大切なものはすべてこの手で燃やしてきた──完売公演、舞台「白蟻」コメント到着。交互配役初日、千秋楽公演、配信中

レポ＆インタビュー

2024.6.9

僕たちは正しい。
今はこれ以上、正しいことが見つけられない。

真っ黒な空間にチカチカと灯りが明滅し、白い衣装の人々が舞う、いや、蠢く。
楽隊による生演奏で、音が重なっていく。
ここは、何処だ？

舞台は令和６年、2024年。一週間しかなかった、1989年、つまり昭和64年1月1日生まれの、櫛本悟（平野良・多和田任益）はまごうことなく天才だった。それこそ、たった数年で人類の生活を丸ごと変えてしまうほどの、AIを開発したのだから。

彼が作ったtermite（ターマイト）社のAIを搭載したアンドロイドは、瞬く間に人々の生活に馴染み、スマホのように、電子レンジのように、洗濯機のように、掃除機のように、なくてはならない存在となった。
が、しかし──それは終わりの始まりだった。

物語の軸となるのは、同じ高校で第108回生徒会役員を務めた、4人の先輩と後輩。
一人は葬儀屋の家に生まれた勢堂直哉（平野良・多和田任益）。
一人は寺の家に生まれた新渡戸淳（松島庄汰）。
一人は医者の家に生まれた木葦恭介（谷戸亮太）。
家業を継いだ三人で、看取って、焼いて、弔い、また誕生に立ち会う、輪廻転生が完結する、と医者は笑う。
唯一、害虫駆除の家に生まれた櫛本悟は家を継がなかった。

人の生き死に関わる者とただ、ひたすら殺すことを使命とした者。
果たして、本当に必要なのはどれ、か。

公演期間わずか4日間、7回公演。その前評判の高さから、早々に完売となった本公演を「観たい」という声に応えて、現在、交互配役それぞれの初日と千秋楽公演を７日間アーカイブ付きで配信中。
千秋楽を終えた本日、作・演出の堀越涼さん、櫛本悟・勢堂直哉を演じる平野良さん、多和田任益さんからコメント到着。

堀越さんから、平野さん、多和田さんへの一言。

堀越　平野さんは、大変に達者な役者さんで、非常に頼りになります。多くを言わなくても、僕のやりたいことを察して、体現して下さる稀有な役者さんです。流石の演技力ですね。
多和田さんは“演劇神経”が良い、というか。オーダーに柔軟に、且つ、勇気を持って飛び込んできて下さるので、とても有難い存在です。お二方ともに、ベースに主演としての華があるので、しっかり物語の骨組みを支えて下さいます。

平野さんから多和田さんへ一言。

平野　番組ではご一緒させて頂いたことはあるのですが、共演は今までになく、ずっと一緒に演じてみたいなと思っていた多和田さん。

念願のたわちゃんです。

私は別現場があり、途中からの稽古合流となってしまい、とても気が気じゃなく焦る気持ちばかりだったのですが、たわちゃんが笑顔で「やっときたー」と緊張をほぐしてくれて本当に助かりました。その後もついていくのに必死で頭を抱える稽古の日々でしたが、そっと近づいてきて励ましてくれた。年齢は10才ほど違いますが尊敬しています。

多和田さんから平野さんへ一言。

多和田　ダブル主演で交互配役は僕にとって初挑戦で、その挑戦を10歳年上で役者としても大先輩である平野さんと演らせていただけるのは贅沢なことと思っています。それと同時に、これまでの経験値を全てぶつけないと置いて行かれてしまうと緊張しながら稽古に入ったのですが、入ってみたら平野さんの稽古合流が待ち遠しくて、ご一緒させていただくことが楽しみな気持ちの方が大きい自分に気づきました。
実際に稽古場で本当に優しい空気で壁を感じさせない人柄の平野さんに何度も救われる気持ちになりました。役の演じ分け、演出に応える姿勢、沢山勉強になっています。改めて、この挑戦を平野さんと一緒にできて幸せだなと感じています。

配信をご覧になる方々へ向け、一言。

堀越　一風変わった世界観の物語ですので、初めは戸惑うかもしれませんが、ストーリーに身を任せて頂ければ、いずれ対岸まで辿り着くような作劇になっています。思い切って、飛び込んできて下さい。

平野　多和田さんとダブル主演にして交互配役。ギュウギュウに詰まった稽古でした。1秒1秒に演出の堀越さんのこだわりや愛が散りばめられています。役者、スタッフ一丸となって作り上げた今作を存分に味わっていただけたら幸いです。

多和田　この作品は演劇を浴びる作品として触れてほしいですし、演出はもちろんのこと、そもそもの脚本がとても面白く、この物語が多くの方の心を揺さぶり、残っていくものと思っています。だから全7公演というあっという間の公演期間ですが、配信を通してこの作品を沢山の方に共有できることが嬉しいです。是非とも両バージョンを観ていただいて、作品が深く刻まれることを願って舞台に立ちます。