開幕直前!『熱海殺人事件 モンテカルロ・イリュージョン2025』 多和田任益さん、鳥越裕貴さん単独インタビュー!
2025.12.16


2024年公演より
昨日の、多和田さん、鳥越さん対談に続き、それぞれの「今」をお届け。
2020年初演当時から、変わったこと、変わらない思いを、ここに。
取材・文/おーちようこ
生涯、演じ続けるという意思表示です
ーー2024年6月、『熱海殺人事件モンテカルロ・イリュージョン2025』の演出も手掛ける中屋敷法仁さん所属の、GORCH BROTHERSへ移籍されました。演劇を中心に活動されていく、という表明として受け取り、とてもうれしいです。
鳥越 ありがとうございます。周りの方々からも、そういったことを言ってもらえて、特に言葉にはしていなかったんですが、伝わっているんだな……とわかって、よかったです。でも同時に、だからこそちゃんとやらんとな、というプレッシャーはあります。ただ、自分のなかにプランがあって、その一歩にはなったかな、と思ってもいます。
ーーどんなプランか気になります。
鳥越 そんなに具体的なものではないんですが、20代のころから「自分のこういう気持を大切に、こういう作品に出る」とか「こういった活動も始める」といったことを大まかに決めていたので。
ーー20代! 早くからそういう意識を?
鳥越 いい先輩たちに恵まれていて。今の自分に足りないもの、足りてるもの、探したほうがいいもの、みたいなものを考えなさいとか、言ってもらっていて。でも、その目指す先へと焦って進むわけではなくて、自分が愉しみながら、ゆっくりでも歩んでいけたらいいなという思いでいました。
ーー続けていく、という覚悟が伺えます。
鳥越 覚悟……そうですね。もともと舞台に立つことは好きだったんですが、大きかったのは2015年に座・高円寺1という劇場で上演された、OFFICE SHIKA PRODUCE『竹林の人々』です。これがアングラというか、内面をさらけ出すというか、観る人の心をえぐるような物語だったんですが伝わるものがあったみたいで、これまでとはまたちがった反響もいただいて。改めて、しんどいけど、しんどいだけじゃないのものがあって、ああ、いいな、と愉しいなと、感じることができたんです。
もともと俳優を続けるつもりで、この世界に入ったんですが、一度だけ、もうアカンかも、と思ったことはあって。そのときも周りの先輩とかに助けてもらって、結果、楽しかったから良かったんですが、振り返ってみれば、それも超えるべき壁やったんかな、と。そういうことをひとつ、ひとつ、意識してやってきて、今に至るという感じです。
ーーそういった壁を超えてきて、変化はありましたか?
鳥越 自分は自分やし、と思うようになりました。人と比べることがなくなったというか。大切なのは、自分が楽しくあることで、そうでないと観ている人もおもしろくないだろうから、まず、楽しむようにしています。それは自分の人生も同じだと思えて。
いろんな作品を観て、いろんな俳優に出会って、結局は人間力なんだな、と感じました。舞台の上では、その人が生きてきたなかでの取り組み方や引き出しの多さみたいなものが伝わってくるから自分も豊かになりたいな、と思って。コロナ禍で、モンテが中止になり、他の舞台も中止になったときに、改めて「自分の人生、自分は楽しんでるのかな?」と振り返った時間があって。それからです。自分の人生も楽しもうとしはじめて、それは大きかったですね。
ーーたとえば?
