ミュージカル『刀剣乱舞』 トライアル公演レポ&レビュー/おーちようこ 紅玉いづき

ミュージカル『刀剣乱舞』 トライアル公演のゲネプロ(公開稽古)レポと写真、初日レビューを、ここにお届け!

※すべての写真、記事の無断掲載はおやめください。
※ゲネプロレポに一部、あらすじのネタバレを含みます。
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刀剣乱舞 最善席

 

心を持つ、哀しみとか喜びとか。/おーちようこ

 

「あやつの笑顔を曇らせたくはない」
これは、岩融のことば。
あやつとは、今剣のこと。

10月30日(金)に東京・AiiA 2.5 Theater Tokyo初日を迎えた、ミュージカル「刀剣乱舞」 トライアル公演。ここで描かれたのは、モノでありながら心と身体を持ってしまった刀剣男士たちの、哀しみと喜び、そして彼らが存在する意味だった──。

PCブラウザゲーム「刀剣乱舞-ONLINE-」の舞台化。それは、2016年にミュージカル版をネルケプランニング、ストレートプレイ版をマーベラスとともに2.5次元作品で知られる両社が手がけると発表され大きな話題となったことは記憶に新しい。その先駆けとしてネルケプランニングがトライアル公演と銘打って、上演されたのが本作だ。しかし、披露されたのは「トライアル」どころか、とてつもない「本気」だった。

刀剣乱舞 最善席

刀剣乱舞 最善席

刀剣乱舞 最善席

刀剣乱舞 最善席

刀剣乱舞 最善席

 

舞台めいっぱいに広がる大階段。その空間に映し出される鮮やかな映像演出に、華やかな衣装、縦横無尽に駆け抜ける華麗な殺陣が、まるで絵巻物のように広がる。
けれど、注目したいのはその物語──2015年の現代から文治5年の阿津賀志山へ出陣した刀剣男士の成長がつづられる。
本丸にて歴史改変を食い止めるべく審神者より命じられ、三日月宗近(黒羽麻璃央)、小狐丸(北園 涼)、石切丸(崎山つばさ)、岩融(佐伯大地)、今剣(大平峻也)、加州清光(佐藤流司)6人の刀剣男士が戦場へと赴く。最近、本丸にやってきたばかり、という岩融を連れて初の阿津賀志山へ………待っていたのは捻じ曲げられ、義経が生きながらえている世界だった。弁慶とともに兄・頼朝を追う、かつての主の姿を見てしまった今剣の心は激しく揺れる。

 

三日月宗近は静かに語る。
「我らはもはや物ではない。意思を持って戦う者」
加州清光は叫ぶ。
「この歴史はまちがった歴史なんだ!」

隊長としての判断の是非に惑う清光に、その答えは知っているが辿り着くのは己自身だから教えない、と微笑み、懐深く見守る小狐丸。
果たして彼らの心の有り様は如何に?
シリアスに物語は進みつつも、お馴染みの曲が流れ、ゲームで機動が遅い石切丸が清光に急かされたり、三日月の言動が人智を超え典雅過ぎて斜め上(?)だったりと笑いも盛り込まれ、彼らの台詞も次々と飛び出し、名シーンも再現される。

 

刀剣乱舞 最善席

刀剣乱舞 最善席

刀剣乱舞 最善席

刀剣乱舞 最善席

刀剣乱舞 最善席

刀剣乱舞 最善席

刀剣乱舞 最善席

最善席 刀剣乱舞

 

約1時間40分間の1部が終わると、続いて約45分間の2部へ。幕が開くと景色は一転。2015年の現代ならではの戦い方だという「LIVE」が繰り広げられる。
「歌舞音曲(かぶおんぎょく)は奉納」なる石切丸の言葉通り、ペンライト、うちわ(数や大きさ、使用の諸注意は公式サイトを!)が客席できらめくなか、全力で今の主である審神者を楽しませるべく歌い踊る彼らの姿はきらきらしていて、あっけらかんとどこまでも楽しい。

初期刀かつ、偵察が得意な加州清光を隊長に据え、阿津賀志山に義経の守り刀である今剣と弁慶が使用していた薙刀の岩融を加えて出陣。ゲームにおけるふたりの回想が、モノに心が与えられたことへの切なさ、苦しさ、喜びが織り込まれた成長譚となったこの舞台。この先、どんな刀剣男士の物語が届けられるのか、心待ちにしたい。

 

撮影・文/おーちようこ

 

