デビュー30周年、主演舞台『時子さんのトキ』に挑む高橋由美子が演じること共演者について「今」を思う
2020.9.9
デビュー30周年を迎え、記念ベストアルバム『最上級 GOOD SONGS 30th Anniversary Best Album』リリースと節目の年を迎えた高橋由美子さん。主演舞台『時子さんのトキ』では離婚して疎遠になった息子・登喜(とき)に似た路上シンガー・翔真に多額の金を貸してしまう、時子さんを演じる。
明るく朗らか、軽快に言葉が次々と飛び出す。「結局、なるようにしかならないから、できることを全力でがんばるだけ」ときれいな笑顔で言い切る。けれど、その言葉に込められた想いと覚悟が、実に潔くてかっこいい……そんな自身が語る「今」を伺いました。
先に更新の翔真を演じる、鈴木拡樹さんのインタビューとともにお届けします。
取材・撮影/おーちようこ
「がんばる」という言葉が
今の自分にいちばんしっくりきます
──デビュー30周年、おめでとうございます。
高橋:ありがとうございます。あっと言う間だったな……というのが正直なところです。歌はここ10年くらい離れていますが俳優はずっとやっているので……改めてよく続けてこれたな、っていう感じです。
──アルバムのリリースに主演舞台と明るい話題に心躍りますが、コロナ禍の時期にやる意義を感じておられるでしょうか。
高橋:今だからやる、とか、あまり考えていなくて、やっていくしかないかな、と。みんな、ものすごく試行錯誤しているし、この先の舞台上演の常識も変わっていくと思うし、正解がないところで進んでいくことになるのが怖い……とは思うんですけど、30周年を迎えたところでやってみるしかないかな、と。なので、今は「自分で在る」ということを大切にしていますね。
演劇って普遍的なものなのでただただやっていくしかないし、自分が信じるものを頼りに進むしかないのかなあ、とも思っています。
──その、信じるもの、とはなんでしょう?
高橋:んー……すっごい、馬鹿みたいだけど「がんばる」っていうことかなあ……30年もやってきて、ほかに言いようがないのか、と我ながら思いますが(笑)。でも、他に言葉が浮かばなくて……。
おそらくもっとほかにもすてきな言葉も学んできただろうし、先輩の演劇人が語った言葉もある、と思うんですが、まだ自分では模索中というか、やっぱり、この言葉がいちばんしっくりくるんです。あんまりカッコいいことを言うのも恥ずかしいな……と思うし。だから、自分のできることは全部、がんばる。死にものぐるいでがんばって、その結果を認めてもらうしかないんだけど、その姿をカッコいい、って思ってもらえるように見せたいな、って思うんです。
どんなことが起こってもしょうがない
なるようにしかならないから
──「死にものぐるいでがんばる」とのことですが、翔真役の鈴木拡樹さんに高橋さんの印象を伺ったところ「器が広い」と。
高橋:そんなことないですよ!(笑)
──今、ご自身がどういう方向で演じるかを模索していて、異なる球を投ると、それぞれに変えて返してくれると。
高橋:ほう、そんなことを……。あー、でも、わかります。彼、稽古場でも、めちゃくちゃ考えているし、とても真面目な方だというのは見ていて感じます。ただ……私はどっちかというと実は「なるようにしかならないからがんばる」と考えているだけなので、そう見えているのかも。
──なるようにしからならない?
高橋:はい。というのも、周りにいる同年代の育子ちゃん(「拙者ムニエル」澤田育子)や記子ちゃん(「カムカムミニキーナ」藤田記子)といった、褒め言葉として毛色の変わった女優や俳優を多く観ているので。生きていたらどんなことが起こってもしょうがないし、なるようにしかならないけどがんばるみたいな。
──それが経験となり蓄積であり、器が広い、ということでは?
高橋:あー……それはそう! だって私、30年間やってきちゃったから!(笑)
──かっこいいです!
高橋:そうなのかなあ……ただ、今、鈴木さんがものすごく戦っているなあ、っていうのはわかるし、どこかに向かおうとしている、ということも感じていて、私自身もどこに向かうのか、を考えているところではあります。
──その稽古場は現在、いかがでしょうか。
高橋:今、笑わないようにしてるのが大変です。
──どういうことでしょう?
