スーパーダンガンロンパ2 THE STAGE 〜さよなら絶望学園〜 2017 ゲネプロレビュー&横浜流星/鈴木拡樹コメント

とてつもなく歪んだ友情が放つ、絶望の果てのとてつもない希望

 

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(本記事は、一部、ゲームと舞台のネタバレを含みます)

 

「スーパーダンガンロンパ2 THE STAGE〜さよなら絶望学園〜2017」が3月16日に東京・Zeppブルーシアター六本木で開幕。そのゲネプロ(公開稽古)が前日に行われた。
 本作は大人気推理ゲーム「ダンガンロンパ」舞台化第2弾として2015年に上演された、「スーパーダンガンロンパ2 THE STAGE〜さよなら絶望学園〜」の再演。描かれるのは“超高校級”の才能を持つという希望ヶ峰学園の生徒たちが、南の島で“コロシアイ修学旅行”を繰り広げる、謎解きと関係性の物語。

 囲み取材にはキャスト陣から、横浜流星、伊藤萌々香(フェアリーズ)、植田圭輔、伊波杏樹、いしだ壱成、鈴木拡樹に加え、演出・脚本の山本タク、振付を担当したENcounter ENgraversのAKIHITOが登壇。新たに脚本・演出を山本が手がけ、昨年、アニメ「ダンガンロンパ3 The End of 希望ヶ峰学園」が放映されたこともあり、その要素がさまざまにちりばめられているという。
 主演にして、自身の才能を思い出せずにいる“超高校級の???”こと日向創に再び挑む、横浜流星は語る。
「新しい作品を創ることを目標として、みんなで力をあわせ、稽古をしてきました」
 また、山本からも意気込みが。
「再演ですが、どう新作として見せるかをずっと考えてきました。新たに入った方々も含め全部で33名のキャストがこの公演を作っていますが、その個性が再演で新作の魅力になると感じています」
 かくしてゲネプロの幕は開き……どんな世界が繰り広げられたのか──?

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 左から山本タク、いしだ壱成、伊波杏樹、伊藤萌々香、横浜流星、鈴木拡樹、植田圭輔、AKIHITO。

 

  暗闇のなか、不気味な影が揺らいでいる……真っ赤に光る瞳(?)が世界を見下ろしている。場面は一転、明るい光のなか、日向創(横浜流星)の顔を覗き込む、“超高校級の幸運”に恵まれた狛枝凪斗(鈴木拡樹)がいた……が、果たしてそこは南の島だった!?

 同じく修学旅行に来た新入生たちの超高校級の才能を狛枝が紹介していくが、日向の才能だけは本人が思い出すこともできず、狛枝が語ることもなく、ただ尋ねる。「思い出せた?」
 やがて。
 自らを希望ヶ峰学園の「学園長」と名乗るモノクマから衝撃の事実が明かされる。それは、彼らが丸二年間もの記憶を奪われていて、この島から出るためには互いの絆を結び、なおかつ殺し合うしかない、というもの。
 殺人事件が起こるたびに推理を繰り広げ、全員が正解したら犯人だけがおしおきされ、ひとりでもまちがえたら犯人以外の全員がおしおきを受ける……その宣告が、生徒たちを惑わす。

 事態は一変。 
 生き残るために他者を殺すなんてありえない……と思っていた……少なくとも、日向は。しかし、第一の殺人が起こってしまう。
 自分だけが生き残るため、他者の罪を見過ごす者。
 大切な人を生かすために、自ら罪を犯す者。
 画策と思惑が交差し、誰かが命を落とすたびに彼らの知られざる関係と秘められた想いが明かされる────これこそが「絆を深める」ことではないか。
 同時に畳み掛けるような謎解きもたまらない。
 ゲーム最大の見せ場とも言える「学級裁判」では、お馴染みの「それはちがうぞ!」という鋭い声にあわせ、パキーン!と衝撃音とともに人々が吹っ飛ぶ姿が快感だ。2次元のゲームが、3次元の肉体を操る彼らによって質量を持ち、空を切り、心だけでなく身体ごと確固たる事実の重さを客席に叩きつける。
 さらに今回、ライブカメラにより、彼らの刹那の表情が大きく映し出され、3次元が2次元へと転換される瞬間も快感だ。