鳥越 やりたいことをやる、とか。行きたいと思ったら行くとか。それは日常でも仕事でもなんでも。考えてしまって立ち止まることがあったんですが、動いてみたらなるようになるというか、自分はなるようにできる、と思えたし、実際にそうだったから。
観たいな、という舞台があったら、当日券で飛び込んだり、ここ数年だと神社仏閣巡りや、知らない街を旅する、初めての居酒屋で隣り合わせたおっちゃんと話すとか、どれも全部、自分の財産だなあ、と……そこで発見することもあるし、振り返って反省することもあります。だからこそ、いただいた機会には応えたいと、より思うようになったし、実際、そうあろうとしているし。もちろん、今もそんなに自信があるわけではなくて、不安はあります。だから、眼の前に与えられた仕事をひとつ、ひとつ、ちゃんとやろう、とか、当たり前のことをていねいにやっていこう、とは思っています。
ーー現在、俳優として舞台に立つだけでなく、ラジオ『みっくすっ。~鳥越裕貴のぴちぱち~』でパーソナリティを務め、植田圭輔さんとトーク番組『口は〇〇のもと』では司会も務め、活動の幅を広げています。
鳥越 その場、その場で勝手にいろんな「鳥越裕貴」がいるんです。切り替わるということでもなくて、お芝居ならお芝居、イベントならイベント、と求められている「鳥越裕貴」はこれだろう、みたいな感覚があって。常にそこに応えているという感じです。
もっと若いころ、まだ自分が何者とかもわからないみたいなときは、あれもやりたい、これもやりたいという欲が大きくて、すごく尖っていた時期もあったんですけど。結局、演劇が好きだから、自分も楽しくて、周りも楽しんでくれて、ときには目標としてもらえるほうがずっといいし、みんながハッピーやん、と思うようになりました。
ーー視点の位置が高くなった、というか視野が広がった、という印象です。
鳥越 そこまで言い切れるわけでもないんですが……なんか、求められる自分、みたいなものに対して統計が取れた感覚です。今、こういう場に立たせてもらっている、ということは自分はこういう位置にいるんだな、ということがわかるようになったというか。
だからこそ、今、舞台のチケット代やいろいろなものが上がっていくなかで、それに見合うものを届けることが本当に大切だと思うし、だからこそ自分ができることは全力でやらないとな、と考えています。今、2.5次元の舞台も小劇場も商業演劇もイベントもすべて、ものすごく楽しめていて、自分のその姿を見て、初めて2.5次元を観てみようとか、初めて小劇場を観てみよう、という入口になれたらいいなと思うんです。なんといっても目標は、この先もずっと舞台に立ち続けることなので。
ーー心強い言葉です。そんなふうに経験を重ねてこられて『熱海殺人事件モンテカルロ・イリュージョン2025』に挑んでいただけることが楽しみです。最後に座長の多和田さんへ一言、お願いします。
鳥越 みんな、多和ちゃんって柔らかくて、ファニーなイメージで捉えている印象があるんだけど、いや、めっちゃ燃えてるで! と、ずっと思っています。いつもにこにこしてるし、演劇の話もたくさんしてくれるし、なんかくれるし(笑)。けど、実はものすごく熱いんやで、と。でも、だからこそ作品の良き入口になってくれると思っているので、みなさん、多和田さんの笑顔に惹かれて観に来て、驚いてください。

「自分にはできない」って言葉で片付けるのは20代まで
ーー2020年8月にダンスエンターテインメント集団「梅棒」に所属されました。これはご自身が得意とされるダンスを通じて、より表現力を磨こう、という意思が?
多和田 実は……梅棒に入らせてもらったのは、自分のためという感じではなかったんです。むしろ、振り付けをしたいとか、表現の幅を広げたい、といったことは一切、ゼロ! でした。
ーー意外です!
多和田 むしろ、なんか、ものすごいものに出会ってしまったので、この作品世界をもっともっとたくさんの人に知ってほしい! という思いが強くて。「これは、いろんな人が観るべき作品だ」と思ってしまって、この世界はどんなふうに創られているんだろう……と知りたくなってしまって。もしも自分が参加できたら、その秘密を知ることができるし、僕はメンバーとは違うジャンルでの活動も多かったから梅棒を知るきっかけが少しは広げられるもしれない、って思って、一緒にやらせてください、と言ってました。
ーーすてきです。その熱い想いの結果、現在、ご自身もダンスの振付を手がけるなど幅を広げておられるようにも感じます。
多和田 ありがたいことですが、実は一度も自分からやらせてください、と言ったことはなくて。先輩方が梅棒に入ったなら、と当たり前に担当曲を振り分けていって勝手に鍛えられた感じですね。外部作品での振付の機会があるなんて想像もしていませんでした。だから、梅棒のために何かしたいと思って参加したけど、僕もずっといろんなものをいただいています。
