そのネズミは、幸せか? 饗宴「世濁声〜GOOD MORNING BEAUTIFUL MOUSE」開幕。

先日、本サイトで真摯な対談をお届けした、本作が11月9日に初日を迎えました。日替わりゲストトップバッターは、鈴木勝吾さんとミュージカル『薄桜⻤』でも共演、俳優の矢崎広さん。ここに写真とレビューをお届けします。
(一部、作品内容に触れています)

 

公式サイトで紹介された、あらすじに「記憶を持たぬ男。」「全てを知る男。」とあるように登場するのは、ふたりの男……いや少年。それは「なんで? なんで?」とすべてのことに疑問を持ち、無邪気に質問し 続ける少年と口にガムテープを貼る異様な姿で、頑なにしゃべることを拒む少年。果たして、彼らの関係は?

稽古場レポで伝えたように店内すべてが劇場となり、客席の間をときに駆け抜け、ときにゆるりと歩き、くるくると回り、話し、叫び、沈黙する。普段は舞台となる場所にまでテーブルが並べられ、まるで観客も丸ごと舞台美術の一部になったかのように、灯りで照らされる。

それだけに、とにかく役者との距離が近い。マイク無しの生声が朗々と響き渡る。真後ろに立つ気配がする、眼の前を通り過ぎる、すぐ隣で台詞が発せられる。息が詰まるような緊張、かと思えば、思わず笑ってしまう一幕も。

 

 

やがて、暗転。
男(ゲスト)が登場する場面へ。彼は滔々と語る、語る、語る──そして、ある事実を提示する、重要な役割だ。この場面の⻑台詞を、鈴木さんは「せっかくゲストで来ていただくからにはしっかりと出番を作りたかったし、ゲストのファンの方々もきっと観たいだろうし……という歪んだ(笑)深い愛情から、⻑い台詞をご用意しました」と明かす。この場面をゲスト陣が、どう解釈し、どう演じるのか? それもこの公演の楽しみのひとつだろう。

 

 

ふたりの会話は少しずつ軋み、追いつめ、追いつめられていく。一瞬たりとも目が離せない。照明が美しい、楽曲が耳に心地いい、膨大な言葉が渦となり、波となり、空間を浸していく。とにもかくにも、ふた りは出会ってしまった。安⻄慎太郎という俳優が企画を持ちかけ、鈴木勝吾という俳優が応えた。

今日、船出した彼らは、この先、どこへと向かうのだろう。この時間を楽しむ、繰り返し思い出す、その先へと思いを馳せる──対談で語っていたように、確かに「光」を受け取った。

写真・文/おーちようこ(矢崎広さんの写真は公式提供)

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