三浦涼介✕鳥越裕貴✕平野良 狂い咲きと乱れ散りver.で狂乱 舞台「桜姫東文章」千穐楽アーカイブ付き配信!
「桜姫東文章」は四世鶴屋南北の傑作で、文化14年(1817年)の初演以降、現在まで上演され続ける歌舞伎狂言だ。このほど、CCCreation企画製作で舞台化。七幕九場にも渡る本作をオールメイルで、異なるふたちの世界をまとい上演。
本日、千穐楽を迎える……が、アーカイブ付きで配信があるので、この空間を堪能してほしくて、レビューと写真、プロデューサーインタビューをここにお届けする。
「狂い咲き」より
「乱れ散り」より
描かれるのは、17歳にして見知らぬ男の子どもを身ごもり、父と弟を殺され、出家を決意する吉田家の桜姫(三浦涼介)が辿る、数奇な道行き。その桜姫を、かつて心を通わせた稚児の白菊丸の生まれ変わりと信じる、僧の清玄(平野良)。吉田家への陰謀にも関わりを持つ悪党の釣鐘権助(鳥越裕貴)。彼らを中心に、姫と周りの者は巡る因果にとらわれていく。
なんといっても桜姫を演じる、三浦涼介が恐ろしいほどに美しい。狂い咲く洋装も、乱れ散る和装も、艶やかで華やかで。指のその先、爪にまでも情念が宿り、己の想いを朗々と歌い上げる姿から目が離せない。身勝手に桜姫を想い、壊れていく平野良はどこまでも情けなく、けれど切なく。ひょうひょうと悪事を重ね酷薄に笑う鳥越裕貴が最高に非道くて、ぞくぞくする。
「登場するすべての人に人生があり、それらが垣間見える舞台にしたい」
それは、本作を手がける宮本茶々プロデューサーが大切にしていることだ。だからこそ、忠義を尽くす者、捧げる者、奪う者、企む者、寄り添う者──登場する者すべてが舞台上で生きている。
客席を大胆に花道が貫き、荘厳な教会を思わせる静謐な空間のなか、暗転のたびに、くるくると場面が変わり、まるで劇場ごと物語世界に取り込まれたかのように酩酊する、まさに「狂乱」の二時間にどうか、溺れてほしい。
舞台「桜姫東文章」
https://www.cccreation.co.jp/stage/sakurahime/
LIVE配信チケット発売中!
イープラス https://eplus.jp/sakurahimeazumabunsho/
ライブ配信日:千穐楽 5月10日(水) 狂い咲きver. 12時〜/乱れ散りver. 16時半〜
視聴チケット:3900円(税込) 7日間アーカイブ付
視聴チケット舞台写真入りアフターパンフ付き:5900円(税込) 7日間アーカイブ・パンフ後日配送付
本作のプロデューサーにお話を伺った。
「自分が観たいものを創りたい」
宮本茶々さんインタビュー
テレビ衛星放送で放映されていた舞台映像を見たのがきっかけで、演劇という文化を知り、この世界へと足を踏み入れた。2016年に自身初の企画作品初プロデュース作品『絵本合法衢』を手がけ、2018年の『東海道四谷怪談』に続き、今回の『桜姫東文章』と、鶴屋南北三部作を企画、上演。
観たいものを創る。
その想いから生まれる舞台は、独特の世界と空間を湛え、観る者を引きずり込んでしまう磁場となる。
取材・文/おーちようこ
──2016年『絵本合法衢』は「花組芝居」主宰の加納幸和さんが脚本化した鶴屋南北の狂言を「劇団鹿殺し」代表の丸尾丸一郎さんが演出。佐藤流司さん、鳥越裕貴さん、小野一貴さん、井之脇海さん、土屋神葉さんといった若手俳優が挑む、といった意欲作でした。
(当サイトでは稽古場レポとコメントをお届け)
当時、砂岡事務所プロデュースという形で、初めて舞台を作る機会をいただきました。そのときに、自分が観たいものを、好きな方々に創ってほしい……と考えて、企画したことが始まりです。その後、2018年に『東海道四谷怪談』を演ったときに、次は『桜姫東文章』にしよう、と決めました。ただ、コロナ禍になり少し間が空いてしまいましたが、今回、実現できてよかったです。
──座組の成り立ちを伺います。
まず、桜姫をどなたに演じていただくかを考えました。誰でもできる、という役ではないし、求められるものがものすごく大きいので。そうしたら、三浦涼介さんという、ふさわしい方に出会えました。これは私の解釈ですが、この物語は桜姫の悲劇というよりも、桜姫という存在のために翻弄されていく人々の物語だと感じていたので、どんなに堕ちても何者にも汚されない気高さがある……そんな方にお願いしたかったんです。
平野良さんは2018年の『東海道四谷怪談』に出ていただいて、とても力のある役者さんだと感じていたので、今回も是非、ご出演いただきたいと思っていました。ただ、前作は悪人である民谷伊右衛門だったので、あまり演っておられない役で観たいと考えて、嫉妬に歪み苦しむ清玄をお願いしました。
鳥越裕貴さんの釣鐘権助は『絵本合法衢』と同じく悪役ではありますが、経験を重ねた今だからこそ演じられる悪い男の色気というか、あらがいがたい魅力みたいなものを観せてほしい、と思い、再度、ご出演いただきました。
──他に配役でのこだわりは?
