人気舞台の歌声を自宅で。特別な夜「おうちでディナーショー」レビュー
2020.5.27
歌手、女優の新良エツ子さんと、街の飲食店がコラボする「おうちでディナーショー」が2020年5月4日・5日・6日で開催された。当イベントは、事前にチケットを購入すると、前日に料理が届き、テレビ通話システム「Zoom」を使って自宅でディナーショーが楽しめるというもの。
ショーは各日19時~21時半の3回限りの開催で、各回4組という、なんとも豪華な内容だ。新良さんは、作曲家の和田俊輔さんと音楽ユニット「てらりすと」を組んでおり、作詞・ボーカルを担当している。2人の共通の作品には、2.5次元舞台で活躍する脚本・演出家の末満健一さんが手がける舞台『TRUMP』シリーズや、『舞台「僕のヒーローアカデミア」The”Ultra”Stage』、『乃木坂46版 ミュージカル「美少女戦士セーラームーン」』があり、舞台好きにはたまらない存在だ。
文/つかみ
未知のエンターテイメント誕生の予感!
新良さんと和田さんのtwitterアカウントで、「おうちでディナーショー」の告知が掲載された時、未知のエンターテイメントが始まる予感に胸が高鳴った。早速、告知サイト(https://www.music-dinner.com/)を覗いたら応援している新良さんの歌が聞けるだけでなく、料理を提供する目黒のカレー屋「創作スパイス かれはだれ」さんについての説明もあり、「梅ゴマキーマ」「デミグラスソースを使った欧風カレー」など、一風変わったカレーを提供していることも書かれていて、ぜひ食べてみたいと思った。さらに、1組につき1曲、事前に候補の中からリクエストができ、当日新良さんに歌ってもらえるという。各回限定4組の特別開催だったため、こんな特別な機会は滅多にないと、5月5日の公演を急いで予約した。
数日すると、メールで歌って欲しい曲のリクエスト曲一覧が送られてきた。和田さんが手がけた劇中歌や、「てらりすと」のオリジナル曲、J-POPや歌謡曲の中から選べるようになっており、どの曲をお願いしようか、嬉しく思いながらもかなり悩んだ。また、別日に、Zoomを利用したことがない人にも分かるように、丁寧な説明書が送られてきて、当日困ったときの連絡先も記載されていたので安心感が持てた。前日にクロネコボックスの一番小さいサイズでコンパクトにまとめられた料理が冷蔵便で届く。おしながきは、カレー5種類(赤いポークピンダルー、ゴボウと鶏のキーマ、安納芋と人参のベジグリーン、沢庵と根菜の黄色いカレー、梅ごまキーマ)、赤いたまねぎの酢漬け、キャベツと人参のピクルス、おせんべいのようなパパド(プレーン、青豆)とボリュームたっぷり。おかずだけでなく、インドの高級米・パスマティライスもかなりの量がラップに包まれている。ディナーショーにふさわしい豪華な内容だが、箱のまま冷蔵庫で保管すると、さほどスペースを取ることもないので助かった。
そして、待ちに待った当日。30分前から受付が始まる。Zoomで使用するミーティングIDとパスワードで入室すると、真っ暗な画面が写る。参加者が揃ったところで、出席確認、参加者の音声と動画はオフになっていること、当日の案内がされ、そのまま開始まで待機となる。心配なことはこの待機時間にチャットで運営側に確認できるようになっている。
告知では、新良さんとの交流の時間は無いとされていたのだが、本人のご厚意で、数分ほど、個別のトークタイムが設けられているとの説明があり、とても嬉しかった。わたしの準備と言えば、料理を温めるタイミングを迷ったのだが、始まるときに温かいのがいいと思い、受付前にお皿に盛りつけておき、受付が済んだ後に少し長めに温めた。そうこうしている間にあっという間に時間は過ぎ、開始間際の案内が流れた。
いよいよ開演だ。画面が切り替わると、ディナーショーらしく、白いクロスがかかったテーブルが並んだ部屋に新良さんがいる……と思いきや、どこか浮世離れして見える。この不思議な感じは何だろうと思っていると、新良さんから、時勢を反映して、自宅からバーチャル背景を使って配信しているとのお話があった。外に出ずに華やかな画面のエンターテイメントを提供できることに、驚いた。和田さんは、映像・音響オペレーターとして参加していた。