 そのなかで、対峙するふたりがいた。
 犯人の動機を前向きに捉え、抱く葛藤をすくいあげ一歩でも前に進もうとする日向。
 人々の動向を舐め回すように眺め、犯人の切なる想いを独善的だと断罪する狛枝。終始、笑みを浮かべ、人々の動向に好奇心丸出しで眺めているその姿は、いっそ不気味ですらある。しかしそれは、日向を導くためだった……?

 囲み取材で鈴木は、語った。
「やり残してきたことをやろう、ということをテーマにして、日向くんの良き友であり、ライバルでもありたい」
 同時に
「狛枝として狛枝自身は大きく変わったことはないけれど、前作より日向くんにどういう刺激、道標ができるかということを話してやってきた。
 この台詞は、日向くんの印象に残るなあという台詞や、この後の成長につながるなあ、というシーンをピックアップして自分のなかに落とし込んで構成させていただきました」
 一方で横浜も思いを明かす。
「再演だけど、新作。原作を知っている人、知らない人にも楽しんでもらえる作品を目指したいし、それぞれのキャラクターを愛してほしい。
 アニメ3があったことで日向くんの初演では描かれなかった、深いところまで見せたい。仲間と支え合っていく、日向くんの姿から勇気や希望を届けたいです」
 言葉通り、昨年放送されたアニメ3の要素が、役者に役の解釈を与え、さらなる深みを増している本作。その、ふたりの駆け引きは圧巻だ。

 より強く希望が輝くため、絶望という試練を乗り越える必要がある……そう信じて疑わない狛枝は、己の才能を最大限に行使する。その狛枝を信じるからこそ、彼が与えた絶望を疑う日向。それこそが狛枝の望む希望だった…………やれやれ、とんでもなく歪んだ友情だ!
 そんな日向に寄り添う、七海千秋(伊藤萌々香)。作品世界へのこだわりにもぞくぞくし、次から次へと発見があり、はっきり言って目が足りない。
 かくして、ある人物の登場により信じ難い現実が投げ込まれ、究極の選択を迫られる────果たして彼らの卒業は絶望か、希望か。

 

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十神・日向・狛枝_3544

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全員_3556

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怒涛のゲネプロ終了後、横浜流星と鈴木拡樹に突撃!
語られたのは初日への想い。

横浜流星

 ──三時間という長い上演時間のなか、いろいろな顔を見せます。
横浜:感情の揺れ幅が大きくて、精神的に苦しい役です。立ち直ったと思ったら突き落とされる、立ち直ったと思ったらまた突き落とされて……。
 ただ、前回はまだ十代で、経験も少なかったこともあって、座長としてみんなに対して弱いところを見せたこともありましたが、今回はそういったことも出さずに、稽古場に居られたと思います。
──アニメ3の要素もあります。
横浜:初演はアニメ3の放送前でしたが、今回、アニメ3を観ることで、より掘り下げることができたし、でも、だからこそ、日向としては苦しかったです。
 でも、そこを支えてくれたのが七海です。最後に渡してくれる「希望のカケラ」が、いつもは上からふわっと手のひらに落とす感じだったのが、今日のゲネプロでは両手を包み込むように渡してくれて、それがすごく力強くて、ああ、本当に背中を押されているな、と実感しました。新たに明かされたことも多くて、狛枝との関係も(鈴木)拡樹くんともいろいろ話して作り上げました。
──その、鈴木拡樹さん演じる狛枝との対決も、見どころのひとつです。
横浜:前回と比べて狛枝からのアプローチが強くて、すごく攻められている感じがして。それだけ日向の存在感が増したように感じたし、その責任を果たしたい。
 初演のときも思いましたが、本当にみんなに支えられて成り立っているな、と感じていて。最初はちょっとでも自分が引っ張っていけたら……なんて思っていたんですが、今、ゲネプロを終えて、やっぱり支えられていると思ったし、そう思えたからこそいろいろな課題を見つけることができました。だから、この課題をクリアして初日を迎えたいし、見つけられたことが大きいと思っています。
──今、この瞬間だからこそのコメント、ありがとうございます。最後に一言、お願いします。
横浜:僕自身、再演という経験が初めてで、つい、初演の台詞が出てしまったりしたんですが……。
──未だに台詞が入っていることがすごいです。
横浜:でも、それで困っちゃって、修正するのが大変だったんですが、その変化こそが新作です。だからこそ拡樹くんが囲み取材で「できなかったことをやる」と言っていたように、新しいキャストとともに山本タクさんがおっしゃっていた「新作」を作り上げたることを目指したいし、お見せしたい。なにより僕自身が誰よりも自信を持って初日を迎えたいです。

