ミュージカル「翼の創世記」9名の俳優、5チームが挑む、初通し稽古レポ。全チーム写真とともに、真摯な空気をここに。
2024.11.25
なぜ、今、この公演なのか? を脚本・作詞・演出・プロデュースの石丸さち子さんに語っていただいた(記事はこちら)、ミュージカル「翼の創世記」。続いて、初通し稽古場レポートをお届けします。
この日、行われたのは、5チームすべてがそれぞれに入れ替わりながらの初通し稽古。
「あと5分ほどで始めます。心の準備はいい?」と石丸さち子さん。
その声で稽古場の空気に、ぴしり、と心地よい緊張が走る。
それらすべてのチームが歌う、楽曲を演奏するのは作曲・音楽監督・生演奏を担当する、森大輔さん。
今回、なんと俳優陣が自主的に時代的背景をふまえ、上着、スーツ、ロングスカートと役にそった稽古着で臨んでいるという。その意気込みがうれしい。
まずは万全の信頼のもと、兄・ウィルバー、弟・オーヴィルの両役に挑む、鈴木勝吾さんへ「勝吾、ウィルバーからお願いできる?」と石丸さんが声をかける。
瞬時に「はい!」と頼もしい返事。
「今日は全チームに参加してもらうので、入れ替わり場面を確認して、それぞれのチームの進化を全員で感じていきましょう」と石丸さん。
森さんの「それでは参ります」の声。
やがてはじまる物語は、まさに翼を求め、夢を追いかけ、駆け抜けた者たちの奇跡。兄弟が初めて空飛ぶことを人生の目的とした瞬間、愛する妹の誕生、彼らを襲った悲劇、挫折、復活……と、三人の生涯が実に半世紀以上に渡って、つむがれていく。
ひとつのチームが演じ、歌う間、他の出演者がテンポをとりながら、あるいは脚本を目で追いながら、真剣に見つめる。
それぞれのチームワークは心地よく。舞台美術が美しく。
シンプルに森羅万象を伝えるための大きな台が、次々と形を変えていく。
その操作も俳優たちが、演じながら、歌いながら、場面ごとにくるくると入れ代わり立ち代わり、組み立て、組み換えながら、台詞を歌を放ち続ける。すごい。
そこに「強く」「速く」「ここはもっとテンポをあげて」と、指揮者のように指示を飛ばし、空間を彩っていく石丸さんがとてつもなく、かっこいい。
演奏する森さんの指はなめらかに鍵盤を舞い、さらに気付いたことをメモしていく。
まずは兄のウィルバーを鈴木さんが、弟のオーヴィルを工藤広夢さん、妹のキャサリンを福室莉音さんが演じるDチームから。高らかに工藤さんの歌声が響き、兄妹が応える。
続いて若手が集うEチーム、百名ヒロキさん、DIONさん、山﨑玲奈さんが瑞々しく爆発する。
そして、Aチームへ。上川一哉さんの力強くも朗々とした歌声に鈴木さん、門田奈菜さんが熱を帯び、追随する。
続いてBチーム。上口耕平さんが華やかに歌い、鈴木さん、門田さんと新たなハーモニーを生んでいく。今回、実に40曲近く歌い上げるというこの作品、とても耳に心地良く、心が踊る。
最後はCチームの上口さん、鈴木さん、福室さんへと渡され物語が閉じていく……配役が変わることで、こんなにも音色が、空気が変わるのか、と驚く。
物語終盤。最後を演じるチームを見守る空間は、ぴん、と張り詰め、自身が演じる役を思ってか、はらはらと涙を流す俳優も。そしてラスト、すべてが終わった瞬間、その場にいた全員(もちろん私も)が、拍手。笑顔があふれ、互いに肩を叩き合い、握手する。
こうして緻密に創られていく空間を噛み締めて、なにか、とんでもないものを観た……という気持ちを抱え、稽古場をあとにした。
チーム別の公演でありながら、すべての公演に全員が心を寄せていく。その初日は、今週末11月29日から。千穐楽は12月25日。この年末、心が熱くなるすてきな贈り物となるだろう。
撮影・文/おーちようこ
公式サイト
ミュージカル『翼の創世記』Theatre Polyphonic 第7回公演
★終演後のイベント追加決定!
スペシャルカーテンコールで日替わりで劇中曲を歌唱。
スマートフォンに限り、写真と動画の撮影可、とのこと。
詳しくは公式サイト、公式Xへ。
配役と各チームはこちら
ウィルバー オーヴィル キャサリン
A 上川一哉 鈴木勝吾 門田奈菜
B 上口耕平 鈴木勝吾 門田奈菜
C 上口耕平 鈴木勝吾 福室莉音
D 鈴木勝吾 工藤広夢 福室莉音
E 百名ヒロキ DION 山﨑玲奈