梅棒の作品は確かにほとんど台詞がなくてノンバーバルで音楽とダンスと動きの芝居で構成されていますが、僕が最初に受けた衝撃は、やっぱり「演劇」としてのすごさだったので。だから、梅棒=ダンス、とはならなくて。これがダンス公演だったらこんなに心惹かれなかったと思うし、やっぱり梅棒だからこそここまで好きになれたんです。だから恩返ししようと思うんですが、モノ創りの発想とか演劇表現の発想の広さとか、もらっているもののほうがめちゃくちゃ多い状態なんです。
ーーその梅棒メンバーでもある、すいーつ(野田裕貴)さんが2020年『改竄・熱海殺人事件 モンテカルロ・イリュージョン』当時からダンスの振付を手がけておられます。
多和田 これも巡り合わせでした。稽古に入ってから、中屋敷さんが振り付けがいるな、みたいなことを言い出して。確かに、歌がいっぱいありますもんね、ってなって。誰かいないかな、という話から、すいーつさんがいいんじゃないかって中屋敷さんから名前が出て。前の年に梅棒EXTRAシリーズ『ウチの親父が最強』という作品にゲストで呼んでいただき、そのまま仲良くしていたことで、すいーつさんのスケジュールにその時余裕があることを知っていたので、お願いしようってことになったんです。そういった流れだったから最初はスタッフクレジットに入っていなかったんですが、ものすごく心強い存在で、今ではモンテに欠かせない仲間です。
ーー確かにモンテは曲の歌詞がお話の心情そのままで、台詞だけでなく動きや踊りで表現する感情が多い作品です。
多和田 通ずるところがありますよね。だから僕にとってはすべて同じ演劇で表現なんです。特に梅棒は全員がクリエイターで、得意分野も全然ちがうから、こういう考え方があるんだ、という発見もあって、自然といろんなところを学ばせてもらって世界が広がっている感覚があります。
ーー一方で、2019年からweb番組『多和田任益のはねやすめ』といった場で、ご自身のオタ活の発信も続けています。
多和田 略して「たわはね」として愛していただき、まもなく放送百回を迎えます。これはもう、ただただやりたくてやっています(笑)。僕、自分が大切にしている人たちと全部を隠さず共有していたいし、好きなものを好きと言って広めていきた……あっ、これ、梅棒への想いと同じですね。僕と一緒に知ってもらって、遊んで楽しんでくれたらいいなと思っていて。
だから結局、全部、つながっていて自分に還してもらっていて、好きだなと思うことを続けていたら、いつのまにか自分がやりたかったことができているんです。さらに梅棒での活動や、こういった配信の企画を考えることでスタッフ視点というのかな? そういうものも育ててもらっている感じがあります。
ーーそれはやはり、ご自身の努力であり、研鑽であり、つちかった力ではないかと。
多和田 まだ、そう自負できるほどではないんですが……続けることで少しは形になっていっているのかな、とは思います。今回の梅棒 20th Breakdown『FINAL JACKET』も、20作という節目で僕が参加してから5年ぶりに新メンバーのSuGuRu(スグル)が増えて、これから、どうなっていきたいか、といった話もします。そういった未来のことを一緒に考えることができる、そのこともとてもうれしいんです。
ーー実に梅棒愛にあふれています!
多和田 そうですね(笑)。経験を積んできたことで、だんだんと自分が大切にしたいものが明確になってきたというのもあって、この先、変わることはないから、そこは変わらず、きちんと挑んでいきたいと、最近、より思うようになりました。でも、性格的に同じことだけだと飽きちゃうから、これまで自分が苦手としてきたことも挑まなくてはならないな、とも思っています。自分にはできないものややったことがないものがたくさんあるから、それが今から楽しみです。「自分にはできない」って言葉で片付けるのは20代まで。今、32歳で役者としてはまだまだ、これからなので、できることをひとつずつ増やしていきたいな、と思っています。
ーーその大切なもののひとつとして、今年、木村伝兵衛を演じていただけることがうれしいです。そこで、鳥越さんについて伺います。
多和田 信頼してます! 決して、俺について来い、というタイプではないんですが、ついてくる人にはちゃんと愛を注いでくれる人で、特になにか言うわけでもないけど聞いたら相談に乗ってくれる……そういうところが魅力かな、って思ってます。普通にタメ口でしゃべっているのであんまり言いませんけど、いい先輩だな、頼りになるな、って思ってます。
ーー最後に一言、お願いします。
多和田 『熱海殺人事件 モンテカルロ・イリュージョン2025』という作品で僕は座長という立場を預かってはいますが、キャスト4人、全員が戦わなければならない作品なので、楽しみにしていてください。
鳥ちゃんとの対談で、観てくれた人が目標にしてくれたらうれしい、といったことを言いましたが、正直に言うと、もしも僕が、今、僕らが演っている『熱海殺人事件 モンテカルロ・イリュージョン』を見せられたら、ものすごくうらやましくて、悔しいと思っています。それくらい熱い作品で、まちがいなくなにかがあふれて、受け取ってもらえる作品です。

熱海殺人事件 モンテカルロ・イリュージョン2025
【公式サイト】 http://www.rup.co.jp/stage/atami_2025.html
