残すは水野朋子のみ!? 熊田、伝兵衛に続き「熱海殺人事件」バトルロイヤル50’s 大山に挑む多和田任益さん登場。

2023年夏、紀伊國屋ホールで幕を開けるのは、戯曲誕生から50周年を迎える『熱海殺人事件』。1973年の発表以降、翌年1974年に岸田戯曲賞を授賞した本作は多くの舞台人に愛され、今なお上演され続けている。
その長きにわたる歴史をつむぐ役者のひとり、多和田任益さん。2017、2021年に熊田留吉、2020年には木村伝兵衛を演じ、今回、犯人・大山に挑む。

振り返れば、節目、節目に
つかこうへい作品がありました

──登場人物4人のうち、今回の大山で三役を制覇します。

光栄です。ただ、絶対に演りたかった、というよりも、50周年を迎えた今年、縁があって機会をいただけたという感じです。ずっと紀伊國屋ホール『熱海殺人事件』をプロデュースされている岡村俊一さんに「多和田ならできる」と言っていただけて。そう言っていただけるなら、ぜひ、と決めました。

──その、つかこうへい作品との出会いはいつでしょうか。

初めて出演したのは、2015年1月のgmk project 第一回公演『新・幕末純情伝』です。武田航平さんを始めとする、共演者の方々にものすごく助けていただきました。観客として衝撃を受けたのは、翌月2月の『つかこうへいTriple impact 「いつも心に太陽を」』です。いずれも前の年にミュージカル『テニスの王子様』2ndシーズンの手塚国光役を卒業したばかりで、自分にとっての舞台経験が少なかったときに、未知の世界に驚きました。
「いつも心に太陽を」は柳下大さんと高橋龍輝さんのW主演だったのですが、「すごい人たちがいる……」と圧倒されたので、今回、熊田役の高橋さんとの共演が叶って稽古場ではわくわくしています。伝兵衛役の池田純矢さんは『PSYCHO-PASS サイコパス Virtue and Vice』でご一緒していて、本番になってからもさらに爆発し変化する役者だと感じているので、稽古場からぶつかりたいと思っています。三浦海里は4年前にドラマで初めて一緒になって、2021年『新・熱海殺人事件』でも共演しましたが、すごく可愛いヤツなんです(笑)。北野秀気くんは初めましてなのですが、僕が稽古参加できなかった前半から大山としてガシガシ進んでくれていて、とても頼もしかったので、本番を観るのが楽しみです。
そして、あっちゃん!(荒井敦史)とは……初共演した2020年3月『改竄・熱海殺人事件 “ ザ・ロンゲストスプリング ”』以来、コロナ禍のために千穐楽まで完走できていないんです。だから、今回こそは一緒に最後まで駆け抜けたいです。

──そんな自身は2020年8月、突如、エンターテインメント集団「梅棒」への新規加入を発表、驚きました。

確かに、周りから見たら、いきなりに見えたかもしれません(笑)。でも、これもご縁あってこそです。その前から客演で出させていただいて、ものすごく楽しくて、もっともっとご一緒したいな、と思っていて。でも、役者の客演はすぐにリピートされることが少ないだろうな、と考えたときに、踊ることも好きだったので思い切って加入を申し入れました。
これも絶対に入りたい、という悲壮な覚悟ではなくて、まずは素直な気持ちを伝えてみよう、それでダメでも、この思いを言えたことで気が済むだろうな、という感覚でした。でも、相談したら快く受け入れていただけて、ものすごくうれしかったです。

──飛び込める、ということができるようになった?

確かにそれはあります。なんだろうな……失敗を恐れなくなった、というか、ダメならダメでいいか、と思えるようになったというか。もともとすごい怖がりだし、慎重だし、ずっと、いつか役者の仕事がなくなってしまうかもしれない、と不安で、コンプレックスの塊だったんです。
でも、だんだんと、まあ、やってみたらいいんじゃない、って思えるようになって。改めて、今、話していて、この数年でそこは大きく変わったところだと自分でも感じています。

──それだけ、たくさんの経験を積まれてきたということではないでしょうか。役者として、振付師として、さらに好きなことを語る動画配信といった、肩書にとらわれない「多和田任益」という地図が広がっている印象があります。

すごくありがたいことに、それは他の俳優仲間にも言われることがあって。「好きなことを仕事につなげているのがすごい」と。ただ、僕自身はなんでもかんでも仕事にしたい、というわけでもなくて。興味があることを追いかけていくなかで、いろいろとつながっていって今がある、という感じです。
だからもし、僕が好きなことを仕事にできているように映るとしたら、それはとてもうれしいことだし、なによりも「多和田はこれが好きなんだ、じゃあ、やらせてみよう」と思ってくださる方々のおかげで、とても恵まれていると感じます。

──そこは自身が、実直に求められることに応えているからかと。「梅棒」としても今年6月、舞台「マッシュル-MASHLE-」で「振付」として参加しました。私的に多和田さんの外部公演初振付は、21年6月の改修後初の紀伊國屋ホール『新・熱海殺人事件』と記憶しています。演出の中江功さんの無茶振り(笑)で全員のダンスシーンを作っていました。