歌が始まる。1曲目は、参加した3組がリクエストした曲のうちの1つ。劇団ひまわりのプロデュース部門が手がけるBSPから「浅黄色の幻」。イントロが流れると、曲の雰囲気に合った背景に切り替わる。左上には曲名が表示されるので、事前に送られてきたリクエスト曲一覧と照らし合わせて、今どの舞台の何の曲を歌っているか分かるのも嬉しかった。劇場でのコンサートは暗転するので、歌われている曲のタイトルをその場で確認することは難く、曲名や作品名を確認しながら聞くことができるのは新鮮だ。ショーは、1曲ごとに短いコメントを挟みながら進んでいく。曲の間のお話は、新良さんがそれぞれの曲をどう感じているかが分かって、とても面白かった。
2曲目は、新良さんが出演、お熊を演じた、舞台『阿呆浪士』から「花の吉原ソング」。歌に合わせて動くと、飾りや手の一部が、バーチャル背景に溶け込むのが不思議で、まるで異世界にいるような気分にもなってくる。続けて、料理のカレーにちなんだ、新良さんが思う、スパイスらしい曲を披露する。途中で愛猫のザッシュくんを抱き上げたりしながら、和やかにショーは進んでいく。画面越しでも、温かさが伝わってきて、距離感が近く感じられたのが意外だった。事前の案内で知らされていたように、途中、新良さんと1組ずつのトークが所々で挟まれる。最初は私の番だった。名前を呼ばれ、音声をオンにする旨の通知が届き、許可のボタンをクリックする。音声は参加者全員に聞こえるが、ビデオ画面はオンにならないので、安心だ。かなり緊張して頭が真っ白だったが、新良さんが「今日はどこから参加しているのか」と質問してくれて、そこから「おうちでディナーショー」の今後の展望なども語ってくれ、楽しく会話をすることができた。トークタイム終了後、私のリクエスト曲「輪廻夜想」から始まり、舞台『TRUMP』シリーズの曲を5曲も続けて歌う。このシリーズの曲について、新良さんは難曲と言っていたが、難しさを感じさせず、生歌で軽やかに歌う姿に感動を覚えた。
最終的には全16曲を披露。和田さんの作曲した楽曲はどれも魅力的だ。特に舞台『GOLD FISH』の「Call Night Self Fish」が好きで、実際に観たことはなかったが、披露された曲が、劇中でどのように流れるのか聴いてみたいと感じた。なお、私はタブレットで直接音を流して聞いていたのだが、配信環境や、参加者側の端末や回線にも左右されるため、自宅のWi-fi環境によってはスムーズに流れないこともあった。音質は、劇場で聴くには劣るだろうが、使っている端末の性能や、音質の良いイヤホンやスピーカーで聴くとまた違うだろうし、今後の開催があれば、もっと楽しむための工夫を凝らすのも、面白いだろう。
振り返ってみると、注文した時から始まり、リクエスト曲をどれにするか悩み、料理を開封して豪華さに驚き、当日のための準備をして、ディナーショーに臨む。注文をした時から当日まで、楽しめるポイントがいくつもあり、当日に向かって気持ちが盛り上がっていくこの体験は、まさにライブだった。音質や、思わぬことが起こった時も含めて、とても楽しかった。自粛が続き、出かけられないことに息苦しさも感じていた中で、久しぶりに、心からエンターテイメントを楽しんで、元気を貰えたし、気分も晴れやかになって、明日も頑張ろうという気持ちになれた。公演後、新良エツ子さんはtwitterにて、さらにブラッシュアップした企画を考えていると書かれていたので、今後に期待したい……と記事を書いている間に、第2弾が発表された。(詳しくは https://www.music-dinner.com/)内容を見ると、街の料理店だけでなく舞台『RE-INCARNATION』ともコラボ、ゲストも招き前回とはがらりと趣向が変わっている。予想を遥かに超える試みに今後の展開も楽しみになった。また、和田さんは、3時間の制限内でゼロから曲を作り、その様子を各回10名限定で、Youtube Liveにて配信しながら参加者の質問にも答える、「魔法の作曲Live!!」も主催している。こちらも、「Season 2」と題してさらにパワーアップして開催されるようなので、とても楽しみにしている。
【参考までに】オンライン上映を見るときのポイント。
1.Wi-fiをつないでおく
