのこと。
撮影/岡千里 取材・文/最善席
パルコ・プロデュース2025
東京サンシャインボーイズ復活公演
『蒙古が襲来 Mongolia is coming』
日程:2025年2月9日(日)~3月2日(日)
会場:PARCO劇場
【全国TOUR】3月/岡山、京都、松本、仙台 4月/札幌、大阪、豊橋、福岡 5月/那覇
※PARCO劇場開幕直前 新宿シアタートップスにてプレイベント開催予定
作・演出:三谷幸喜
出演:
相島一之 阿南健治 伊藤俊人 小原雅人 梶原善
甲本雅裕 小林隆 近藤芳正 谷川清美 西田薫
西村まさ彦 野仲イサオ 宮地雅子 吉田羊
STAFF:
美術/大竹潤一郎
照明/佐藤公穂
音楽/荻野清子
音響/井上正弘
衣裳/浜井貴子
ヘアメイク/宮内宏明
舞台監督/山本修司・村岡晋
演出補/福島三郎
演出助手/伊達紀行
宣伝美術/鳥井和昌・タカハシデザイン室
宣伝写真/平間至
イラストレーション/早乙女道春
メイキング撮影・監督/岩間玄
宣伝PR/る・ひまわり
宣伝映像/尾野慎太郎
パンフレット編集/市川安紀
劇団制作/大竹亜由美、浅井美衣、大口星子、中村修子
プロデューサー/藤井綾子、佐藤玄
企画/サンシャインボーイズ
製作/株式会社パルコ
PARCO STAGE 公式サイト https://stage.parco.jp/program/mouko/
PARCO STAGE 公式X(旧Twitter)@parcostage