高橋由美子主演『時子さんのトキ』出演の鈴木拡樹が語る、役について、演劇についての「今」

 高橋由美子さん主演の『時子さんのトキ』。本作で高橋さん演じる時子さんが、請われるままに多額のお金を貸してしまう路上シンガーの翔真を演じる、鈴木拡樹さん。果たして翔真の本心は……?
 取材が行われたのは稽古に入って、すぐのこと。取材の部屋に入る人数を制限、除菌にマウスガードと徹底した配慮のもと、行われた。まずは撮影から。シンガーの役ということで、楽譜を手に「独りでいる時」をイメージ。「自分の部屋だとしたら、どんなふうに座っていますか?」という問いかけから始まり、途中、「翔真」を意識して動いてみせてくれたりと、そんなふうに取材は始まりました。

 鈴木さんの言葉と対となる、時子さん役の高橋由美子さんのインタビューもあわせてどうぞ。

 

取材・撮影/おーちようこ

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役として撮られる時
役者として撮られる時

──(撮影しながら)役と自分とでは、撮られる時のちがいがありますか?
鈴木:あー……役を作ることができているときのほうが、恥ずかしくはない、ですね。
──恥ずかしい……俳優個人の取材での撮影も増えているのではないかと。
鈴木:できるだけ……その、自然でいることを心がけたいな、とは思うんですが、難しいんですよね……素のままでいて、映る、ってことができなくて。
──テーマがあったほうが撮られやすいのでしょうか。以前に別の取材で、モデルとして映るなら洋服を見せるように、と。
鈴木:はい。昔、洋服を引き立てる動きや見せ方に興味がありました。でも、いざ「自分」を見せてください、ってなると……うーん。
──そのうち撮る方に興味が湧いたりは……?
鈴木:……僕、機械全般が苦手なので、カメラも無理ですね(笑)。ハマっている俳優さんは多くて、皆さん、すごく勉強されているしこだわりがある。センスも大切なので、すごいなあと思います。

 

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演じられることが嬉しいと
噛み締めているんです

──久々の舞台です。
鈴木:やっぱり愉しいですねえ……こういう事態になったので稽古場もどんな感じになるのかわからなかったんです。「アクリル版の仕切り板越しで稽古」って聞いていたけど想像がつかなくて。ただ、実際に読み合わせに入ってみたら、靴の消毒、手の消毒、アクリル板にフェイスガードと幾重にも準備がしてあって……ああ、こういうことなんだな、と実感しました。なので、稽古に入るまでの準備が大変なんですが、それくらい万全の対策で臨んでいるので、まずは無事、稽古を終えて初日にたどり着きたいです。
 改めて稽古に入ってみて……なんでしょうね……この、ものものしい空気の中でも、みんなと一つの作品を創る、ということがものすごく楽しくて……仕事、ということだけでなく、本当に好きなことをしているんだな、と嬉しく思う感覚がありましたね。
──そのお話を受けて私事で恐縮ですが、ようやく劇場公演が始まり久々に観劇に出かけ、なにが嬉しかったかというと同じ空間で泣いたり笑ったりして最後に拍手を送ることができた、という経験でした。
鈴木:あー……拍手はものすごく嬉しいですね。お客様の反応がある、ということは稽古場ではないことですし、本番を迎えているんだな、届いているんだな、と感じられる瞬間でもあります。
 絶対のルールではないですが演劇って大声を上げたり、大きなリアクションをしないけど、それでも客席全体が一斉に息を呑む、みたいな気配が生まれて、それが舞台上にも伝わって、劇場中が一体となることって確かにあります。それがなによりも演劇ならではの生の魅力ですよね。

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観終わった時に「翔真」に対して
意見が分かれるんじゃないかな

──今回の役について伺います。人外を演じられることも多いのですが、今回は生身の役です。どういったことを縁(よすが)で役を作り上げていくのでしょうか。
鈴木:変わらないところでいうと、どういう人物なのかな? と考える時間がとても楽しいですし。台本を読みながら、これは時子さんを騙そうとしているのかな? それとも本心なのかな? と心理的なことを探ることがおもしろくて。だから本読みのときに、両方のパターンで演ってみたんですが、今の段階では、どっちもいけるな……と。2つの可能性が同じくらいに見えているのは、珍しいことなので、この先、どちらに派生していくのは自分でも楽しみです。
 そのなかで、作・演出の田村孝裕さんが、この話はこういうつもりなんだ、という意図を明かしてくださって、そこでまた翔真のことを知ることができている、という感じです。同時に「すごくダサく」とも言われていて、そういうふうに、翔真はこういう人である、というヒントをもらって、だんだんと翔真を知っていく過程にいます。ああ、でも、たぶん観る方からは共感はされない役じゃないかな、むしろ、時子さんのほうが共感されると思います。
──高橋由美子さん演じる「時子さん」をある意味、翻弄する役です。
鈴木:自ら仕掛けていく役なので、仕掛け方ってさまざまだし、仕掛け方によって高橋さんがどう返してくださるのかも楽しくて。
 さっきの話ですが、読みあわせで2パターンで挑んだら、それぞれ異なる返しをしてくださって。ものすごく器が大きい方だな、と感じているので、その懐をお借りして試してみることができる貴重な時間なのかな、と噛み締めています。
──現時点での、自身が考える翔真とはどんな人でしょう。
鈴木:最初は純粋だったのが狂っていく人なのか、あるいは頑なだったのが親しくなるとともに生身を晒していくのか……ほんとうに、どちらの方向もあって。
 だから、初日を迎えるのも待ち遠しいですし、どちらになったとしても、観てくださる方の受け止め方は自由ですし、ともすれば意見が分かれるかもしれなくて。でも、それがいいと思っているんです。
──時子さんの息子、登喜として高校生の役も演じます。
鈴木:高校生はフレッシュな気持ちで演じたいんです。ただ、幼いころの登喜を矢部太郎さんが演じてくださるので、それも楽しみです。同じ役をふたりで作り上げることが初めてなので、矢部さんの登喜に寄り添うのか、いっそ逆なのか、そこもまたおもしろいな、と思っています。何より共演する方々が濃いので、そこもまた心強くて。
 これまで、ありがたいことに殺陣のある役をたくさんいただいましたが、今回は現代が舞台で等身大に近いので新鮮ではあります。もちろん、殺陣の多い舞台に呼んでいただけていることにも感謝していますが、だからこそ、今回、新たな気持で楽しめるのかな、と思っています。

