舞台『TRIANGLE』主演 内藤大希さんロングインタビュー「今回、自分がどうなってしまうのかわかりません」

描かれるのは、内藤大希さん、前島亜美さん、陣慶昭さんのわずか三人だけで繰り広げられる密室の心理サスペンス。脚本・演出を手がけるのは、俳優としても活躍し、自らも様々な公演を企画する伊藤裕一さん。
物語の核となる、作家・上川大也を演じる内藤大希さんに自身の「今」を伺いました。 

る・ひまわり新作公演 『TRIANGLE』

【日程】 2026年2月20日(金)~2月23日(祝・月)
【会場】 新宿村LIVE
【脚本・演出】 伊藤裕一
【出演】 内藤大希、前島亜美、陣慶昭

公式サイト https://le-himawari.co.jp/releases/view/01167

今回、自分がどうなってしまうのかわかりません。
でも、それも含めて丸ごと楽しみです。

幼いころから舞台に立ち、現在は『レ・ミゼラブル』をはじめ数多のグランドミュージカルから2.5次元舞台と活動の幅を広げている。
『時をかけ・る~LOSER~』シリーズ(以下、時る)では求められるままに様々な歌い方を披露する内藤大希さんが、今年、一切、歌うことがないストレートプレイに挑む。

 

ーー昨年の『時る2』では、演出を手がけられ、出演された平野良さんとの対談でご登場いただきました。平野さんは、ご自身が演出する意義として「同じ俳優だからこそわかる、出演俳優のいろいろな姿を見せる機会にしたい」と語っていて、実際に内藤さんは軽やかなポップスや朗々と歌い上げるミュージカル風と色々な歌い方を披露されていました。
特に、タイムリープ『何度繰り返しても薩長同盟が結べないんぜよ!?』ではタイトル通り登場シーンを幾度も繰り返し、その度にどんどん早回しになっていく姿が大変そうで、申し訳ないけれど笑ってしまいました。 

内藤 あれはねー! もう、初回で汗だくになってしまって……「これ、あと何回あるんだっけ?」と震えました(笑)。実はこの場面、最初は台詞だったんです。でも稽古場で僕が苦戦していたら、良くんが「大希、これ歌のほうがいいかな?」という一言から、楽曲を手がけるオレノグラフィティさんが「じゃあ、曲を作ります」と言ってくださって、あの場面が出来上がりました。
このシリーズは前回も目まぐるしくて大変でしたが、とても楽しかった記憶しかなくて。今回も「大変なんだろうなあ」と思いながら参加して、実際に大変でしたが、でもやっぱり楽しいまま終わりました。 

ーー今回主演となる『TRIANGLE』は台詞のみのストレートプレイかつ、三人芝居です。 

内藤 まず脚本を拝読しましたが、どこか朗らかなのに闇深く、実は……という役で「この役を僕が?」と驚きました。最近はミュージカルの出演が中心でさらに明るい役というか、明るい歌を歌う機会が多かったので、お話をいただいたときは新鮮でした。 

ーープロデューサー氏によると2024年2月『時る』初演のストレートプレイ、安国寺恵瓊『嗤う怪僧』での輝元を観て、お願いしたいと考えたとのことです。安西慎太郎さん演じる恵瓊が抱える闇に対して愛されて育った輝元は明るく幼く守られる存在ですが、ある場面でその印象がぐるり、と一転します。あの瞬間をもっと掘り下げたい、ということでした。 

内藤 そういったところを見ていただけるのは、とてもうれしいです! 演じた役から、また新たに広がることは俳優として幸せなことだと噛み締めています。ただ、ミュージカルなら心情の闇の片鱗を見せることができるんですがストレートプレイはまだわかりません。
ですが、伊藤さんはとても役者ファーストの方なので安心しています。る・ひまわり作品や昨年7月の加藤啓アワー第3弾「私、鬼になるね」でもご一緒したときに、とにかくうまくて、スキルが高くて、すてきな方であると同時になによりもまず、一緒に演じる相手に対して人として、ものすごく尊重しくださる感覚があって。その伊藤さんと、2026年初の挑戦をさせていただけることはとてもわくわくします。 

