平野良さん連載コラム。『忘備録(仮)』第2回 『麗しの緊張感』
2026.7.18
こんにちは。
俳優にして演出家、平野良さんのコラム『忘備録(仮)』第2回をお届け。
新作上演に向けて「ある演劇が初日を迎えるまで、迎えたあと」を独自の視点でつづっていただきます。
「カインとアベル~兄弟寓話コレクション第一弾~」
『平家!兄弟』
第2回『麗しの緊張感』
今回は取材と台本打ち合わせの記録。
都内某所、夕方にスタジオに入るとそこには眩しいほどのオーラを纏わせた水夏希さんがいらっしゃいました。念願のご対面である。さらに、おしゃれな手土産の心遣いも。
水さんはキービジュアルの撮影のため既にメイク&ドレスアップしていた。ワンポーズ目の和装の出立ち。いやぁ、毎回麗しくて華々しい。ご挨拶し私も早々にスタンバイ。個人撮影を終えると水さんは2ポーズ目の扮装を終えていた。そのお姿はまるで……いや確実に某宇宙鉄道のメー○ルそのもの。なぜに?と思ったが、このプロデューサーが手がけるチラシのビジュアルは毎度、本編とは関係のない何かのパロディなのでさほど驚きはなかった。この日の私は普通のスーツスタイルだったのだが、水さんはそのメーテ○姿のまま取材用の2ショット撮影。どういう絵図だと違和感を覚えるが、まあこの遊び心が醍醐味の現場だ。
さて撮影を終え、2人揃っての取材が始まるわけだがまだ台本がないので、お互いの役者としての印象やこの作品の話を受けるにあたっての感想などを聞かれる。普段の役者としての平野ならどうってことはないのだが、今回は演出としてなので、水さんの回答に緊張するわけである。どうして引き受けてくれたのだろう? 水さんの目には私はどう映っているのだろうと、私自身興味津々半分、戦々恐々と聞いていた。俳優は基本ストイックな人間が多いのだが、水さんはその中でも群を抜いてパーフェクトヒューマンだと思っている。一部の隙すら見つからない精巧な幾何学模様のような方。この日もセンス抜群の差し入れを現場に入れてくれていて人間的にも素敵なのはもちろんのこと、役者としても、歴史物をやるとなれば、その時代背景や、人物の出生から生い立ち、没し方などを徹底的に調べ、学び、たゆまぬ研鑽で自身に落とし込む。台本を原点とし感覚や感性で作りがちな私は頭が上がらないし、きっと今回も水さんのその研鑽の結晶にたくさん助けられるのだろうと容易に想像できる取材となった。はい。気が引き締まった。
取材を終え、次はプロデューサーとムックさんとの脚本打ち合わせである。第一稿が上がったので、全体的な方向性やキャラたちの役割の分配などを検討する話し合い。今回は小劇場での芝居なので役者の表情や細やかな心の機微が肝になると思っている。その為に「ここのシーンはもっと深めてほしい」や「逆にここはもっとシンプルに伝わりやすくしてほしい」などの提案をする。そしてこのシリーズのテーマである『兄弟』と『本』を生かすための脚本のギミックや構成などもあれやこれやと思いつくままに(言い方を変えれば好き勝手に)吐き出していく。毎回私の気まぐれな発想や、わがままなオーダーをちゃんと形にしてくれるプロデューサーとムックさんはやはり天才だと思う。おまけに脚本打ち合わせの段階なのに、美術セットや照明もこんな感じになったらいいなと気の早い無責任な発言をする私に頭を抱え悩みながらも次々に今後のスケジュールも考えてくれる。まさに、あんなこといいな出来たらいいな状態だ。でもみんなみんなみんな叶えてくれる、不思議とみんなが叶えてくれるー、ので、ついわがままになってしまうのである。
こうして記録にして読み返してみると私はひどい暴君でろくな人間ではなさそうだと自信を無くしてしまいそうだ。だからこそ沢山のお客様に愛される作品にしなくてはと一層覚悟を決める私であった。
舞台『カインとアベル』
〜兄弟寓話コレクション〜VOL.1
「平家!兄弟」
【公式HP】https://www.cain-abel.jp/
【公式X】https://x.com/cain_abel_mmj
【公式YOUTUBE】ティザー動画 https://www.youtube.com/watch?v=druqQOeAOvs