桑野晃輔さんの粟津七郎、井阪郁巳さんの入間悪五郎です。桑野さんは忠義に厚く愚直な七郎とともに三幕目に登場する16歳の小雛も演じていただいていますが、これが実に愛らしくて。井阪さんは人柄の良さがにじみ出ているからこそ、井阪さんならではの悪い役になったと感じています。
これは、他の作品でも考えていることですが、その俳優の観たことのない姿を舞台で観たいんです。その結果、演じる上で負荷をかけてしまうこともありますが、そこも丸ごと、楽しんで、未知の姿を届けてもらえたら、と思っています。
──さらに歌っていました!
「桜姫東文章」はこれまでも多く上演されていますのでCCC独自の見せ方を取り入れたかったのと、鹿殺しの丸尾さん演出ですので「歌だなと」。ただ、歌劇にしたかったわけではないので、ここぞ、という場に入れたくて、相談して5曲になりました。歌詞は丸尾さんに託しました。丸尾さんの言葉の感覚が好きで、今回の「狂い咲き」と「乱れ散り」もご提案いただき、狂うと乱れるで「狂乱」って、ピッタリだなと、と決めました。
──信頼関係が伺えます。演出を依頼されるときのこだわりはありますか?
もう、ほとんど丸尾さんにおまかせしています。ただ、毎回、脚本の加納さん、丸尾さん共通してお願いしている事がひとつだけあるとしたら、狂言にある七幕九場のどこも削りたくない、ということです。どの場面も落とさず、でも2時間で収めてほしい、という無理難題をお願いしています。
──なぜでしょう。
そこに書かれているからです。必要だから書かれているわけで、それを勝手に削りたくはないんです。もともと登場する人々すべてに思惑があり、それらが絡まり破滅していく……といった群像劇が好きなので、どうしても暗い作品を選びがちなんですが(笑)。
でも、これは私のこだわりで、すべての舞台がそうあるべきとも思っていません。ただ、自分が作るからには自身が納得の行く形にしたい。だから毎回、これが最後かも、と思いながら企画しています。
──そうして生まれた舞台にいつも、魅了されます。
だとしたら、それは、参加してくださっているすべての方々のおかげです。演劇は脚本、演出、美術、音楽、照明、衣装、メイク、ロビーも含めた全てのスタッフ、それから俳優、客席の方々が創る空間です。常に自分が観たい世界を創っていますが、それを愉しんでもらえたら嬉しいです。
2023年5月 劇場にて収録
CCCreation最新情報
舞台「桜姫東文章」 5月3日(水)〜10日(水) スペース・ゼロ
原作:鶴屋南北 脚本:加納幸和(花組芝居) 演出:丸尾丸一郎(劇団鹿殺し)
舞台「沈丁花」
2022年12月16日(金)〜20日(火)KAAT神奈川芸術劇場〈大スタジオ〉
公演DVD製作中
リーディングシアターvol.3「RAMPO in the DARK」
2022年6月22日(水)〜26(日) 全9ステージ公演Blu-ray 一般販売中