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鈴木拡樹

 ──前作では豹変、という印象だった狛枝が、今回は冒頭から得体が知れない気配をまとい、常に人々の動向をものすごくおもしろそうに眺めていました。
鈴木:さほどアプローチを変えたつもりはなかったんですが前作との差として、日向くんがよりピックアップされていると感じています。
 表情については前作もやっていましたが、狛枝は超高校級の才能にすごく惹かれているので、それらが輝く瞬間、ことに人と人とが関わることで発揮される瞬間には身を乗り出してしまう、ぐいぐい前に行ってしまうところは意識しました。あとは冒頭が変わっていて、エピソード0的な船の場面が増えている分、狛枝の変化は見せたいです。
──ゲネプロを終えての感想をお願いします。
鈴木:つながるところはつながったかな、と思います。この作品は映像と音と動きとのタイミングが大切なので、場当たりがけっこう大変なんですね。そこを通して演ることで気持ちと動きをつなげて、なおかつ自分のなかで改善できるところもあったので、本番に向けて自信が持てました。
──気持ちを乗せるための、舞台での空間といったことを確認する、その感想こそが、この今、ならではです。
鈴木:そういったことをまずクリアにして、初日を迎えたいので、確認して、課題を見つけて、解決して、の積み重ねです。
──今回も客席降りがありました。通路を通り抜ける横の席にいて、恐ろしさと気迫に思わず鳥肌がたちました。
鈴木:前作も挑戦させていただきましたが、ゲームのなかから飛び出す瞬間、という場面をいただけたので、そこはもう勝負だなあ、と思って挑ませていただきました。圧倒的なリアル、というものを伝えられたらと思っています。
──その狛枝と客席をはさんだ舞台上、日向、こと横浜流星さんが真っ向から対峙します。
鈴木:前作は最初のほうで少し人見知りがうかがえましたが、最終的には打ち解けることができました。そういった作品だからこそ、今回も僕らの希望の象徴としての日向くんというか、引っ張っていく座長としての力強さを感じています。
──最後に、狛枝として一言、お願いします。
鈴木:前作をご覧になった方も楽しんでいただけるよう、狛枝がモノミに会っているか会ってないか、それにより持っている情報がちがうことで、狛枝も実は焦りを隠している……とか、随所に細かい変化が盛り込まれているので注目してほしいです。
 DVDでご覧になっている方は全体の空間やそれぞれの表情を改めて観ていただきたいです。推理もののお話なので、その瞬間、誰がどんな顔を見せるのか? それにより、空気が変わる瞬間、といったものを感じてほしいです。もちろん初めてご覧になる方にも楽しんでいただけるよう、初日を迎えます。

 

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2017年3月15日 Zeppブルーシアター六本木楽屋にて 取材・撮影/おーちようこ

スーパーダンガンロンパ2 THE STAGE〜さよなら絶望学園〜2017」
http://www.cornflakes.jp/dangan/2017/

2017年3月16日(木)〜26日(日) 東京都 Zeppブルーシアター六本木
2017年3月30日(木)〜4月2日(日) 大阪府 森ノ宮ピロティホール

チラシ表(最終)

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