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「観に来てください」と簡単には言えない
けれど演劇がめちゃくちゃ好きだから言いたい


──幕が開いてからの変化も楽しみです。
鈴木:はい。今、本当に楽しくて。稽古の楽しさもあるし、初日に向けて創っていく楽しさもあって。
 もともと、お客様に観ていただくことに喜びを見出すタイプではあると思うんですが、なによりも自分自身が演劇というものをめちゃくちゃ好きなんだなあ、と改めて、稽古に入ってから日々、実感しています。
──現在、8月です。いろいろな当たり前が失われた今年ですが、残り4ヶ月、目指すことはありますか?
鈴木:最近ではまた幕が開き始めて、演劇というものを観ていただけるようになっていますが、いつまた、どうなるかわからないところで、より一層、みんなの団結力が必要だと感じています。100%感染を防ぐ、ということは正直、難しいと思います。ですが、限りなく100%を目指さないと「観に来てください」という言葉がどうしてもかけられないんです……もちろん、言いたいんですけどね。
 それでも、万が一、もしもの事態が起こってしまったら、演劇事態が悪く言われてしまう可能性があるわけで。演劇が好きで大切にしているからこそ、それは悲しいことなので、デリケートに気を配っていきたいです。きっと、それはどこのカンパニーさんも同じ思いなはずなので、コロナが落ち着く日を迎えて、お客様も気にせず演劇を楽しめる日が来る時を待ちたいです……「観劇する」ということに悪いイメージが付いてしまったら、取り除くにも時間がかかってしまうから覚悟をもって臨みます。
──そういった思いを持ったうえで「観に来てください」と言っていただけることは嬉しいです。
鈴木:こちらこそ「観たいです」と言っていただけることが嬉しいです。「求められている」ということで演劇に意味があると感じられるので。だから、心から「お待ちしています」と言いたくて、いらしてくださる方には本当に感謝しています。けれど、ご自身の体調を第一に考えてください。
 僕自身は改めて、表現するおもしろさにひたっています。そして、いちばん好きなのは、やっぱりお客様に観ていただいて、空間を共有できることなので、その時間を共に過ごしてくださる方がいてくれることがなによりも嬉しいです。そのためにがんばって創っていきます。ただ、本当に身体だけは大切に。配信もあるので、無理なく足を運んでください。


鈴木拡樹 すずき・ひろき
オフィシャルブログ「拡言」
https://ameblo.jp/kakugen-hiroki/

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時子さんのトキ
https://tokikosan.com/

全席指定(動画配信視聴券付)11,500円
全席指定 9,500円
動画配信視聴券(1)【販売期間】8/16 10:00~9/28 23:59 2,500円
動画配信視聴券(2)【販売期間】9/29 10:00~10/3 23:59 3,300円
※詳細は上記、公式サイトを御覧ください。

■作・演出
田村孝裕

■出演
高橋由美子/鈴木拡樹/矢部太郎 伊藤修子 山口森広 豊原江理佳

東京 2020/9/11(金)~9/21(月・祝) よみうり大手町ホール
大阪 2020/9/26(土)・9/27(日) サンケイホールブリーゼ

出演者によるアフタートークショー開催!

【東京】
・9月13日(日)13:00回…登壇:矢部太郎、伊藤修子、山口森広
・9月15日(火)14:30回…登壇:鈴木拡樹、伊藤修子、豊原江理佳
・9月16日(水)18:30回…登壇:高橋由美子、鈴木拡樹、田村孝裕(作・演出)
・9月17日(木)14:30回…登壇:矢部太郎、山口森広、豊原江理佳
・9月18日(金)18:30回…登壇:高橋由美子、鈴木拡樹、山口森広

【大阪】
・9月26日(土)17:00回…登壇:高橋由美子、鈴木拡樹、山口森広

 

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