ROCK READING『幸福王子』レビュー。スズカツ✕ジャニーズJr.✕オスカー・ワイルドが問う「幸せ」とは?

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幸福な王子は幸せだったのだろうか?
これは個人の、物差しを問う、物語


明治時代にあたる1888年に書かれたオスカー・ワイルドの短編「幸福の王子」を題材に、スズカツこと鈴木勝秀氏がアレンジ、上演台本・演出した本編。
物語の展開はそのままに、王子(本髙克樹・7 MEN 侍/ジャニーズJr.)とツバメ(今野大輝・7 MEN 侍/ジャニーズJr.)の会話と彼らの選択と心のゆらぎが照明、音楽、歌声、楽器、ときに囁き、ときに叫び声で伝えられる。
もちろん、原作を知らずとも十分に楽しめる内容だ。

ステージ真ん中に輝く冠をかぶり、金のジャケットを羽織ったマネキンが佇む。
その周りには生演奏のための楽器の数々。
そして机と椅子。
机の上には水の入ったさまざまなペットボトルが光を反射しながら並ぶ。これは『喜びの歌』といった作品にも登場、舞台上でゆらゆらと煌めく。
作中で披露される歌詞はすべてスズカツ氏が、作曲は舞台上で生演奏を披露する大嶋吾郎氏。
王子とツバメが、それぞれに己を揶揄するような歌詞が刺さる。

描かれる世界は原作通り。
幸福の象徴として飾られた王子。両目はサファイア、剣の柄にはルビー、そして黄金の全身。しかし、そのなかでは王子の心が宿っていて、ただ眺め続けるしかない人々の営みの愚かさを哀しんでいた。

なにもできない、無力な自分──けれど、そんな彼の元のある日、訪れたのは小さなツバメ。
王子はツバメに頼む──貧しく悲しみにくれる人々に、自身を彩るルビーを、サファイアを、身を覆う黄金を、おまえが外して届けてはくれないか、と。

無垢な瞳でツバメは問う。
なぜ人間は、お金でしか幸せを感じられないのか?
一度だけの手助けではなにも変わらないのではないか?
どんなに王子が望もうとすべての人を助けられるわけではないのに……。

王子は答える。
自分がしたいからやるだけ。
今、この一瞬だけでも笑顔になったらいい。
己の行動の結末が思い通りにはならないと知っている。

そんな王子にツバメは「独善的だ」と言いながらも、そばを離れることができない。
己の心を信じてすべてを捧げようとする王子の幸せはどこか?
翻弄されながらも王子を愛してしまい命まで捧げようとするツバメの幸せはどこか?

「幸福」とはなんだろう?
他者が他者の幸福を決めることはできるのか?
王子とツバメは幸福だったのか?
王子から施しを受けた者たちは幸福になったのか?
幸福とは偽善か独善か自己満足か哀れみか?

かくして、あれだけ台座から己の両足が自由になることを望んでいた王子が、台座から離れる瞬間が訪れる。廃棄されるために。ゴミ捨て場で、ほんの一瞬でも王子とツバメが一緒に居られたことは「幸福」と言えるのだろうか──。

幕開けの最初と最後、王子が観客に向かって痛烈に放つ一言がある。その言葉こそが、今、スズカツ氏が投げかけたい言葉なのかもしれない。

かのシェイクスピアは「演劇は時代を映す鏡である」と大正にあたる1800年代に発表された「ハムレット」で語っている……「Hold a mirror up to nature」(自然に対して掲げられた鏡である)と。演劇がエンターテインメントとしてだけでなく、真実を写し出す鏡であるならば、まさしく本作の題材は時代を超え、2020年、令和を問う鏡ではないだろうか。

カーテンコールの挨拶で、王子を演じた本髙克樹氏が
「難しいお話で、僕らも毎日、発見があります。なにかを考えてほしい」
と語った。
これからのエンタメシーンをになうであろうジャニーズJr.という若い世代が演じる舞台に選ばれた題材にふさわしく、コロナ禍により数多のことが浮き彫りになった「今」だからこそ胸に迫る作品のひとつだろう。

 

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公式サイト https://koufuku-oji.com/

原作:オスカー・ワイルド「幸福な王子」

上演台本・演出:鈴木勝秀

音楽:大嶋吾郎

出演:
本髙克樹(7 MEN 侍/ジャニーズJr.)
今野大輝(7 MEN 侍/ジャニーズJr.)

小川 優(ジャニーズJr.)
内河啓介
田村雄一

公演 日程 会場:
東京 2020/10/24(土)~10/31(土) シアター1010
京都 2020/11/4(水)~11/8(日) 京都劇場
料金 9,000円

詳しくは公式サイトまで。

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