つかこうへいLonely13Blues『蒲田行進曲完結編銀ちゃんが逝く』紅玉いづき、おーちようこ、敬意を込めて

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2022年7月10日、つかこうへい十三回忌を迎える追悼公演として「つかこうへいLonely 13 Blues」と銘打ち、ホームグラウンドである紀伊国屋ホールで『蒲田行進曲完結編 銀ちゃんが逝く』『初級革命講座 飛龍伝』連続公演が決定した。
本日、一足先に幕を開けた『蒲田行進曲完結編 銀ちゃんが逝く』レビューをここに。

2020年、『銀ちゃんが逝く』全力レビューはこちらから。

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十三回忌だから特別なんじゃない
銀ちゃんはいつだって特別なんだ

あるいは、味方良介さんへのファンレター


撮影・文/おーちようこ

『銀ちゃんが逝く』は1980年に紀伊國屋ホールで上演された『蒲田行進曲』の完結編として、1987年に発表された。この作品について『熱海殺人事件』をはじめ、つか作品を守り上演し続ける、岡村俊一氏はTwitterで、こう明かす。

 

蒲田行進曲を書き換えたいと願ったのは、つかさん本人だ。蒲田の評判が上がれば上がるほど「ヤスは良い人で銀ちゃんは酷い人」という一般的評価が広がった。つかさんの中では銀ちゃんが「一番大変な苦労している人」なのだ…「銀ちゃんが逝く」には、その思いが溢れている。

 

だからこそ銀ちゃんの大部屋にいるヤスは繰り返し「銀ちゃん、カッコイー!」叫ぶ。
「だって、銀ちゃんカッコイー! って言いたいじゃない……言わせてよ……」と泣く。

『蒲田行進曲』の先へと紡がれる『銀ちゃんが逝く』は、スタァさんだけではない銀ちゃんも浮き彫りにする。印象的だったのは大好きな銀ちゃんのために死ぬかもしれない「池田屋階段落ち」にヤスが志願する場面。覚悟を決めたヤスに激を飛ばす監督の後ろ「スタァさん」としての矜持が招いたこととはいえ、ヤスを見つめる表情がその心情を伝える。

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今回で、つか作品5度目の共演となる、味方良介さんと石田明さん。その石田さんは会見で「ずっと味方と演りたい、と言っていた作品です」と語り、キャリアも年齢も先輩でありながら大部屋俳優でゴミと罵倒されるヤスとして悩み苦しみ、ときに虚勢を張り弱音を吐く──けれど、その根底にあるのは、いつだって銀ちゃんだ。銀ちゃんが大好きで大好きで、結局は銀ちゃんを優先する。そのことが銀ちゃんにとって、より責任を負わせることになることには気付かない。

そして小夏もまた、銀ちゃんに翻弄されながらも、心奪われている。そう、登場する誰もが銀ちゃんを愛している。銀ちゃんはそのすべてを受け止める。だって、スタァさん、なんだから。

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愛しい娘、ルリ子のために銀ちゃんが大きな決断をくだした刹那。感極まり、テレビ屋あがりの監督は告白する。「銀ちゃんに憧れて、この世界に……」その言葉に銀ちゃんは静かに返す。

「言うな。俺を好きなやつは多い」

本当にその通りでしかない。すべての責任と愛と憎悪と憧れを負い、それでも真ん中に凛と立つのが「スタァさん」なのだ。だからこそ歌舞伎六百年の歴史を持つ「中村屋」金看板の重荷に耐える喜三郎の苦悩を受け止め、生まれと血を呪う弟の憎しみをも受け止める。その一方で、父として幼いルリ子の重い病(やまい)に思い悩む姿も人知れず晒す。戸籍上の父であるヤスにも、母である小夏にも、一切を知らせずに。

その彼がルリ子のために命をかけた、函館五稜郭階段落ち。斬り捨てるのは女優に復帰した小夏。演じるのは、今春に乃木坂46を卒業したばかりの北野日奈子さん。この北野さん、刀を振り抜き、きれいに止める。振り回すのではなく、受け止め返す。小柄な身体のどこにそれだけの力があるのか……という貫禄を披露する。その小夏が、空(くう)に線を引き、ヤスに言う。

「こっからこっちはあたしたちスタァの居場所。あんたたちクズは入れない」と。その誇りを胸に、銀ちゃんを斬る。

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これは、役者という非道い(褒めてます)道を選んだ者たちの物語であり、泥臭く生きて死ぬ人間の物語だ。こんなものを見せられて舞台が好きにならないはずがなく。その板の上に立つ人々を好きにならないはずがなく。ああ、本当に舞台が好きだ……ゲネプロ取材、撮影のためのカメラを構えながら、ぼろぼろと泣きながら懸命にシャッターを切った写真をここに、私の心とともに置いておきます。

最後に。
いやあ、もう、本当にすごいよ! 味方良介! あなたは本当に、何者なのだ。いや、役者なのはわかっているけれど! 初めて観たのは、まさに今日から10年前。2012年7月13日に初日を迎えた、ミュージカル『テニスの王子様』2ndシーズン 青学vs立海の柳生比呂士でした。
5年後の2017年『熱海殺人事件 NEW GENERATION』で24歳という史上最年少の木村伝兵衛部長刑事に挑み、青臭い理想を掲げ、台詞を吐いていた、ひとりの役者が、きらきらと文字通り「スタァさん」として板の上で輝いている。こんなにも幸せなことがあるだろうか……あなたは、まごうことなき、スタァさんです。言わせてください。「ミカティ、かっこいーーー!」

 

紅玉いづき氏から緊急レビュー、ここに到着!

