文字を守ること、それは思いを守ること。舞台「文豪とアルケミスト 余計者ノ挽歌(エレジー)」開幕。

舞台「文豪とアルケミスト 余計者ノ挽歌(エレジー)」が、2月21日に東京・シアター1010にて開幕。公開ゲネプロと囲み取材が行われた。

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「文豪とアルケミスト」は“特務司書”となったプレイヤーと転生した文豪たちが文学を侵蝕する者と戦い、文学の存在を守る“文豪転生シミュレーションゲーム”で、今回、初の舞台化となった。脚本をなるせゆうせい、演出を吉谷光太郎が担当し、主題歌『光ノ先へ』をROUが歌っている。

登場する文豪は、太宰治(平野良)、織田作之助(陳内将)、坂口安吾(小坂涼太郎)の三羽烏こと無頼派の3人。太宰治が師事した佐藤春夫(小南光司)と、太宰が焦がれてやまない芥川龍之介(久保田秀敏)に白樺派の志賀直哉(谷佳樹)と武者小路実篤(杉江大志)。そして江戸川乱歩(和合真一)だ。

物語は、太宰が目覚めるところから始まる──次々と目覚める、文豪たち。事態がわからずにいる彼らの前に颯爽と姿を現した乱歩がとうとうと語る。我々は、“アルケミスト”という存在によって転生した。そして、今、文字が侵蝕者たちによって侵蝕されている、と。文字が侵蝕されれば、作品が滅亡し、作家自身もいなくなる。なにより、その作品が数多の読者に与えた影響すらも消えてしまう……だから、その侵蝕者たちと作家自らが戦わなければならない、とも。しかし、いずれも名だたる文豪だらけで、どうにもこうにも一致団結とはいかず。それぞれの性格や関係性がていねいに描かれることがおもしろい。

太宰はド派手なマントを翻し、いかに自身が芥川という作家に心酔しているか、熱弁をふるう。その太宰を「赤い彼」と呼び「彼が活躍しているころ、僕は死んで居ないから……」と語り、その好意に戸惑う芥川。太宰とともに無頼派を名乗る、織田と安吾はともすればすぐネガティブに陥る彼を支える頼もしいムードメーカーだ。一方、太宰がほしくてたまらなかった芥川賞の選考委員だった佐藤は当時を振り返り、胸に秘めた思いを明かす。酒豪で片時も酒を手放さない中也は、しかし、太宰に自身の詩には価値がある、と言われたことに心動かされ戦いに挑む。戦いに挑む者たちを見送り、侵蝕者について調べる志賀と武者小路は人知れず、とある約束を交わしていた。そんな彼らを傍観し、誰よりも謎が好きな乱歩は侵蝕者なる謎に嬉々としながらも、ひょうひょうとストーリーテラーとしての役割を果たす。

 

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なによりも劇場という空間に響き渡るゲームの劇伴がすばらしい! 囲み取材で平野が「アンサンブルキャスト含め、マンパワーで魅せる演劇です」と語った通り、華麗な曲に乗りアンサンブルが舞うように演じる侵蝕者たちと対峙する文豪たちの鮮やかなバトルに目を奪われる。しかし、この舞台で紡がれるのは「文学を守る」という文豪たちの心の奥底にある、想い。真摯に創作と向き合う者たちがそれぞれに抱く、葛藤や憧憬、ともすれば嫉妬がこれでもかと詰め込まれる。なによりも史実では関わることがなかった芥川と太宰が心を交わす瞬間が幸せだ。彼らが吐露する言の葉は、おそらく一度は創作を志した者の、なにかをえぐるだろう。

この作品で初めて文豪たちの名前を知る人も、もともと知っていた人も、改めて「心をこめて書かれた文字」について思いを馳せる舞台となることだろう。上演時間は休憩なしの約1時間50分。東京公演は2月28日まで、3月9・10日には京都・京都劇場で上演。8月28日には本公演のBlu-ray・DVDがリリース予定(会場予約特典あり)。

撮影・文/おーちようこ

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【公式 HP】舞台「文豪とアルケミスト 余計者ノ挽歌(エレジー)
【公演日程】〈東京〉2019 年 2 月 21 日(木)~28 日(木) シアター1010
            〈京都〉2019 年 3月 9 日(土)~10 日(日)  京都劇場
【出演】   太宰治:平野良、織田作之助:陳内将、坂口安吾:小坂涼太郎、佐藤春夫:小南光司、中原中也:深澤大河、志賀直哉:谷佳樹、 武者小路実篤:杉江大志、江戸川乱歩:和合真一、芥川龍之介:久保田秀敏
【原作】「文豪とアルケミスト」(DMM GAMES)
【監修】DMM GAMES 
【世界観監修】イシイジロウ
【脚本】なるせゆうせい
【演出】吉谷光太郎
【音楽】坂本英城(ノイジークローク) / tak
【振付】MAMORU
【アクション】奥住英明(T.P.O.office)
【制作】ポリゴンマジック
【主催】舞台「文豪とアルケミスト」製作委員会

©舞台「文豪とアルケミスト」製作委員会

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