ーー歌と台詞では表現がちがいますか? 以前、ミュージカルについて識者の方に教えを請うたときに「歌は時間の流れの縦軸や横軸を凝縮、あるいは圧縮できたりするからこそ、一気に10年経つこともできることが強み」といったことを伺いました。 

内藤 確かに歌は自分の感情を圧縮したり、引き伸ばしたりということができるし、それこそ僕の得意科目です。ひとつの曲を歌うなかの、どこで、どの感情を入れようか、といったことを選んで組み立てることで思いを伝えることができます。
でも、台詞はまたちがって、相手がいる会話で掛け合いだから、音で歌詞を覚えちゃうことができない分、もしかしたらものすごく初歩的なことでつまずくかもしれません。なので、より言葉を繊細に扱っていかなければならないと思っていて、その感覚を研ぎ澄ませていけば、言葉だけでも心をつないで届けられるんじゃないかな、とも思っています。 

ーー覚え方も異なるのでしょうか。

内藤 そうですね。僕の場合は、という話ですが、歌は数回歌ううちに口が覚えて、結構、入るんです。一方で台詞は難しいときがあって。これは、2024年末のシン・る~『もえ・る剣』でW主演だったspiくんから習った方法なんですが、まず全部の台詞を読んで録音して、それを毎日、家でいろんなことをしながらずっと聞いて覚えるんです。これ、僕にはあっていたみたいで、今回もやってみようかな、とは思っています。
ただ、歌は早く覚えられる代わりに公演期間が長いと妙に慣れてしまって、歌詞がゲシュタルト崩壊を起こすときがあって……(笑)。歌いながら、あれ? ってなっちゃうことがあるんです。だから、僕、毎公演、本番前に自分の台詞と歌を全部、回すようにしているんです。 

ーー回すとは?

内藤 本番中は劇場に入ってからストレッチしながら自分のパートを全部、さらっているんです。 

ーー毎公演ですか!?

内藤 はい。そうすることで、より深化するというか、自分のなかで確かめられるものがあって。でも、今回はストレートプレイで台詞も多いから、そもそも回せるのか、回したほうがいいのか、あるいは何もせずに挑んだほうがいいのか、まだ迷っています。
ストレートプレイで、さらに主演ということが十年ぶりぐらいなので、正直に言ってしまうとまるっきり未知の世界で、果たして自分がどうなってしまうのか? ということにも興味があります。そういう意味では本当に大きな機会を与えていただきました。

 


一度は離れた世界ですが
ずっと自分の武器を探し続ける旅をしています。 

ーーこの世界に入ったキッカケを伺います。

内藤 子役がメインの『アルゴミュージカル』作品に出演したのが最初です。もともと、僕の母方というか祖母が、歌が好きで上手だったそうで。僕自身もちょっと目立ちたがりなところがあって、お遊戯会で率先して歌うこともあって、両親がそういった活動をさせたいと思ってくれたのがスタートです。ただ、一度、辞めているんです。理由のひとつに変声期が来て高い声が出なくなったことと、そもそも自分で選んだわけではないし、一生の仕事にしたいとか将来のことも考えていなかったので。
ただ、ダンスは好きだったからずっとスクールに通っていて、中学生や高校生のときに同じクラスで「すっごいカッコいいお兄ちゃんだな!」と思っていた人がのちにEXILEで活躍されていて、そんな環境だったから文化祭で踊るとかはしていたんです。ただ、余り考えずに大学に進学したら、毎日、遊んでるような環境で、必要な単位が取れなくて。 

ーーなんと! 

内藤 困っていたら『アルゴミュージカル』でご一緒していたミュージカル俳優の藤浦功一さんから新作舞台のオーディションのお話をいただいて、迷わず飛び込みました。それが、2006年の『ボーイズレビュー』という作品です。
共演者に『エリザベート』や『1789』の振付を手がける桜木涼介さんといったのちにいろいろとご一緒する方々もおられて、すごくおもしろくて。改めて「歌って踊って表現するエンタメの世界は楽しい!」と実感し、大学はすっぱり辞めました。

ーー2008年にミュージカル『テニスの王子様』に芥川慈郎役で出演します。 

内藤 当時はまさか、今も続くような大きな作品になるとは想像もつかなかったんですが、学ぶことだらけで、たくさんの縁をいただいた作品です。これがキッカケで2.5次元舞台やいろいろな作品に呼んでいただけるようになって。ただ、当時はものすごく苦しみました。

ーー苦しむ、とは? 