そう! 懐かしい(笑)。あれ、稽古場でいきなり言われたんですよ。それで急遽、自分でスタジオを借りて作りました。そう思って振り返ると『熱海殺人事件』はいろいろな機会を与えていただいています。そもそも、初めて熊田役で出演した2017年2月『熱海殺人事件 NEW GENERATION』も事務所を移籍したばかりのときにお話をいただいて。ある意味、節目、節目で、つかこうへい作品に出会っているように思います。

──改めて、今回の稽古場はいかがでしょうか。

これまで、熊田、伝兵衛と演じてきましたが、それぞれの熊田があり、伝兵衛があるので、僕も僕なりの大山を作ろうとしています。ただ、実は想像以上に大山はキツイです。後半の爆発する場面に向けて、ためて、ためて、あとはずっと爆発し続けることが意外と大変で。これは新たな発見でした。さらに今回は水野と伝兵衛が異なる日もあるので、役的にも、体力的にも挑戦です。

──今回、プロデューサーで演出の岡村さんとともに、総合演出にフジテレビエグゼクティブディレクターの河毛俊作さんがおられます。

河毛さんは時間を作ってはほぼ毎日稽古場に来てくださって、僕らの稽古を見てくれていて、学ぶことがたくさんあります。映像作品を多く撮られているからか、岡村さんとは異なる視点で役を紐解かれるので、今、必死に向き合っています。河毛さんのなかに「こういうふうに見せたい」という確固たる画があって。でも、それを僕らに押し付けるのではなく寄り添ってくれたうえで、どうするか? を一緒に掘り下げてくれるんです。
例えばセリフを言うときに、僕らは自分が発するときの気持ちを作りますが、河毛さんは言われたほうの気持ちを考えて、その瞬間、どんな表情をするのか? といったことから気持ちをすくい上げてくれる。そのうえで「俺はこういう構図で見せたいんだけど、その顔は客席から見えないから、ここに移動したい」といったことも伝えてくれるんです。
すべてに意図があって演出してもらえるので、だからこそ理解が進む、というか。それはセリフひとつに対しても同じで、だから今回の『熱海殺人事件』はところどころ、かなり細かく変わっています。Wキャスト、トリプルキャストと座組の分だけいろいろとちがっているので覚えるだけでも大変ですが(笑)、やりがいもあります。

──50年前に上演された『熱海殺人事件』の戯曲からも、そんなふうに変わりながら、上演され続けているのではないでしょうか。それが歴史の1Pとなっていく、と。

だとしたら、誇らしいことです。岡村さんも「おまえたちが歴史を作っていくんだ」と言ってくださっていて。いつか、僕らの『熱海殺人事件』を観ました、という役者が現れてくれたら、この作品の歴史のなかで先輩方からバトンを受け取り、次世代に渡せることができた、と思えるのかもしれません。

──そして、先日の公開取材でもコメントされていましたが、残すは登場する4人のひとり、ヒロインの水野朋子婦人警官のみです!

僕、水野を演るなら、あっちゃんの木村伝兵衛、って決めているんです(笑)。僕の水野を見たいと言ってくれるし。ただ、この役も、絶対に演りたい! というわけではなくて。縁があったら、おのずと機会は訪れるんじゃないかな、と思っているので、そのときをお楽しみに。
今、僕ら9人で、この50周年記念公演の初日に向け、日々、『熱海殺人事件』と向き合っています。これまでの歴史に恥じないような、僕らだけの『熱海殺人事件』を届けるので、待っていてください。

2023年7月 都内稽古場にて収録。
ゲネプロ撮影・取材・文/おーちようこ

当サイト掲載の多和田さんインタビュー記事を改めて、ここに。

多和田秀弥インタビュー/ぼくらが非情の大河をくだる時-新宿薔薇戦争-|Theater letter 11

「改竄・熱海殺人事件」モンテカルロ・イリュージョン。怪優・阿部寛に続き木村伝兵衛に挑む、多和田任益の覚悟

「ちゃんとここで待ってるからね」多和田任益 スペシャルロングインタビュー。俳優、10年目の今、想うこと。

 

50周年記念特別公演
熱海殺人事件 バトルロイヤル50’s

作:つかこうへい

総合演出:河毛俊作

演出:岡村俊一

出演:
木村伝兵衛部長刑事
荒井敦史・池田純矢
婦人警官水野朋子
新内眞衣(スタンダード公演)
佐々木ありさ(エキサイト公演)
小日向ゆか(フレッシャーズ公演)
熊田留吉刑事
高橋龍輝・三浦海里
犯人大山金太郎
多和田任益
北野秀気(フレッシャーズ公演)

会場:東京・紀伊國屋ホール
公演期間:2023年8月4日(金)~8月20日(日)

各出演スケジュールなど、詳細は公式サイト まで。

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