高橋:作・演出の田村孝裕さんが……普段、そんなに笑う方ではないと思っているんですが、すごく笑ってくださるんです。で、たぶんそれは「観客にここで笑ってほしい」ということなんだと受けとっていて。
直接的なディスカッションとは別にそういったことで流れを作ってくださっていて、今はそこに乗っかって作っていったらいいのかな、と感じ取っているところです。いろんな色の役者がいるので、そこでたくさんの融合が起こっていくのがすごく楽しいですね。
──自身が考える時子さんについて伺います。
高橋:作品のイメージショットはしっとりした感じですが、実は時子さんは意外とやんちゃなんですよ。
会話劇だけれど同時に心情を吐露するモノローグも多くて、今、その演じ分けで自分の中にノッキングが起きている感じ。でも、整理がついてくると、きっとおもしろくなるんだろうなあ、という感じです。
──どんなふうに役を作っていくのでしょうか。
高橋:私は稽古しながらでしか役を作ることができなくて。以前、自分の中で作りすぎてしまって、相手が予想外の返しをしたときに、自分の投げる球がない……という経験をしてきたので。
だから、最低限のところまで作って持っていって稽古場で作り上げていって、本番でちゃんとした形が見えたらいいかなあ、と思っています。ことに今回のような会話劇っていくら稽古場で作っていっても、日々、お客様の反応によって変わっていくし、意外なところで泣いたり笑ったりされることがあるので、そこを感じ取って変えていくのが本番からの作り方ですね。
これからの楽しい瞬間を
一緒に作り上げていけたらと願います
──自粛期間中はどんなふうにすごしていたのでしょう。
高橋:テレビを観て、話しかけてました(笑)。再放送のドラマを観て「あー、これ、いつのやつ?」とか話しながら。
──不安とかは……。
高橋:なかったです。だって自粛期間だから……どうにもならないですし。
──その鷹揚さが「器が広い」ということではないでしょうか。
高橋:うーん……そうなのかなあ……自分なりの言葉にすると……能天気、かな。来たものを受け入れたらいい、と思っているので。
──それは、ずっとですか?
高橋:ずっとです……ね。かなり自由に生きているので。たまに衝撃的に周りの方々に迷惑をかけることがあります……まあ、そこも含めて、私なので。
──その「来たものを受け入れる」というお話からひとつ。先程名前をあげられた澤田さんと藤田さんの演劇ユニット“good morning N˚5” 祝・10周年記念公演!!『豪雪』(2017年9月上演)が衝撃でした。
とある姉妹の10年を追う物語で長女・鶴子として恐ろしい長台詞を披露、とんでもない歌詞の曲を朗々と歌いあげ。当時、口コミでどんどんチケットが取れなくなり……なので、実は今回の共演がものすごく楽しみで。
高橋:あー、なんでしょうね……多重人格?(笑) まあ、あの舞台は死ぬほど大変でしたけど……本当に大変だった……。
稽古中、育子ちゃんに「なんで、この仕事を受けたんだろうって、ずっと思ってるよ!」って言い続けましたから(笑)。ただ、なんというのかな……あの、澤田育子のおもしろ脳にどれだけ食らいついけいけるのか、ただただ必死でしたね。
──それは役者魂ですか?
高橋:いや……どうだろう……やっぱりこれも、来たものを受け止めただけ……かな? もともと育子ちゃんとは同い年だったことと、初共演からなんだかんだで付き合いが続いて、あるとき「演劇ユニットをやってるんだけど、由美子、出てくれない? 絶対、おもしろくなるからさ」って誘われて。
「歌姫の役なんだよね」「え? 歌うの?」「そう、歌がメイン! 歌だけだから!!」って言われて出ました。でも、実際には全然、そんなことはなく(笑)。大変だったけど、いろいろとおもしろい瞬間を体験できたかなあ、と。
──その幅広さもすてきです。
高橋:今回はまったく毛色の違う役ですからね(笑)。なので、ずっと観てきてくださった方も初めましての方も楽しんでもらえたらいいなと思います。
こういう時期なので、どうしても気持ちが沈んじゃうんと思うんです。けれど、きっと悪い時ばっかりじゃないし、今が悪い時だとしたらこれからは良くなるばかりだから、その瞬間を一緒に創って行けたらいいなと思います。
高橋由美子 たかはし・ゆみこ
公式サイトhttp://www.granpapa.com/actor/?name=takahashiyumiko
高橋由美子30周年プロジェクト(公式) https://twitter.com/GoodP30thPJT
時子さんのトキ
https://tokikosan.com/
全席指定(動画配信視聴券付)11,500円
全席指定 9,500円
動画配信視聴券(1)【販売期間】8/16 10:00~9/28 23:59 2,500円
動画配信視聴券(2)【販売期間】9/29 10:00~10/3 23:59 3,300円
※詳細は上記、公式サイトを御覧ください。
■作・演出
田村孝裕
■出演
高橋由美子/鈴木拡樹/矢部太郎 伊藤修子 山口森広 豊原江理佳
東京 2020/9/11(金)~9/21(月・祝) よみうり大手町ホール
大阪 2020/9/26(土)・9/27(日) サンケイホールブリーゼ
出演者によるアフタートークショー開催!
【東京】
・9月13日(日)13:00回…登壇:矢部太郎、伊藤修子、山口森広
・9月15日(火)14:30回…登壇:鈴木拡樹、伊藤修子、豊原江理佳
・9月16日(水)18:30回…登壇:高橋由美子、鈴木拡樹、田村孝裕(作・演出)
・9月17日(木)14:30回…登壇:矢部太郎、山口森広、豊原江理佳
・9月18日(金)18:30回…登壇:高橋由美子、鈴木拡樹、山口森広
【大阪】
・9月26日(土)17:00回…登壇:高橋由美子、鈴木拡樹、山口森広