内藤 歌であろうとダンスであろうと演技で表現できないとダメなんだな、と思い知ったからです。『アルゴミュージカル』時代は発声といった基礎は教わりましたが、「このときにここに立って、こう歌ってね」といったことに応えることが大切だったので、なぜ、そこに立たなくてはならないのか? といった物語の流れや気持はわからないままだったから、作品の世界観を理解する、ということもわからなかったんです。物語に対して登場人物の心情を表現することを考えて組み立てるということをしてこなかったので……台本を読んで、この台詞に違和感があるといったことがわからなくて。だから周りにいる大人たちが自分の役に対して質問して、演技をディレクションしていく姿を目の当たりにして、ひとつひとつ学んでいったという感じです。 

ーーより世界が広がったという感じでしょうか。

内藤 はい。いろんな先輩に良くしていただいて。あるときニューヨークのブロードウェイの作品を観たくて、ミュージカル『テニスの王子様』で御縁があった川本成さんに連れ行っていただいたこともありました。成さんは欽ちゃんファミリーの一員として小堺一機さんと観劇されていたそうで、「大希、よかったら行く?」って誘ってくださって。2日〜3日で5〜6本観るという感じだったんですが、言葉がわからなくても、こんなにも感動するものなんだと驚いたことを今でも覚えています。
20代前半当時で、ずっと自信がなかったし、どうしたらいいのかもわからなくてもがき続けていたんです。同世代に小野田龍之介くんや大山真志くんといった今も第一線で活躍する存在が間近にいるなかで自分の武器ってなんだろうと探していました。  

ーー歌はご自身の武器ではないかと。

内藤 歌があったことはとてもありがたいことでした。今となっては言葉のように歌えるというか、歌詞を台詞のように発することができることが自分の武器だとは思えるんです。ただ、当時はもっともっと他の武器を持たなくちゃ、と焦っていました。
でも続けるうちに例えば、コロナ禍のときにマスクを付けて稽古するしかなくて、だったらマスク越しでも声を響かせるために自分の声の音圧を上げよう、喉を鍛えよう、という課題を見つけていって。その積み重ねから褒めていただくことがあったり、新たな役に恵まれたりして自信につながっていったように思います。

ーー今、武器は増えましたか?

内藤 まだ、もがいていますね。この仕事って求められ続けなければならないから、そのために自分はなにができるのか、ずっと探しています。今年、38歳になりますが、年齢よりは若く見えると言っていただいてはいても、若い俳優がたくさんいるし。かといって渋い役が演じられる歳でもなくて。すごく絶妙なラインにいると思っているんです。
だから今回、『TRIANGLE』のように年相応の役に挑戦させていただけることは僕にとってものすごく大切な機会なんです。主役という立場をいただき、演出を受け止め、自分なりに解釈し組み立てて表現する……ともすれば初めてかもしれません。だから今は稽古開始までに、とにかく台本のすべて自分の身体に叩き込んで臨みたいです。

ーー挑戦が実にたくさんあります。

内藤 僕、実はあまり真ん中に立つ、ということが苦手……というか「いやいや、僕は真ん中じゃないんで」という気持ちがあって、ちょっと逃げていたというか「周りで賑やかしているのが好きなんです」みたいな感じだったんです。でも、だんだんとそれじゃダメなんだな、ということもわかってきて。もちろん、これまでも座長公演をやらせていただいたこともありますが、そこでは周りに頼れる大人がたくさんいてくれたので。
でも、今回は密室で三人芝居という場を与えていただいたからには、全力で責任を取って真ん中の役を務めたいと思っています。ただ、繰り返しになりますが初日を迎えるまでに自分がどうなっちゃっているかはまったくわかりません(笑)。いやー、どうなっちゃうのかな……それも含めて楽しんでいきたいと思います。 

内藤大希(ないとう・たいき)
公式サイト https://www.sui-inc.net/naito-taiki 

2025年12月都内収録
ヘアメイク:武井優子
スタイリスト:中村剛(ハレテル)

取材・文・撮影:おーちようこ 

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