朗読劇「よるのこえ」出演、『アイとアイザワ』W主演・アイザワ役で初座長に挑む、龍人の「今」

『アイとアイザワ』W主演・アイザワ役を目前に控え、10月には『ミュージカル「忍たま乱太郎」第11弾 忍たま 恐怖のきもだめし』平滝夜叉丸役にも挑む、龍人(りゅうと)さんが登場。演じることに憧れて、思い切って飛び込んだ世界で、実直に一歩、一歩、経験を積んでいる。

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23歳、会社員から俳優へ
本番の舞台の空気の熱に魅せられる

 

──この世界を目指したきっかけを伺います。
龍人:岡田准一さんが主演のドラマ『SP 警視庁警備部警護課第四係』(2007年)を観て、漠然とかっこいいなあ……と思ったことがキッカケです。
 ただ家がけっこう厳しくて、なかなか言い出すことができずにいました。ですが、まずは就職して、自分の責任が取れるようになってから、この世界に入ることを両親に相談しました。それで現在の事務所のオーディションを受けました。
──そこで、実際に俳優の道を踏み出すことがすてきです。
龍人:いや……でも、このオーディションはアーティスト対象で、実は僕、落ちてしまって、準合格みたいな感じで声をかけていただいて。
──え?
龍人:でも、俳優に向いているかもしれない、と言っていただいて、そんなふうに思っていただけるなら、俳優としてがんばってみようと思いました。なので、実は僕、事務所所属俳優、1号なんです!
──その一歩がとても貴重かと。
龍人:ただ、僕自身は本当に憧れていただけで、演技の経験もありませんでした。だからレッスンを受けながら、事務所に所属していたんです。
 でも、2016年、いきなり下北沢の本多劇場に立つ機会をいただいて……まったくの新人として参加させていただいたので、ものすごく厳しく指導していただいて。改めて感謝しています。
──実際に舞台に立って発見はありましたか?
龍人:大変でしたが、ものすごく楽しかったです……! 実際に幕が開いてからの、先輩たちの熱がすごくて……稽古場と比べての、お客様が入った空間での演技がすごくて、演じることが楽しくて、僕も力をもらいました。
 終わってからも劇場ロビーでお見送りとか少し挨拶に参加したんですが、そこで、初舞台だった僕にも声を掛けてくださる方がいて……ああ、この仕事を続けていきたい、と思いました。
──覚悟を決めた?
龍人:はい。実は事務所に所属してからも、半年ほど会社員も続けていたんです。でも、俳優一本で生きていこうと決めて、辞めることを伝えました。そのときに黙って辞めると伝えるのも申し訳なくて、俳優を目指します、と近い上司にだけ伝えたら「がんばれ」と言って送り出していただきました。
 家族も大人として考えて決めたことなら、と背中を押してくれて。もともと姉がアニメや漫画好きなので、すごく喜んでくれました。
──すてきです。それはご自身が信用をつちかってこられたからだと思います。ところで、特技に「チェーンソー」と一言、あるのが気になります。
龍人:あー……これ、2つの意味があって、チェンソーの音真似ができる、っていうのと……実は祖父が林業をやっていて。幼いころから父に連れられて山に入っていたので実際にチェーンソーを扱えるんです。本当に危ないのですごく厳しく教わっていて、今でも木を切り倒すことができます(笑)。
──すごい! そういった経験のすべてが役に立つのが、俳優という仕事かと。
龍人:だといいな、と思います。実は自宅待機の間も身体がなまらないよう、早朝、外を走って縄跳びして、一人だと殺陣の練習ができないから素振りして……と何かしら、できることをやっていました。
 後はモデルガンを買って、指でくるくる……って回して構える、っていう練習をやっていました。銃を扱う役が来たときには披露したいです!

 

AIとして感情を出さずに、けれど思いを伝える葛藤
十代の好奇心と記録したいという衝動との葛藤

 

──現在、初のW主演となる『アイとアイザワ』の稽古中とのことです。視界に入る情報を瞬時に記憶するカメラアイを持つ女子高生・アイが、自我を持ってしまったAI・アイザワと出会い、互いの孤独に気付き手を取り進む物語です。
龍人:今、このような状況の中、幕が開くこと、そして舞台に立てることに感謝しています……。今、稽古は人数を制限してマスクを付けて行っているので、相手の表情がわからない、という難しさはあります。
 ただ、僕はAIという存在なのであまり感情を出さないので、むしろその方が自分を制御できるというか……でも、全部が無機質、というわけでもなく。そのバランスが難しくて、AIのアイザワがどう変わっていくのかを見せたいです。初のW主演で、座長として立たせていただいていますが、座長だからさらにがんばる……というより、常に全力なのは当たり前で、臨んでいます。だからこそ立ち稽古までには台詞を全部入れるとか、役と誠実に向き合う姿を見せることで、心意気を伝えたいと思っています。
──あわせて、昨年出演された『アリスインデッドリースクール少年』が上演一周年を記念して、7月3日17時まで無料配信中です。作品の舞台は屋上というワンシチュエーションで、ある日、死体が蘇るゾンビパンデミックが起こり、日常が一変した世界で19人の少年たちがそれぞれの選択をする物語です。
龍人:僕が演じたのはキリト(橙沼霧人)というカメラ小僧の役で、ほとんど出ずっぱりでしたが、舞台上に居続ける役はものすごく楽しかったです! 役として居続けることもおもしろかったし、なにより同年代の俳優や先輩方と一緒の舞台に立つことができてすごく刺激をいただきました。
 周りが、わっ、と騒いでも、カメラを回し続ける、という役だったので、十代の好奇心と、でも、この瞬間を記録したい……と思う感情をどう表現するかを考えていました。
──『アイとアイザワ』に続き、少女文学館✕俳優✕最善席 朗読劇「よるこえ」に出演されます。
龍人:朗読は初めてですが、ありがたいことに声がいい……(自分で言って照れる)と言っていただくことが多いので、わくわくしています。『アリスインデッドリースクール少年』の浅野泰徳さんが演出で、共演したみんなと会えるのもうれしいので、楽しい時間を届けたいです。
 10月には、今年5月に中止となった『ミュージカル「忍たま乱太郎」第11弾 忍たま 恐怖のきもだめし』上演も発表になりました。長く続いている作品に、平滝夜叉丸として出演できることが改めてうれしいし、この作品ならではのアクションもずっと稽古をしていたので、届けられることに感謝しています。
──最後に一言、お願いします。
龍人:これまでの僕を観ていてくださる方には、今、こうやって、いろいろな舞台に立てているのは、応援してくださる方々がいてくださるからです。ありがとうございます。今回の記事で僕を知ってくださった方には……初めまして、龍人です。あまり器用ではないので、ゆっくりですが一歩ずつ、忠実に役と向き合っていくので、いろんな作品でお会いできたらと思うので、観てください。

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龍人(りゅうと)

1993年1月26日生まれ。
2017年に舞台デビュー。2019年『アリスインデッドリースクール少年』橙沼霧人役、2020年7月『アイとアイザワ』W主演・アイザワ役、10月『ミュージカル「忍たま乱太郎」第11弾 忍たま 恐怖のきもだめし』平滝夜叉丸役など。
【龍人Twitter】@hb_ryuto
【Instagrum】star_ryuto

取材・文/おーちようこ

『アイとアイザワ』

2020年7月4日(土)〜12日(日)
池袋シアターグリーン
公演情報・チケットなどはこちらへ。

20200702_裏表紙

20200702_表紙

 

 

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