改装前最終公演、味方良介&荒井敦史が彩る『熱海殺人事件ラストレジェンド~旋律のダブルスタンバイ~』開幕!

 2021年新春、57年間の長い歴史を未来へとつなぐため紀伊國屋ホールが改装工事に入る。東京都選定歴史的建造物である、このビルは耐震補強のため改修、紀伊國屋ホールもロビーや客席の改装が行われる──その最後を飾るのは、このホールでもっとも上演回数が多い『熱海殺人事件』の最新作。

 

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 本作は1973年の発表以降、翌年1974年に岸田戯曲賞を授賞、後に映画化。広く愛され、日本の演劇史上プロアマ問わず最も上演され続けている作品(公式サイトより。推定累計8,500ステージとのこと)だ。紀伊國屋ホールでの初演は1976年で実に45年に渡る歴史を誇っている。

 熱海、という温泉地のイメージも様変わりし、職工、カフェバー、パンタロンといった時代を反映する単語が飛び交う一方で、上演される時代の世相を皮肉り笑い飛ばす視線をまじえ繰り広げられる物語が問うものは?……なーんてことを考えなくてもいい、と実は思っている。なぜなら、ただただ愉しくて、切なくて、泣けて笑って、ともすればがちがちになった心が大きく動くことがとてつもなく気持ちいいからだ。

 描かれるのは、異なる立場から見た「熱海殺人事件」──人が人を殺した、という事実が紐解かれていく過程。5年ぶりに東京で再会した幼馴染のふたり、五島列島生まれの大山金太郎と山口アイコが出かけた熱海の海岸で「大山がアイコを絞殺した」という事件。大山はすでに罪を認めている。しかし、逮捕して終わり、ではない。
 こんなセリフがある。

「誰でも人は殺せるの。でも、犯人にはなれないの!」

 犯罪として立件しなければ、罪には問えない。それまではタダのヒト。愛する人を殺すに至る、動機はなにか? 若者が生半可な理由で「海が見たい」なんて言うわけないじゃないか、彼らの間にどんな事情があったのか? ともすれば新聞の三面記事にちっさーく載って終わりそうな事件を登場人物たちが「捜査」していく。

 登場するのは“東京警視庁にその人あり”と言われた木村伝兵衛部長刑事(味方良介・荒井敦史)、その木村と10年も腐れ縁で捨て身の潜入捜査を行うヒロイン水野朋子婦人警官(愛原実花・新内眞衣/乃木坂46)、東京警視庁に憧れ野心を胸に転任する熊田留吉刑事(石田 明・細貝 圭)、そして犯人として登場する大山金太郎(池岡亮介・松村龍之介)の4人。

 己の美意識に従い、事件を「好み」に仕立て上げる……と見せかけて秘められた真相に歩み寄る木村伝兵衛。彼を中心にひとつの事件がさまざまな人間模様を浮き彫りにし、異なる価値観や偏見、世界の見方、愚かさや切なさ、優しさがあぶり出され、ぶつかりあう。物語の構造がシンプルで強靭だからこそ、常に時代を風刺してしゃれのめす。と、もっともらしく紹介しながらも、声を大にして言いたいのは、とにかく膨大な台詞を吐く生身の役者の熱がうるさくて心地いい。うわー、生の舞台を観た!!! という疲労感と充実感が観劇するという快感を改めて思い出させてくれる。たまらん。役者たちの見せ場もたくさん! これでもか、これでもか、と印象的なセリフとシーンが炸裂する。

 

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 つかこうへい氏の意思を継ぎ、紀伊國屋ホールでの『熱海殺人事件』を上演し続ける、演出の岡村俊一さんは舞台挨拶で語った。
「1976年の『熱海殺人事件』から45年、改修前という節目となる公演にこの演目を上演できることがうれしい。そこに、つかこうへい氏の娘である愛原実花を招くことができたことも喜びです。
 今、この時代にこれだけの膨大な台詞量の芝居を生身の人間が演じること。そのために彼らがどれほどの努力をしてきたかを見てほしいですし、頑張ってきてくれた俳優に感謝しています。全員、マスクで酸欠になりながらも稽古に挑み、PCR検査もすませ陰性だったことも、ここに報告し、今日の初日に臨みます」


 言葉通り、昭和、平成、令和、と時をつないで、なお生き続ける文学作品に挑む、作品誕生よりも後に生まれた若手俳優、芸人、アイドル、タカラジェンヌとそれぞれの道を歩んできた座組が描く物語に、観る者は自分の在り様を投影することだろう。

 続けて「紀伊國屋ホールの思い出」を聞かれたW主演も思いを明かす。
「思い出とは少しちがうのかもしれませんが、僕は岡村さん演出でつかこうへいさんの『幕末純情伝』で初めてこの場に立たせていただきました。そのときに荒井と石田さんと細貝圭、そしてスタッフの方々が一緒でした。
 この空間には歴代の俳優、スタッフがつちかってきた活力みたいなものが詰まっていると感じています。その力をこの公演でもう一段回上げて、新たな空間へと渡せることが幸せです。もうダメだ……と思ったときも、この空間に立つことで力をもらえる特別な場所です」と味方さん。

「いろいろな作品で立たせていただき、観客としても訪れた劇場で、特別な場所でもあります。この板の上に立つことで、いい意味でも悪い意味でもノセてくれるし飲まれることもある。そこを乗り越えて、どう見せるか? ということを問われる空間です。そんな場所で改修前最後の『熱海殺人事件』を演じられることに感謝して、後世に残る作品にしたいです」と荒井さん。


 それぞれの心を乗せて公演は幕を開ける……「ダブルスタンバイ」のタイトルに相応しく、さまざまな座組で届けられ、役者の力がぶつかり合い、弾けあう本作の千秋楽は1月31日まで。

 

熱海殺人事件 ラストレジェンド ~旋律のダブルスタンバイ~
公式サイト 
http://www.rup.co.jp/atami_2021.html

本サイト歴代『熱海殺人事件』記事もお供にどうぞ。

 

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