和合真一インタビュー/舞台『私のホストちゃん REBORN』「2.5次元フェス(仮)」ミニレポ|Theater letter 09

Theater letter──不定期連載でお届けする、好きなものだけ集めた、舞台からの手紙。

 

ホストちゃん「2.5次元フェス(仮)」で大暴れ!?

 

saizenseki/host01

 12月3日(土)、12月4日(日)に幕張メッセで開催された「2.5次元フェス(仮)」(http://25dfes.com/)のステージに2017年1月11日(水)からはじまる舞台『私のホストちゃん REBORN』よりキャストが登壇。煌めくホストたちのなかから久保田秀敏、松井勇歩、和合真一、森田桐矢、藤戸佑飛、萩尾圭志、甘王が華麗な歌とダンスを披露。舞台のシステムや楽しみ方をレクチャー。さらに本公演さながらの、お客様への「口説きタイム」を公開実演した。
 “指名制”や“ランキングシステム”が盛り込まれ「お客様参加型舞台」として話題を呼んだ本作は、モバイルゲームからテレビドラマを経て2013年に舞台化。ナンバーワンの座を目指すホストたちの人生を時事ネタやパロディを折り込みコミカルに、けれど真剣にお客様と向き合う姿を描く物語で、今回がシリーズ4作目となる。
 笑いあり、口説きありのエンタメだが、毎回、彼らの命運を握る「超太客」として存在感あふれる女優が出演。太客としての豪快さ、懐の深さも見どころのひとつであり、新作では手塚理美がその役を担う。
 今回、登壇したホストのなかから「君と僕の絵空事、一緒に叶えてみませんか?」と自身の役名“絵空”にかけた、ちょっぴり気障な口説き文句で異彩を放ち、とらえどころのない不思議キャラを発揮した、和合真一さんにお話を伺った。

 

saizenseki/host02

saizenseki/wago03

saizenseki/wago04

saizenseki/wago05

撮影/おーちようこ

 

 

すべてはエソラゴト? 和合真一、かく語りき。

 

反抗期を迎えた勢いで
ベンチャー企業に就職してしまいました

 

──この世界に入ったキッカケを伺います。
和合:実は18歳で一度就職して、27歳でこの世界に飛び込みました。でも、それは両親に反抗した結果なんです。
 もともとは親が芸能界を進めてくれていたんですが、ちょうど反抗期を迎えてしまい(笑)……高校を卒業してすぐにIT系のベンチャー企業に正社員として就職したんです。そこでネットコンサルタントやプランナー、ウェブデザイナーとして働いていました。そのうち会社も大きくなっていき、気付いたら7〜8年経っていた。
──企業創成期メンバーだったとしたら、なかなかの役職になっていたのでは……。
和合:そうですね。まあまあの肩書をいただいていました(笑)。でも、あるとき、このまま仕事を続けるべきか迷ってしまったんです。忙しいまま会社にいて、友だちもいなくて外で誰かと食事したり、お酒を飲むといったことをまったく経験していなくて、これでいいのか?と。
 それで思い切って異業種交流会みたいなところに行ってみたら、これがおもしろかったんです。いわゆる「飲みニケーション」がすごく楽しくて、一気に世界が広がった。そのなかで、だんだんともう一回、芸能界に関わりたいなと思うようになりました。
──それは、演者のほうで?
和合:いえ、最初は制作側を目指そうと考えていました。でも、あるとき、お酒の席で知り合った芸能関係の方が「和合くん、頭、ぶっ飛んでるから表に出たほうがいいよ」と言ってくださって、自分でも目指せるのかな? と思ったのがキッカケです。
 これまでのキャリアを活かして転職するのか、いっそ職種自体を変えるのか、と。でも、自分の年齢を考えたら芸能界に挑戦するにはギリギリかもしれないと思って、まずは一ヶ月、と期限を切りました。厳しい世界なのは分かっていたので、親にも内緒で、いろいろなオーディションを受けてみようと。それで少しでも目が出なければ、もとの職種で転職しようと思っていたら、ファッション誌が主催するコンテストでグランプリをいただいて、その特典がとある養成所の特待生だったんです。
──おみごとです!
和合:まあ、結局、なるべくしてなった、というか。元の素材の良さですね。
──そういうキャラクターですか?
和合:はい。今日は、そういう方向でお願いします。
──今日「は」というところが気になりますが、続けます。そこから今の事務所に?
和合:はい。面接した日が自分の誕生日だったとか、事務所の方とプライペートで色々と相談に乗っていただいていた方が古くからの付き合いだったとか、いろいろ縁を感じてお世話になろうと決めました。実は最初の頃は事務所のサイトをデザインしたり、所属タレントの写真のレタッチなんかも手がけてました。
 事務所の先輩でもある伊勢大貴さんの写真を撮ったり、You Tubeに上げている映像作品、伊勢大貴/I’ve Been Working on the Railroadは監督・脚本・撮影・編集、すべて「和合真一」でお届けしています。
──なかなかに多彩で、なおかつ得体が知れません(笑)。
和合:はい。よく掴みどころがないと言われます。マネージャーからも「人じゃないみたい」と……。
──失礼ながら、確かにモノっぽい……。
(同席していたマネージャーさんから、ここで一言)
マネージャー:一見して、どういう人間かわからないところがおもしろいと思っています。見るからに「人が良さそう」という役者もいて、それはそれで武器ですが、逆に和合にはそういったところが一切ないところがいい、と言って、オファーいただくことが多くてありがたいです。演じる役に対して性格が邪魔しないというか。
和合:あと、昨今流行りの爬虫類顔です。
──なるほど。自分で言っちゃうところとか(笑)、ひょうひょうとしたところがすてきです。

