“圧倒的美演劇”と謳われた『マリーゴールド』の世界がここに……舞台写真&衣裳展『TRUMP展 マリーゴールド篇』レポート

現在、Animanga zingaro(東京・中野)で開催されているのは、脚本家にして演出家の末満健一のオリジナル演劇『TRUMP』シリーズの10周年を記念した特別企画。先月千穐楽を迎えたばかりの最新作ミュージカル『マリーゴールド』の舞台写真&衣裳展『TRUMP展 マリーゴールド篇』だ。

TRUMP展_最善席

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出版社である星海社がこの展示会を手がける理由

 真っ白な空間に整然と並んでいるのは、凸版印刷が誇る高精細デジタル複製画印刷「プリマグラフィ」で再現、額装された、ミュージカル『マリーゴールド』と2017年上演の『グランギニョル』から選ばれた舞台写真10点。この展示にあわせ、末満自らタイトルを付けたというこの写真たちのサイズはB2版で、いずれも購入することができるという(一部、キャストのサイン入り)。

 さらに、この展示のために新たにパンフレットも作成された。『TRUMP展 マリーゴールド篇』のロゴとホログラム加工で彩られたクリアファイルに収められているのは、刹那を切り取った舞台写真の数々とスタッフ、キャストのインタビューだ。今回初めて実現した、末満健一(作・演出)と早川和美(衣裳)の対談では、衣裳に込められた深い愛と願いが語られ、それらを通じてキャラクターへの思いもあらわになった。また、メインキャスト8名、壮一帆、田村芽実、東啓介、愛加あゆ、三津谷亮、土屋神葉、宮川浩、吉野圭吾のインタビューでは、舞台終演後、どこよりも早く作品や役への愛が語られ、自身の役の解釈だけでなく共演者への思い、そして、この展示会へ足を運んでくださる方々へのコメントも。

 また、展示会オリジナルブックマーカー3枚組や、受注生産のオリジナルタペストリー(2種)も記念グッズとして販売。さらに特筆すべきは、今回のために製作されたアニマグラフ『大地の繭』の展示だ。アニマグラフとは19世紀半ばに発明されたコロジオンプロセスという技術によって鉱物に写真を焼き付けた芸術品。美しいアナベルとガーベラの姿を瑪瑙(めのう)に閉じ込め、さらにオリジナルの革細工で装飾して、世界でひとつのアート作品へと昇華した。製作を手がけたのは、Hibiki Hijiri(アニマグラフ)とLeather 5160(革細工)。この作品には末満のサインが添えられ、会場で展示されるとともに、会期中にオークション形式(https://page.auctions.yahoo.co.jp/jp/auction/v578384492)で販売されている。

 展示会を企画したのは出版社の株式会社星海社。出版社がなぜ、こんな企画を……? と思いきや、星海社は『Fate/stay night』などで知られる奈須きのこの商業デビュー小説『空の境界』、そのヴィジュアルと作品世界を原点から支え続けた武内崇、初の個展となる『画展 空の境界』を2014年に開催した、一風変わった出版社。当時もプリマグラフィの展示販売を手掛け、昨年2017年には『空の境界 20周年記念版』として豪華装幀本を限定販売。書籍、という形にとどまらず作品世界を体現するためさまざまな挑戦を続けている存在だ。

 この星海社はミュージカル『マリーゴールド』劇場にて発売された、末満健一のオリジナル作品としては初となる戯曲集、『ソフィ・トリロジー 〈TRUMPシリーズ戯曲集Ⅰ TRUMP/LILIUM/SPECTER〉』も手がけている(会場でも販売中)。黒い表紙に銀の箔押しでタイトルが刻印されたその美しい装幀からも、最高峰の印刷技術をもってさまざまな方向からTRUMPシリーズの作品世界を彩る試みに挑んでいることがうかがえる。その星海社だからこそ成し得た展示会だと言えるだろう。

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TRUMP展_最善席

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空間をより一層彩る、早川和美の衣裳たち

 額装された舞台写真とともに会場を華やかに飾るのは、かねてよりTRUMPシリーズに参加している早川和美が創り上げた衣裳の数々。前期の10月8日(月・祝)〜14日(日)では『マリーゴールド』より、アナベル、ガーベラ、エリカ、コリウス、『グランギニョル』より、ダリの5点。後期の10月15日(月)〜21日(日)では『マリーゴールド』より同じくアナベルとガーベラ、新たにソフィ、ウル、『グランギニョル』より、ゲルハルトの5点の展示が実現。取材当日は前期の展示5点がそこに。

 まず驚くのは、キャストの身長に合わせたマネキンに衣裳が着付けられているという気配り。すべて同じく着せるのではなく、個々の衣裳がもっとも美しく見える仕草でたたずんでいる。これらは、展示会前日に早川自らが手がけたという。展示会パンフレットの初対談でも明かされたように、早川がキャラクターに寄り添って生まれた衣裳には、レースひとつ、刺繍ひとつ、ボタンのひとつにまで思いが込められていることがうかがえる。劇場では客席からしか見ることができなかった衣裳を、ぜひ間近で堪能してほしい。

 また、会場に併設されているカフェ「Bar Zingaro」にはコラボドリンクも登場。作品タイトルにちなんでマリーゴールドの花びらを浮かべた「アナベルのおもてなしティー」が、オリジナルコースター付きで提供されている(なくなり次第終了)。カフェでは、『TRUMP』『グランギニョル』『マリーゴールド』で実際に俳優に渡されたものと同じ上演台本と、今回の展示会のために作成されたアルバム「アナベル・ロスの資料集」も閲覧できる。

 これらはTRUMPシリーズの制作を手がける株式会社ワタナベエンターテインメントの協力により実現したもので、おそらく公演終了後の展示会としては最速のものであり、多様な方向から世界を伝える展示物や販売物とともに、演劇史に新たな1ページを刻むことになるだろう。本レポートでは、続けて後期展示の紹介とともに星海社担当者による、この展示会に込められた思いや搬入当日秘話などをお届けする予定。

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『TRUMP展 マリーゴールド篇』開催期間

会期:2018年10月8日(月・祝)〜10月21日(日) 入場無料
時間:12:00-19:00 ※10月10日(水)、17日(水)は休廊日。

展示及びグッズ情報

TRUMP10周年特設サイト(株式会社ワタナベエンターテインメント運営)にて、随時告知予定 
『TRUMP展 マリーゴールド篇』サイト 
http://trump10th.jp/10th_topics.php#no4

Animanga zingaro

http://animanga-zingaro.jp
東京都中野区中野5−52−15 中野ブロードウェイ 2F
12:00 – 19:00  ※水曜定休

撮影・文・おーちようこ

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