配信は、データ容量が大きいため、動画を見るとき同様、Wi-fiをつないでおくと安心できる。Wi-fiの回線が弱い場合や、Wi-fiがなく、タブレットやスマホなどの端末もデータ使い放題のプランに入っていない人は、レンタルWi-fiを借りておくなど対策をしておくと良い。
2.すぐ充電できるように充電器は近くに置いておく
配信は、電池の消費が早いため、すぐに充電ができるようにしておく。一瞬でも見逃したくない人は、充電をしながら鑑賞するなどの対策をしておく。
3.タブレット、スマホの場合はよくお知らせが来るアプリの通知を切っておく
通知が来ると、楽しい気分に水を差されるため、事前に設定で通知を切っておくと良い。
4.誤って退出してしまった場合の対策をしておく
Zoomはそう簡単に退出したり、接続が切れるようにはなっていないが、思わぬハプニングで退出してしまう可能性もある。退出してしまうと、焦ってスムーズに行動できなくなるかもしれないので、URLからすぐ接続できるようにページを別窓で開いておく、ミーティングIDとパスワードを紙に控えておくと安心だ。
5.メニューバーを消して、全画面で見る見方(Zoomの場合)
通常、Zoomはメニューバーが表示されているが、画面の中央を1回クリック(タブレット、スマホではタッチ)しよう。そうするとメニューバーが消え、全画面で楽しむことができる。
【Zoomについて】
Zoomは、参加者は無料で使えるテレビ通話システム。スマホ、タブレット、パソコンで利用できる。スマホ、タブレットは「ZOOM Cloud Meetings」というアプリをダウンロード、パソコンはURLをクリックすれば利用することができる。(URLでは接続が不安定な場合もある。不安な人は事前にZoomミーティング(https://zoom.us/jp-jp/meetings.html)の公式サイトに行き、「ミーティングに参加する」ボタンを押すとアプリをインストールするシステムがダウンロードされるため、ダウンロードしたファイルをダブルクリックして、アプリをインストールしておくと良い)Zoomの特徴のひとつとして、参加者は、アカウント登録(サインイン)の必要がなく、送られてくるミーティングIDとパスワードだけで参加できるため、配信サービスの利用に個人情報の登録の必要がないのも嬉しいポイント。
「おうちでディナーショー」(終了)
2020年5月4日(月)19:30~21:00
2020年5月5日(火)19:30~21:00
2020年5月6日(水)19:30~21:00
各日限定4組
ベーシックコース(1~2名さま用) 1人につき10,000円
3名さまセットコース 25,000円
4名さまセットコース 30,000円
公式HP https://www.music-dinner.com/
新良エツ子
歌手、女優。歌手として、舞台『TRUMP』シリーズ、サンリオピューロランドのパレードの楽曲を歌う。『舞台「僕のヒーローアカデミア」The”Ultra”Stage』、『アサルトリリィ』の歌唱指導もしており、『乃木坂46版 ミュージカル「美少女戦士セーラームーン」』では作詞家としても活躍。和田さんと音楽ユニット「てらりすと」では、作詞、ボーカルを担当している。出演作品はパルコ・プロデュース舞台『阿呆浪士』、ミュージカル「HEADS UP!/ヘッズ・アップ!」など。
和田俊輔
作曲・編曲家。『「僕のヒーローアカデミア」The”Ultra”Stage』、『舞台「NARUTO-ナルト-」』、『ハイパープロジェクション演劇「ハイキュー!!」』、『舞台「鬼滅の刃」』、『ミュージカル「黒執事」』、『乃木坂46版 ミュージカル「美少女戦士セーラームーン」』といった、2.5次元の人気作品に多数楽曲を提供している。
創作スパイス かれはだれ
@karehadare8
東京、中目黒にある自然派スパイスカレーのお店。有機JAS認可、農薬・化学肥料不使用の無農薬野菜、遺伝子組み換えなしで生産者の分かる安心安全のお肉、小麦を一切使用しないグルテンフリー、保存料不使用など、厳選された素材も魅力のひとつ。カレーは1種類ずつ食べる他に、数種類を混ぜる食べ方も推奨しており、複雑な味のハーモニーを楽しめる。