 

自称「自分研究家」
それは完璧ではない、と知っているからです

 

──2013年から活動を開始します。
和合:舞台は2014年からですが、役者度胸が付いたのは12月のオトメステージVol.2「擬人カレシ〜けもみみ大作戦!?〜」でのショウ(ヒョウの擬人カレシ)を演じたあたりです。失敗してもアドリブで返せるようになったというか。といっても作品を活かすアドリブとそうでないアドリブがあるので、すべてを肯定しているわけではなくて。ただ、なにか不測の事態があったときに演出家のなかには無かった方向の、「役」としての台詞や動き、見せ方もできる、ということを覚えました。
 それがまた、キャラとしてだけでなく和合としての色や力になっていって、観ている方に届いたという反響もあってとても大きな経験でした。その後もいろいろな作品に出させていただきましたが、やっぱり、より多くの方に認知していただけたのは、今年4月の舞台「黒子のバスケ」THE ENCOUNTERの海常高校、森山由孝ですね。オーディションで選んでいただきましたが、こんなビックコンテンツに出させてもらえることはありがたかったです。
──どのように挑んだのでしょう。
和合:イチ高校生メンバーで、最初の台詞は3つか4つだったんです。ただ、女の子好きなキャラだったから稽古場で毎回、勝手に口説き文句を言ってました。
 そうしたら演出家さんにおもしろがってもらえて、そのまま採用になって、さらに幕が開いてからは日替わりになって、ついにはDVDの特典ディスクに全収録されました。
──すばらしい!
和合:DVDリリースイベントのファンミーティングでも和合は森山が連れてきた友だちみたいな存在、と言っていただけて、うれしかったです。
──8月の舞台「若様組まいる」で演じた静岡組、牧忠行がほとんど話さないのに、恐ろしく存在感を放っていました。
和合:あのときも台詞がほとんどなかったので、稽古場でどう印象を残すかすごく考えました。それで、たまに言う台詞をめちゃくちゃ良い声で言ってみたらすごく受けて……でも、だんだんみんな慣れちゃって、そのうち誰も笑ってくれなくなったんですが(笑)。ただ、やっぱり演出家がおもしろがってくれて「牧は美味しい役だから」と、気付いたら飛び道具のような存在になっていました。
 忍者の役でしたが、僕自身は身体が固くて忍者らしい素早い動きはまったくできなかったのでせめて立ち居振る舞いや台詞を言うときだけはなにか目立とう、爪痕を残そうと思って演じました。
──9月の舞台「おそ松さん on STAGE SIX MEN’S SHOW TIME」でF6、十四松を努めましたが、公演中、F6全員で自主的に集まり練習したということです。
和合:ダンスが苦手でうまく踊れなくて、でもF6の見せ場でもあったので……みんなとの自主練だけでなく、個人レッスンにも通ったり、ダンスの得意な友だちにも助けてもらいました。
──実は努力家……?
和合:あっ、そこは掘り下げないでください(笑)。ただ、デスクワークからこの世界に転職したとはいえ、現場で「できない」というというわけにはいかないから。だから努力するしかないんです。
──改めて、役者はおもしろいですか?
和合:やり甲斐はありますし、手応えもあります。もともとミュージカル『テニスの王子様』といった2.5次元の文化は知っていたので、そういった舞台に立てることは興味深いし、クリエイターとしての自分も大切にしていているので、自身の創造力も役立つと気付きました。
