つかこうへいTRIPLE IMPACT『いつも心に太陽を』レビュー。愛は誰も救わない、だろうか。
2015.2.25
愛は誰も救わない、だろうか。
初日に前説として登場した、生前のつかこうへい氏の舞台のプロデューサーであり、今作の演出も手がけた岡村俊一氏は語る。
「例年、つかこうへいさんが2月から3月の、冬から春先に紀伊國屋ホールで公演するのが習わしとなっていて。他界された翌年も劇場を予約していました。もちろん、やらないという選択肢もありましたが、せっかくだからと上演を決めて、かれこれ五年となります」
その五年目となる今年、つかこうへいトリプルインパクトと題して選ばれた演目は『初級革命講座 飛龍伝』と『ロマンス2015』とその原作となる『いつも心に太陽を』の三作。そして2月24日、最後の上演作となる『いつも心に太陽を』の幕が開いた。
物語は至ってシンプル。
オリンピック出場をかけた第18回和歌山国体の男子水泳1500m自由形のプールで出逢ってしまった、ふたりの選手の始まりと終わり。愛するということは、どこまでも肯定することであり、支えるということは犠牲になり己を捧げることとなのか。あるいはすべてに目を瞑り、そこにどっぷり甘えることなのか……。
すがる男と振り切る男。
この作品を、恋愛譚と観るのも勝手。
ゲイでホモでオカマの痴話喧嘩と観るのも勝手。
そして、夢を諦める物語と傷つくのも勝手。
非道い話と思うのも勝手。
ほんとうにとてつもなく辛い舞台だと叫んで、わんわんと泣くのも勝手。
高橋龍輝さん演じる谷口が柳下大さん演じる青木シゲルに「きれいだよ」と伝えるたび、シゲルが谷口に「俺、きれいか?」とたずねるたびにふたりのどこかしらがみしみしと軋み、歪んでいくようで。
その「きれい」という単語には無数の思いが秘められていることに、互いに気付いていながら、ことばで殴りあっていく、そのことがとてつもなく寂しい。
どんなに無体にされても、どこまでもシゲルにすがる谷口は愚かで美しい。
愚直なまでに愛することは不幸なことなのか―—。
彼らが舞台で、どう在るのかは、自身の目で確かめてほしい。
劇場という空間で、和歌山国体の青空のもと、煌めくプールでともに泳ぐ、満ち足りた彼らと同じ時を過ごせたことを幸せに思う。あの瞬間、満ち足りてしまったからこそ、その先に待つ日々が欠けていくしかなかったとしても、きっと彼らは生きていく。青空に太陽を思いながら。
紀伊國屋ホールでの上演は、3月2日(月)まで。
大阪大千穐楽は、3月14日(土)にて。
「いつも心に太陽を」
作:つかこうへい
演出:岡村俊一
出演:柳下 大 高橋龍輝 武田義晴 須藤公一 鮎川太陽 土井一海 高橋直人(※高は旧字) 大石敦士
ほか飛び入りゲスト多数予定
公演日:2015年 2月24日(火)〜3月2日(月)
会場:紀伊國屋ホール ※当日券発売中
大阪:森ノ宮ピロティホール
2015年 3月14日(土)
「いつも心に太陽を」
大阪千穐楽特別公演決定!!