知らないなんて、もったいない。 /紅玉いづき

「ここにロマンがつまっている!!!」
 それが、ミュージカル『刀剣乱舞』 トライアル公演を見た率直な感想だった。
 そのロマンとは、実体を持ち舞台で歌い舞い踊るキャラクター達であったり、鮮やかな殺陣であったり、散りばめられたゲームの台詞、ゲームのSE、あるいは史実と歴史改変のジレンマ、そしてかつての主と、主を忘れられぬ刀剣男士達の、刀でありながら肉体を持ってしまった、矛盾と心、そして役割──そんな、『刀剣乱舞』世界のありとあらゆるロマンを詰め込んだ舞台が、ミュージカル『刀剣乱舞』トライアル公演だった。
 トライアル、と銘打たれたからには、試作品的な意味合いが強いのだろうという思いは、のっけから打ち砕かれた。

 そこに、本丸があった。そして刀剣男士達がいて、彼らの戦いがあった。
 世界観や設定の説明は多くはない。もちろん原作を知らなくても充分に楽しむことも出来るが、ゲームを知っていれば、今舞台上で何が起こっているか、舞台に立つキャラクター達よりも鮮やかに理解出来るだろう。たとえばまだ入手から日が浅くとも、岩融と今剣を同一部隊にいれ、かの戦場へ向かう理由など、ゲーム経験者であればすっと納得が出来る。
 ゲームという平面の裏側で、一体何が行われているのか。どんなドラマがあるのか。ひとつの解釈、ひとつの展開でしかないとしても、十二分にその夢を見せてくれる、見事な物語だった。

 そして、大満足の1部が終わり、2部がはじまる。
 1部であるミュージカルの中にも、ふんだんに曲が使われていた。どれも素敵な曲であったのだから、きっとそれらを歌い直すのだろう……と思っていた、その甘い思いは、またのっけに打ち砕かれてしまった。
 興奮は、言葉にはしがたい。45分間、余計な芝居をはさむことなく、驚きを与えながらも「これ! そう、これが欲しかった!」と思わせる最高の演出がそこには待っている。
 月のように冴え冴えとした優美な姿で舞う三日月宗近役の黒羽麻璃央、どこかお茶目でミステリアスな小狐丸役の北園涼、どこまでも端麗な石切丸役の崎山つばさ、力強くセクシーで、優しい岩融役の佐伯大地、その愛らしさが誰をも笑顔にする今剣役の大平峻也、そして圧倒的なアイドル感できらめきを振りまく加州清光役の佐藤流司が所狭しと舞台上を駆け回る。脇を固めるアンサンブル陣も素晴らしく、1部と2部合わせて、目眩がするほど濃密な時間を過ごすことが出来る。

 トライアルだから、と様子見するのは勿体ない。未来に本公演が来た時に、トライアル公演に触れておかなかったことを後悔しないためにも、是非、ひとめ、彼らの勇姿を見届けてほしい。

文/紅玉いづき

楽曲リスト

第1部

1 刀剣男士6人によるオープニング「刀剣乱舞」
2 出陣の際に歌う「勝利の旗」
3 戦場での「戦うモノの鎮魂歌─レクイエム─」
4 今剣の「きらきら」
5 岩融の「名残月」
6 三日月宗近が岩融の本心を問う「返歌 名残月」、
7 キャスト全員によるエンディング曲「キミの詩」

第2部

1 刀剣男士6人によるオープニング「mistake」
2 刀剣男士6人によるダンスメドレー
 「Additional Times」「Gateway」「Show Me The World」
3 刀剣男士6人によるバラード「サヨナラ」
4 三日月左近、石切丸、岩融、今剣の「タカラモノ」
5 加州清光のソロ「解けない魔法」
6 ゲネプロ公演では「Love Story」を披露。「まばたき」「大袈裟」の全3曲で日替わり
7 義経・頼朝・泰衡、そして弁慶の和太鼓に合わせ、刀剣男士6人が舞い歌う「漢道」

本公演は11月8日(日)まで上演。千秋楽公演は全国の映画館でライブビューイングの開催とともに、DMM.comアーカイブ配信も行われる。詳しくは下記公式サイトへ。

 

刀剣乱舞 最善席

 

今から間に合う、アーカイブ配信視聴とゲーム開始はこちらから!

ミュージカル『刀剣乱舞』公式サイト

『刀剣乱舞-ONLINE-』

ミュージカル『刀剣乱舞』 トライアル公演

期間:2015年10月30日(金)〜11月8日(日)
劇場:AiiA 2.5 Theater Tokyo

スタッフ
原案:「刀剣乱舞-ONLINE-」より (DMMゲームズ/Nitroplus)
演出:茅野イサム
脚本:御笠ノ忠次
振付:本山新之助
主催:ネルケプランニング DMM.com、ニトロプラス ユークリッド・エージェンシー

キャスト

三日月宗近役:黒羽麻璃央
小狐丸役:北園涼
石切丸役:崎山つばさ
岩融役:佐伯大地
今剣役:大平峻也
加州清光役:佐藤流司

武蔵坊弁慶役:田中しげ美
源義経役:荒木健太朗
源頼朝役:奥野正明
藤原泰衡役:加古臨王 ほか

(c)2015 ミュージカル『刀剣乱舞』製作委員会

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