 もともと企業マスコットを考えたりとイラストも描いていて、今も誰に見せるというわけでもなくいろいろと描いています。養成所を卒業するときも自分をアピールするために、誰も僕を表紙にしてくれないから(笑)、勝手に月刊『WAGO』という撮影もレタッチも編集も全部自分担当、みたいな冊子を作って提出したりして。ここは礼儀作法と言ったことも含め、社会人やクリエイターのスキルがすべて無駄にならず活かすことができる世界なんです。
──職種を変えて、異なる世界に飛び込んだつもりが、地続きだった、と……お話を伺っているとかなり自分がお好きな方でしょうか……?
和合:いえ、ちがいます。あえて言うなら「自分研究家」です。僕、特技に「自撮り」ってあるんですが、これもセルフプロデュースの一環として、いかに自分がかっこよく映ることができるか?の鍛錬です。
 だって、どこから撮られてもかっこよければそんな努力は必要ないですから。でも、僕は自分がそうでないことを知っているので、だったらどうしたらいいのかをプロデューサーの立場からも考えることは大切だし、必要なことだから。なので、どの現場でも爪痕を残してやろうと思っているし、どう残せるかを一生懸命考えます。ああ、だから、そういう意味では自分が好きです。「自分が自分のファンであれ」と常に思っていますから。
──その客観性と自己演出と欲と努力が「和合真一」を構成している……と。貴重なお話を伺いました。
和合:秘密を明かしてしまいましたね(笑)。まあ、いつもなんかヘンな人扱いをされていますが、実はこんな一面もあります。でも、これも嘘かもしれません。
──確かに、今日「は」です(笑)。そんなご自身が、2017年1月から舞台『私のホストちゃん REBORN』に絵空として出演します。「絵空事」という単語の意味も含めて、すてきな名前です。
和合:ゼロから作り上げることができる役なので、今から楽しみです……と言いつつ、以前にWeb配信された新人ホストオーディションや2.5次元フェス(仮)の登壇で、すでに絵空はできあがっていて、和合そのまんまだと言われていますが(笑)。
 ただ、11月に主演した「LDKミディアム」という舞台では、等身大のごく普通の大学生で、でも実は……という役を演じて、事実が明かされるまではモノっぽく居て、でも最後は喪失感に心を爆発させる、という流れを作るのが難しかった。普通の役と飛び道具としての役はちがうと実感したし、その振り幅がおもしろいと言っていただけたので、それらを演じ分けられるような役者になりたい。なので、これから稽古に入って、そこからどんな絵空を作っていけるのか……今から楽しみに待っていてください。絵空事で、酔わせます(笑)。

 

2016年12月初め、都内収録。撮影/和合真一 取材/おーちようこ

特技「自撮り」とのことで、今回の記事は和合真一さん撮影による、自主セレクトをお届け。

saizenseki/wago01

saizenseki/wago02

 

和合真一:1986年9月13日。取材時30歳。東京都出身。
事務所プロフィール: http://www.wintarts.jp/profile/wago/

映像制作ほか、すべて和合真一による「伊勢大貴/I’ve Been Working on the Railroad」: https://youtu.be/wa7JgirBlz4

 

舞台『私のホストちゃん REBORN』

 公式サイト http://www.hostchan.jp/

【東京公演】1月11日(水)〜1月22日(日) サンシャイン劇場
【大阪公演】1月28日(土)・1月29日(日) 森ノ宮ピロティホール
【愛知公演】2月1日(水)・2月2日(木) 東海市芸術劇場 大ホール

 

舞台『私のホストちゃん REBORN』

PAGE TOP