万華鏡のような酩酊……19人の表現者が贈る『RAMPO in the DARK』配信公演レビュー
2020.7.9
7月10日からWeb上で幕を開けるのは、リーディングシアターvol.1『RAMPO in the DARK』。これは当初、6月に上演予定だった朗読劇を収録、配信で届けられる。登場するのはクラシカルな衣装を身にまとう、人々。その佇まいは妖しくも華麗だ。
演じられたのはタイトルの通り、エドガー・アラン・ポーをもじった誰もが知る日本の作家・江戸川乱歩がつづった3つの物語。選ばれたのは「白昼夢」「人間椅子」「赤い部屋」。このセレクトがすばらしい……いずれも、一人称による慟哭、手紙に秘められた告白や独白……といった語り言葉が朗々と響き渡る。
読んでいるのは独り。けれど、発する声の音を、高さを、声色を、みごとに操り、変幻自在に表情豊かに舞台上へと花開く。色とりどりの照明がくるくると輝き、物語を彩る。気配が変わる、空気が変わる、まるで万華鏡のようだ。
届けるのは、19人の表現者──阿澄佳奈さん、石川由依さん、井上麻里奈さん、大須賀純さん、大西沙織さん、小野友樹さん、折井あゆみさん、桑野晃輔さん、沢城千春さん、下地紫野さん、谷佳樹さん、長谷川里桃さん、羽多野渉さん、日笠陽子さん、平野良さん、藤原祐規さん、室元気さん、山本和臣さん、吉野裕行さん(五十音順)。三人一組、A~Iまでの9組の舞台。もともとは日替わりでの上演だったが、そのすべての座組が9本同時に配信される。
今回、公開に先駆けてレビューのために観劇したのは、平野良さん、沢城千春さん、石川由依さんが演じるC組。そして吉野裕行さん、羽多野渉さん、阿澄佳奈さんが演じるF組の二本。そう、そう……そうなのだ! この公演、複数観るのがおもしろい。座組によって空気が異なり、演じる者の味わい深さがより際立つ。
在る者は狂気に満ちて。在る者はあえて淡々と。同じ物語でも心を寄せる登場人物が数多に在り、きっと観る者にも想いが託される。誰の情念に引っ張られてしまうのか、誰の動機に心揺さぶられてしまうのか、は人それぞれ。江戸川乱歩という奇才が放つ物語に、個々が自身の表現力をかけて己の解釈が炸裂する──酩酊する空間で現実なのか幻惑されてしまう幽玄の空間を、この危うい日々のなか、しばし味わってほしい。
現在、配信による朗読劇が数多あるなか、あえて江戸川乱歩という物語を現代の表現者たちが読み解く空間を、好きな時間に好きなように観劇できる幸福を噛み締めたい。常に「当たり前」が当たり前にならない時代に普遍の想像力の羽ばたきを堪能せよ。
リーディングシアターVol.1 RAMPO in the DARK
公式サイト:https://www.cccreation.co.jp/stage/rampo-in-the-dark/
視聴チケット販売:7月24日(金・祝)21:00まで販売中
配信期間:7月10日(金)18:00 ~24日(金)23:59まで
※配信期間内はチケットをお求めいただきました公演は何度でも視聴可能です。
価格:3,300円(税込)
※1公演視聴チケットの価格となります。
発売元:イープラス https://eplus.jp/rampo
原作:江戸川乱歩「白昼夢」「人間椅子」「赤い部屋」
脚本・演出:野坂実
出演者組み合わせ:
A:大須賀純、室元気、長谷川里桃
B:藤原祐規、桑野晃輔、下地紫野
C:平野良、沢城千春、石川由依
D:小野友樹、山本和臣、日笠陽子
E:平野良、藤原祐規、折井あゆみ
F:吉野裕行、羽多野渉、阿澄佳奈
G:大須賀純、山本和臣、石川由依
H:沢城千春、谷佳樹、井上麻里奈
I:小野友樹、羽多野渉、大西沙織