舞台版『心霊探偵八雲 祈りの柩』ゲネプロレビュー その、祈りは届いたのか? /おーちようこ
望まぬまま、死者の魂を見ることのできる左眼を持つ大学生……斉藤八雲が舞台に帰ってきた。3月1日まで続く、本公演の最新レビューをお届けする。
舞台版『心霊探偵八雲 いつわりの樹』から1年半。著者である神永学さんが舞台上演のために書き下ろした、オリジナルストーリーがこの作品だ。
前作に続き主演、八雲を演じるのは久保田秀敏(くぼた・ひでとし)さん。未解決事件特別捜査室の後藤和利刑事に、アニメ版で声優を務めた東地宏樹(とうち・ひろき)さん、その相棒の石井雄太郎刑事に佐野大樹(さの・だいき)さん(すてきにコケていました!)といった、おなじみの顔ぶれが集い、彼とともに行動をともにする女子大生の小沢晴香を新たに美山加恋(みやま・かれん)さんが演じている。
さらに事件の鍵をにぎる、あるいは巻き込まれる人々に、安西慎太郎(あんざい・しんたろう)さん、石渡真修(いしわたり・ましゅう)さん、東啓介(ひがし・けいすけ)さんといった若手俳優が起用され、樋口智恵子(ひぐち・ちえこ)さん、北原沙弥香(きたはら・さやか)さん、そして高橋広樹(たかはし・ひろき)さんといった顔ぶれが並ぶ。
届けられたのは、人知れず歌う女性の幽霊を巡る物語。
透き通った歌声を披露するのは、齊藤未来子(さいとう・くみこ)さん。
その歌声に誘われるかのように、次々と人々が現れるオープニングが美しい。
まるでオーロラが降り注いでいるかのような舞台美術が、くるくるとさまざまな場面へと変わる。
あるときは、丘の上の泉に。
また、あるときは教会に。
そして、教会で起こる密室殺人事件。
犯人として捉えられたのは―—果たして、誰か。
謎また謎が次々と放たれる展開もさることながら、昨年まで久保田さんとミュージカル『テニスの王子様』で共演していた安西さん、石渡さん、東さんが見せる表情、そして演技にも注目だ。
久保田さん演じる八雲はあいかわらず、ひょうひょうと真実を見極める。まるで、感情を見せまいとするかのように、淡々とうそぶく。
「世の中には知らないほうがいいこともある」
事件解決が、必ずしも幸せを招くことにはならない。けれど、誰かの救いにはなる。たとえ、それが罪を問われる者だとしても。
だから彼は真実へと辿り着く。
なぜ、彼女は歌い続けるのか―—込められた想いの行方を見届けてほしい。
- 2015年2月11日(水・祝)ゲネプロ観劇