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十二年目の夏のこと
蒲田行進曲完結編 銀ちゃんが逝く

 

文/紅玉いづき 7月10日観劇

 初めて「蒲田行進曲」に触れたのは2020年。つかこうへいを亡くした世界でつかこうへいを知った私は、彼の十三回忌となる命日に、紀伊國屋ホールに座っていました。

 銀ちゃんに会うために。銀ちゃんをおくるために。

「蒲田行進曲完結編 銀ちゃんが逝く」は映画「蒲田行進曲」続編と銘打たれ、「蒲田行進曲」を舞台版として再構築しています。同じキャラクターが、同じストーリーをなぞり、その先へと跳躍する。宇宙に飛び込む。神様を見る。一口にそう言ってしまうと質感が変わってしまうけれど、観客を、地に足つけたまま、奥歯を噛みしめさせて、とんでもない場所まで連れていってくれる物語です。
 それは人間の話であり、その人間達が肉体を削り命を賭けて「奇跡」を起こす話です。
 たった二時間、百二十分に、何人もの人生を凝縮し、時に弾けさせる。キャラクターは誰一人、「一貫しない」という点で、全員が一貫していると思いました。その心情を丁寧に追うことは難しく、暴風雨のごとく吹き荒れる台詞を何度噛み砕こうとしても、物語を知っていても、逸脱するし、時に崩壊する。でもそれが人間だ、懸命に生きる証なのだと私達に突きつけてきます。舞台という板の上で、汗を流し、唾を飛ばし、涙をこぼし、声を枯らして。叫ぶすべての役者が、もう限界だと私達にもわかるのです。その、限界の先を見せてくれようとしてくれているのだと。
 全速力で、息をつく暇もなく、その強烈さは、客席に座っているだけで、目眩をおこしそうなほど。
 二年前、はじめて銀ちゃんを知った私は、その役者としての生き方をただただ眩しく思い、その孤独と、鮮烈さに憧れました。けれどこの2022年、舞台に立つ全ての「人間」の生き様を見ながら、自分の胸に問いかけました。

 果たして、私達は、こんなにも懸命に生きられているだろうか。
 いや、生きている。そう信じたいと私は思いました。そうでなければ、この物語が、こうして胸に迫るわけがないはずだと。

 そして演目が終わり、全力疾走をしたような疲労の中で、7月10日、十三回忌特別公演は、つかこうへいへの献花、そして黙祷──ではない、万雷の拍手によって幕を下ろします。
 私はその日、紀伊國屋ホールの最前列、真っ黒な礼服を着て参列したのです。
 帰り道、急ぐ中央線で席を譲られるほど泣きながら、私は友人にメッセージを送っていました。
「会ったよ」
「私はつかさんに会ったんだよ」
 この、十二年目の夏のことを、私は絶対に忘れません。

 千秋楽を終えた今作、最後にひとことだけ加筆させてください。
 本公演ラストシーンは、小夏のこんな台詞で終わります。

「ここはキネマの天地ですよ。

 願えば、どんなことでも叶うところですよ」

 私にとって、ここが、演劇の天地でした。

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『銀ちゃんが逝く』テレビ放送決定

 https://www.tbs.co.jp/tbs-ch/item/o2696/
TBSチャンネル1
8/28(日) 午後10:00〜深夜0:00放送

十三回忌追悼公演 つかこうへいLonely 13 Blues

 http://www.rup.co.jp/

『蒲田行進曲完結編 銀ちゃんが逝く』
作:つかこうへい
演出:岡村俊一
出演:
倉岡銀四郎 … 味方良介
ヤス … 石田明
小夏 … 北野日奈子
中村屋喜三郎 … 細貝 圭
ケン … 中本大賀(円神)
高橋龍輝
佐久本宝
河本祐貴
監督 … 久保田創

会場:紀伊國屋ホール
日程:2022 年7 月8 日(金)~7 月18 日(月祝)
料金:8,500 円(全席指定・税込み)※未就学児入場不可

『初級革命講座 飛龍伝』
作:つかこうへい
演出:岡村俊一
出演:
高橋龍輝
吉田智則
佐々木ありさ
久保田創

会場:紀伊國屋ホール
日程:2022年7月23日(土)~7 月25日(月)
料金:6,500 円(全席指定・税込み)※未就学児入場不可

提携:紀伊國屋書店
制作:つかこうへい事務所
企画・製作:アール・ユー・ピー

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